はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
迷子のヒナ 7 [迷子のヒナ]
その翌日、自宅のあるロンドンへ向けて出発したジャスティンは、馬車の揺れが身体に障らないようにと、ヒナを毛布にくるみ抱きかかえていた。
「まさか、お前が十二歳とはな――てっきり、まだ七,八歳くらいかと」
昨夜、ジェームズに聞きだしてもらった唯一の情報だ。ジェームズによれば、ヒナは日本語を話しているらしい。ただそれも、とぎれとぎれのたどたどしい感じでうまく聞き取れなかったようだ。事故――もしくは事件のショックのため怯えているようにも見えたから、理由はそれだろうとジェームズは言った。
ヒナは言葉がわからずきょとんとしている。まるでイヌやネコにでも話しかけている気分だ。
「心配するな。すぐに両親の元へ届けてやる」
だが、言葉とは裏腹に、ジャスティンはヒナを手放したくないという思いに駆られていた。その訳を考える余裕などなかったが、信頼して身を寄せてくれるヒナの為にも必ず親元へ帰すしかないのだと、くだらない思いは振り払った。
まさか、それから三年も経とうとは、この時は思いもしなかったのだが。
「あれ以上、どうすればよかったんだ?ヒナを探しているような人物は見つからず、こっちが新聞に載せた情報に連絡してきた人間もいなかった」
当時、ジャスティンは出来るだけのことはした。
ヒナの特徴、保護した場所、現在の居場所、それらを新聞に載せ名乗り出てくる身内を待った。けれど、これには少々――いや、大きな問題があった。
ヒナの名前や出身、家族に関する些細な情報すらなかったことだ。
言葉が通じなかった。は、言い訳にならない。通訳とまではいかないものの、ヒナの言葉をきちんと理解できるものを呼ばなかったのだから。
「いまなら言葉が通じる。ヒナの正式な名前や両親の名前、どこに住んで何をしていたのか、いったいなぜあんな怪我を負うことになったのか聞けるだろう?」
ジェームズはいつも正論しか言わない。腹の立つ男だ。
「あの時の話をして、怖がらせたくない」
「ヒナが怖がる?」ジェームズが笑った。「あの子はそんな玉じゃない」
まあ確かにそうだ。
赤の他人と一緒に住んでいるということなど気にしていないどころか、気付いてもいないような子がいったい何を怖がるというのだ?
「それにしても、ヒナの方からなにも言ってこないのは気になるな……」ジェームズが気遣わしげに言った。
「それは俺も気になってる。あの身なりで孤児ということはないだろうから、両親のことを何か口にしてもいいものなんだが」
これまで話していないという事は、話す気がないのだと、ジャスティンは理解している。
「自分の名前すら口にしないのには何か理由があるのだろうか?」
おそらく何か理由はある。何も考えていなさそうなヒナだが、無邪気さの裏にはジャスティンに見せていない一面がきっとある。
「とにかく、ヒナと話をしてみるしかないな。それで何もわからなければ、この話はお終いだ。それから、ヒナを閉じ込めておくつもりはない。だから早速明日にでもどこか連れて行ってやろうと思う」
これで文句はないだろう、とジャスティンは満足げな笑みを浮かべ、一気にグラスを空けた。それを合図にジェームズもグラスを空け、二人は無言ののちに部屋をあとにした。
つづく
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「まさか、お前が十二歳とはな――てっきり、まだ七,八歳くらいかと」
昨夜、ジェームズに聞きだしてもらった唯一の情報だ。ジェームズによれば、ヒナは日本語を話しているらしい。ただそれも、とぎれとぎれのたどたどしい感じでうまく聞き取れなかったようだ。事故――もしくは事件のショックのため怯えているようにも見えたから、理由はそれだろうとジェームズは言った。
ヒナは言葉がわからずきょとんとしている。まるでイヌやネコにでも話しかけている気分だ。
「心配するな。すぐに両親の元へ届けてやる」
だが、言葉とは裏腹に、ジャスティンはヒナを手放したくないという思いに駆られていた。その訳を考える余裕などなかったが、信頼して身を寄せてくれるヒナの為にも必ず親元へ帰すしかないのだと、くだらない思いは振り払った。
まさか、それから三年も経とうとは、この時は思いもしなかったのだが。
「あれ以上、どうすればよかったんだ?ヒナを探しているような人物は見つからず、こっちが新聞に載せた情報に連絡してきた人間もいなかった」
当時、ジャスティンは出来るだけのことはした。
ヒナの特徴、保護した場所、現在の居場所、それらを新聞に載せ名乗り出てくる身内を待った。けれど、これには少々――いや、大きな問題があった。
ヒナの名前や出身、家族に関する些細な情報すらなかったことだ。
言葉が通じなかった。は、言い訳にならない。通訳とまではいかないものの、ヒナの言葉をきちんと理解できるものを呼ばなかったのだから。
「いまなら言葉が通じる。ヒナの正式な名前や両親の名前、どこに住んで何をしていたのか、いったいなぜあんな怪我を負うことになったのか聞けるだろう?」
ジェームズはいつも正論しか言わない。腹の立つ男だ。
「あの時の話をして、怖がらせたくない」
「ヒナが怖がる?」ジェームズが笑った。「あの子はそんな玉じゃない」
まあ確かにそうだ。
赤の他人と一緒に住んでいるということなど気にしていないどころか、気付いてもいないような子がいったい何を怖がるというのだ?
「それにしても、ヒナの方からなにも言ってこないのは気になるな……」ジェームズが気遣わしげに言った。
「それは俺も気になってる。あの身なりで孤児ということはないだろうから、両親のことを何か口にしてもいいものなんだが」
これまで話していないという事は、話す気がないのだと、ジャスティンは理解している。
「自分の名前すら口にしないのには何か理由があるのだろうか?」
おそらく何か理由はある。何も考えていなさそうなヒナだが、無邪気さの裏にはジャスティンに見せていない一面がきっとある。
「とにかく、ヒナと話をしてみるしかないな。それで何もわからなければ、この話はお終いだ。それから、ヒナを閉じ込めておくつもりはない。だから早速明日にでもどこか連れて行ってやろうと思う」
これで文句はないだろう、とジャスティンは満足げな笑みを浮かべ、一気にグラスを空けた。それを合図にジェームズもグラスを空け、二人は無言ののちに部屋をあとにした。
つづく
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2013-03-16 00:26
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