はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
迷子のヒナ 6 [迷子のヒナ]
「ヒナ、タ、カナ、デ」
宿屋に滞在して一週間。やっと名前を聞きだすまでに至った。怪我は擦り傷と打撲のみで、骨折は見られず、発見時着衣についていた血は他の誰かのものだということが判明した。
ただ問題がひとつ――
「ヒナ、タカナデ?それがお前の名前か?」
言葉の意味が分からないのか、子供は困ったように顔を顰めただけだった。こちらを見る目の色ははしばみ色ではなく、濃い茶色だ。
「ヒナ。ヒナって言うんだな」念を押すようにいい、ジャスティンはベッドの上で枕を背に座るヒナを残して部屋を出た。
ふうっと息を吐き、後ろ手でドアを閉める。顔を上げると目の前にはジェームズが無表情で立っていた。
「ジェームズ!どうした?なぜここへ……」
ジェームズはそう聞かれるとは思っていなかったのか、意外そうな顔をした。組んでいた腕を解き、壁から背を離し言った。
「君がいつまで経っても戻ってこないから、アンソニーの傍へ行ってしまったのかと思ったのさ」
「やめてくれ」そう言ったものの、その考えが全くなかったわけではなかった。「そんな気はない」もうないという意味だ。ヒナと出会ったことで、アンソニーのことすら束の間忘れていたほどだ。だが、ジェームズに見透かされていたかと思うと至極きまりが悪い。
「子供を拾ったんだって?ここの主人はやけに口が堅かったけど、いったいいくら握らせたの?大通りで御者を見つけていなかったらこの町は素通りしていたよ」
「怪我をしてる。それに言葉が通じない。苦労してやっと名前を聞きだしたところだ。ヒナというらしい」
「ヒナ?変わった名だな。僕が少し喋っても?」
「ああ、好きにしろ。――いや、ダメだ」急に変な所有欲が湧いてきた。まだ回復途中のヒナを自分以外の手に委ねたくなかった。特にジェームズのような、つい見惚れてしまうような容姿の持ち主には。我ながら馬鹿な事を思ったものだ。
「ダメ?」ジェームズはひょいと片眉をあげて、にやりと笑った。「取って食べたりはしないさ。回復したらうちで使えるかもしれないのに」
「使う気はない――この子は親もとへ帰す。俺は人さらいのような真似はしない」
ジェームズは声をあげて笑った。
「あのジャスティン・バーンズのセリフとは思えないな。うちで働く者のなかで金で買った子は何人いる?それもただ同然で。まあ確かに、人さらいみたいな真似はしていないが」
「ジェームズ、口に気を付けろ。お前も金で買われたくちだという事を忘れるな」
「忘れたりしてないさ」ジェームズは軽く肩を竦め言った。傷ついていない振りをする時のジェームズのくせだ。
「悪い……言い過ぎた。お前は俺の大切なパートナーだっていうのに――」
「仕事上のね」まるでそれが気にくわないとでも言うように、ジェームズは溜息を吐いて階下へおりていった。
「くそっ!」
背後でドアが開き、わずかな隙間から乳白色の肌が覗いた。コーヒー色の瞳がどうしたの?と問い掛けているようで、ジャスティンは言葉が通じないと分かっていたが「なんでもない」と答え、部屋へ戻った。
つづく
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宿屋に滞在して一週間。やっと名前を聞きだすまでに至った。怪我は擦り傷と打撲のみで、骨折は見られず、発見時着衣についていた血は他の誰かのものだということが判明した。
ただ問題がひとつ――
「ヒナ、タカナデ?それがお前の名前か?」
言葉の意味が分からないのか、子供は困ったように顔を顰めただけだった。こちらを見る目の色ははしばみ色ではなく、濃い茶色だ。
「ヒナ。ヒナって言うんだな」念を押すようにいい、ジャスティンはベッドの上で枕を背に座るヒナを残して部屋を出た。
ふうっと息を吐き、後ろ手でドアを閉める。顔を上げると目の前にはジェームズが無表情で立っていた。
「ジェームズ!どうした?なぜここへ……」
ジェームズはそう聞かれるとは思っていなかったのか、意外そうな顔をした。組んでいた腕を解き、壁から背を離し言った。
「君がいつまで経っても戻ってこないから、アンソニーの傍へ行ってしまったのかと思ったのさ」
「やめてくれ」そう言ったものの、その考えが全くなかったわけではなかった。「そんな気はない」もうないという意味だ。ヒナと出会ったことで、アンソニーのことすら束の間忘れていたほどだ。だが、ジェームズに見透かされていたかと思うと至極きまりが悪い。
「子供を拾ったんだって?ここの主人はやけに口が堅かったけど、いったいいくら握らせたの?大通りで御者を見つけていなかったらこの町は素通りしていたよ」
「怪我をしてる。それに言葉が通じない。苦労してやっと名前を聞きだしたところだ。ヒナというらしい」
「ヒナ?変わった名だな。僕が少し喋っても?」
「ああ、好きにしろ。――いや、ダメだ」急に変な所有欲が湧いてきた。まだ回復途中のヒナを自分以外の手に委ねたくなかった。特にジェームズのような、つい見惚れてしまうような容姿の持ち主には。我ながら馬鹿な事を思ったものだ。
「ダメ?」ジェームズはひょいと片眉をあげて、にやりと笑った。「取って食べたりはしないさ。回復したらうちで使えるかもしれないのに」
「使う気はない――この子は親もとへ帰す。俺は人さらいのような真似はしない」
ジェームズは声をあげて笑った。
「あのジャスティン・バーンズのセリフとは思えないな。うちで働く者のなかで金で買った子は何人いる?それもただ同然で。まあ確かに、人さらいみたいな真似はしていないが」
「ジェームズ、口に気を付けろ。お前も金で買われたくちだという事を忘れるな」
「忘れたりしてないさ」ジェームズは軽く肩を竦め言った。傷ついていない振りをする時のジェームズのくせだ。
「悪い……言い過ぎた。お前は俺の大切なパートナーだっていうのに――」
「仕事上のね」まるでそれが気にくわないとでも言うように、ジェームズは溜息を吐いて階下へおりていった。
「くそっ!」
背後でドアが開き、わずかな隙間から乳白色の肌が覗いた。コーヒー色の瞳がどうしたの?と問い掛けているようで、ジャスティンは言葉が通じないと分かっていたが「なんでもない」と答え、部屋へ戻った。
つづく
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2013-03-15 00:40
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