はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
迷子のヒナ 4 [迷子のヒナ]
部屋を出たジャスティンを待っていたのは、ホームズが気を利かせて支度をしておいてくれた熱い風呂でも、一日の終わりには欠かせないブランデーでもなかった。
面倒な仕事を終えたジェームズが物言いたげな顔で、腕組みをして壁に寄りかかっていた。
「書斎で待てなかったのか?」とジャスティンは当てこすりを言うが、ジェームズは眉をピクリとも動かさず「待ちぼうけはごめんだからね」と背筋を伸ばして書斎のある一階へと足を向けた。
ジャスティンもあとに続き、書斎の入口でジェームズを追い越すと、身構えるようにして机についた。まるでどっしりと構える重厚なオーク材の書斎机が、ジェームズの攻撃をかわす防塞であるかのようだ。
ジェームズはくつろいだ様子でサイドボードからグラスを取り出すと、ワゴンにのったデキャンタを手にしてこちらを見た。
「君も飲むだろう?」
ジャスティンは聞くまでもないといったふうに頷き、ジェームズがグラスに琥珀色の液体をなみなみと注ぐ姿を眺めた。
「パーシヴァルはどうなった?」正直どうでもいい話題だった。パーシヴァルがヒナに興味を抱いたことは、もちろん警戒すべき事だが、ヒナが自分の傍にいる限り、あんな男の手に堕ちる事などない。
「ああ、僕が戻った時にはすでに噂を聞きつけた取り巻きたちに囲まれていた。彼らはクロフト卿の次の恋人になろうと必死に彼を慰めるだろうね」
「恋人ねぇ……あいつには相応しくない表現だな。正直ブライス卿とそういう関係になったのも不思議な話だ。しかも失恋して酒に酔うなど想像もできない」
どちらかといえば、気弱なブライス卿を口の上手いパーシヴァルがその気にさせ、もてあそんだと言った方がしっくりくる。
「確かに――ところで、ジャスティン」ジェームズはいったん言葉を切ると、ジャスティンにグラスを手渡し、自分のグラスを手にソファに腰をおろした。そして一口あおると、諭すような口調で続けた。
「いつまでヒナをここに閉じ込めておくつもりだ?」
きっとジェームズはこの言葉をずっと言いたかったに違いない。
ヒナを閉じ込めている自覚はある。それに対して罪悪感すらある。
「仕方がないだろう……」
「身元を調べる気なんかないんだろう?」
「調べただろ……」と言葉は尻すぼみになり、それを誤魔化すようにジャスティンはお気に入りの酒をほとんど味わうことなく、喉の奥へ流し込んだ。
「ヒナがここへ来てどのくらいだ?」
ジェームズがすべて承知で、それを口にしていることはすぐに分かった。出来ればジェームズとこういう会話はしたくなかった。とはいえ、三年もの間なにも言わずにおいてくれたことに感謝するべきだろう。
ジャスティンは覚悟の溜息を吐いた。ここまで来たら腹をくくるしかない。
「さっき俺もちょうどそのことを考えていた。もう三年になる――」
つづく
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面倒な仕事を終えたジェームズが物言いたげな顔で、腕組みをして壁に寄りかかっていた。
「書斎で待てなかったのか?」とジャスティンは当てこすりを言うが、ジェームズは眉をピクリとも動かさず「待ちぼうけはごめんだからね」と背筋を伸ばして書斎のある一階へと足を向けた。
ジャスティンもあとに続き、書斎の入口でジェームズを追い越すと、身構えるようにして机についた。まるでどっしりと構える重厚なオーク材の書斎机が、ジェームズの攻撃をかわす防塞であるかのようだ。
ジェームズはくつろいだ様子でサイドボードからグラスを取り出すと、ワゴンにのったデキャンタを手にしてこちらを見た。
「君も飲むだろう?」
ジャスティンは聞くまでもないといったふうに頷き、ジェームズがグラスに琥珀色の液体をなみなみと注ぐ姿を眺めた。
「パーシヴァルはどうなった?」正直どうでもいい話題だった。パーシヴァルがヒナに興味を抱いたことは、もちろん警戒すべき事だが、ヒナが自分の傍にいる限り、あんな男の手に堕ちる事などない。
「ああ、僕が戻った時にはすでに噂を聞きつけた取り巻きたちに囲まれていた。彼らはクロフト卿の次の恋人になろうと必死に彼を慰めるだろうね」
「恋人ねぇ……あいつには相応しくない表現だな。正直ブライス卿とそういう関係になったのも不思議な話だ。しかも失恋して酒に酔うなど想像もできない」
どちらかといえば、気弱なブライス卿を口の上手いパーシヴァルがその気にさせ、もてあそんだと言った方がしっくりくる。
「確かに――ところで、ジャスティン」ジェームズはいったん言葉を切ると、ジャスティンにグラスを手渡し、自分のグラスを手にソファに腰をおろした。そして一口あおると、諭すような口調で続けた。
「いつまでヒナをここに閉じ込めておくつもりだ?」
きっとジェームズはこの言葉をずっと言いたかったに違いない。
ヒナを閉じ込めている自覚はある。それに対して罪悪感すらある。
「仕方がないだろう……」
「身元を調べる気なんかないんだろう?」
「調べただろ……」と言葉は尻すぼみになり、それを誤魔化すようにジャスティンはお気に入りの酒をほとんど味わうことなく、喉の奥へ流し込んだ。
「ヒナがここへ来てどのくらいだ?」
ジェームズがすべて承知で、それを口にしていることはすぐに分かった。出来ればジェームズとこういう会話はしたくなかった。とはいえ、三年もの間なにも言わずにおいてくれたことに感謝するべきだろう。
ジャスティンは覚悟の溜息を吐いた。ここまで来たら腹をくくるしかない。
「さっき俺もちょうどそのことを考えていた。もう三年になる――」
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2013-03-12 00:43
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