はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

迷子のヒナ 3 [迷子のヒナ]

ヒナは怯えたりしていないだろうか?
ジャスティンは逸る気持ちを抑えきれず、中庭を早足で一気に突っ切りヒナの待つ邸内へとすべりこんだ。

「お帰りなさいませ、旦那様。今夜はこちらでおやすみに?」裏口で待ち受けていた執事が、ジャスティンの一歩後ろを歩調を合わせついてくる。

「ヒナはどうしてる?ホームズ」執事の嫌味な一言を無視して尋ねる。

「お部屋でおやすみに――」

「ジェームズが余計な事を言ったようだが、泣いたりしてないか?」

「まさか!シモンのデザートをお腹が丸く膨らむほど食べて、満足しておやすみになられました」

そうだろうと思った。ジェームズに脅されたからといって、ヒナがめそめそ泣いたりするはずがない。ジャスティンは足を止め、振り返ってホームズの目元に刻まれた深い皺を見て、頬を緩めた。年老いたこの執事は、ヒナの面倒をよく見てくれている。幼い頃自分にしてくれたのと同じように。

「それは残念だ。俺に会えなくなると言われて、悲嘆に暮れているところを想像していたのに」

ジャスティンの本気とも冗談ともつかない言葉に、ホームズは両眉をひょいとあげ、さも驚いたような顔で言った。

「お坊ちゃまが悲嘆にくれるなど、想像もつきませんが」

「そうだな」とジャスティンは曖昧に返事をした。まさかヒナが悲嘆に暮れている姿を想像して、慌てて駆け戻ってきたなどとホームズに悟られたくなかった。

ホームズはあれやこれやとジャスティンの世話を焼きたがったが、かろうじてそれらをかわして、ヒナの部屋の前に辿り着いた。

眠っているヒナを起こさないよう、ジャスティンはそっとドアを開け中へ入った。
大きなベッドの中央に、小さな山が出来ている。
近寄って見ると、まるで身を守ろうとするように、ヒナが上掛けを身体に巻きつけて眠っていた。

ベッドの足元に置かれた若草色のソファにはくしゃくしゃに丸まった寝間着が置いてある。どうやら裸で寝ているようだ。最近のヒナはジャスティンの真似ばかりする。裸で寝ているのもおそらくそのせいだ。

ジャスティンは上掛けをそっとめくり、ヒナの寝顔を盗み見た。ベッドに腰掛け、しばらくぼんやりと寝姿を眺める。キャラメル色の巻き毛を指に絡めると、ヒナがくすぐったそうにもぞもぞと身じろいだ。

「寝ていればかわいいものを」

ヒナがここへきてどのくらい経つのだろうか?ジャスティンは立ち上がって窓辺に寄り、さらに考えた。あれはもう三年も前の出来事だ。不意に感じた過ぎゆく時間の早さに、ジャスティンはたじろいだ。

いつまでこうして手の中に納めていられるのだろうか?そう長くはないだろう。そう思うと、一日一日を無駄に過ごしている気がして堪らなくなる。

ジャスティンは苛立つ心を鎮めるように、ヒナの寝顔をもう一度見て、部屋をそっとあとにした。

つづく


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