はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

溺れるほど愛は遠のく 7 [溺れるほど愛は遠のく]

「海!俺たちにもアイス取って」

突然の大きな声に海は驚いて飛び上がり、あやうく大事なアイスを落としそうになった。もうっ!っと怒りながら海は振り返り、ぴたりと閉じられた部屋のドアを睨みつけた。

ドアの向こうには今声をあげた次男の朋とその恋人、三男のコウタがいる。仲良く何をしているんだか。どうせ、平凡そのもののコウタが超美形で頭のいい朋ちゃんに甘えているに決まっている。

「チョコでいいの?」とドアの向こうに声を張り上げ訊き返す。

「ああ。あ、いや――チョコとバニラにして」と朋が返事をした。どうやらコウタがバニラがいいと言ったようだ。図々しい、コウタのくせに。

海は言い付けどおり、チョコとバニラのアイスを手に朋の部屋のドアを開けた。
そして目に映った兄たちの姿は、海が想像していたものとは少し違った。

実際、非の打ちどころのない人物ほど、恋人に対しては驚くほど情けない姿を見せるものだ。

朋は海が部屋に入ってきたというのに、マットレスだけのベッドに座るコウタの膝に頭を乗せ横たわったまま、なんともだらしない姿を晒している。

「何見てるの?」と明らかにテレビに背を向ける朋に向かって意地悪く問いかける。

鈍くさいコウタが「えっとね――」と言っている間に、朋が声高らかに「コウタ」と即答した。
さすがの海も呆れてものも言えないが、言ってしまうのがお喋りの海の性質なのだ。

「そんな顔見てもしょうがないじゃん!」

「そうだよ……」とコウタは同調したものの、頬を赤らめまんざらでもない様子だ。

「馬鹿言うな。疲れた時はこれに限るんだよ。それにさ、まさにいが帰ってきたらこんな事できないんだから、いいだろ?コウタ」
朋は手を伸ばし、綺麗な指先でコウタの唇に触れた。

この二人、隙あらばベタベタしている。まさにいが見逃しているからといって、俺たち――海と陸――が何とも思っていないと思ったら大間違いだ。

「もうっ、朋ちゃん!アイス!」
海はアイスとスプーンをぽんぽんと投げ、じゃあねと言ってその場を去った。いつまでもこんなイチャイチャ現場を目にしていると頭がおかしくなる。

海は部屋へ戻り、少し柔らかくなったまさにいのプレミアムアイスを不満げに平らげると、ベッドに潜り込んだ。

いつのまにかうとうととしていると、台所から聖文の説教をしているような声が聞こえた。海は耳を澄まし、その相手を探った。

陸だ。なぜか陸がまさにいに怒られている。
壁掛け時計で時間を確認すると、九時半だった。ユーリの誕生日だからもっと遅いと思っていたけど……。
海が様子を見ようかどうしようか迷っていると、「おい!陸」と朋の怒声が聞こえた。
いったいどうして朋ちゃんは怒っているのだろうか?

好奇心は疼くが、こんな騒動にのこのこ顔を出すほど海は馬鹿ではない。それに疲れていてそんな気力もない。

カリカリっと窓を爪で引っ掻く音が聞こえた。ブッチが中へ入れてと合図している。海が窓を開けてやると、降り始めた雨に濡れたブッチが勢いよく部屋へ飛び込んできた。ブルブルと水滴を飛ばし、海の足元に擦り寄る。海はその辺に転がっていたタオルで、ブッチを拭いてやると、抱き上げてベッドへ戻った。

「ブッチ、今日は一緒に寝ような」
陸ほど甘ったるい声は出さないが、海もそこそこブッチに猫撫で声を使ってしまう。当のブッチは自分を甘やかせてくれてかわいがってくれれば、相手が海でも陸でも構わないようだ。

ブッチは「ぶみゃ」と同意の意思を示し、夜中に再び騒動が起きるまで、ひとりと一匹は仲良く抱き合って眠った。

つづく


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