はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

憧れの兄、愛しの弟 8 [憧れの兄、愛しの弟]

「コウタ…」
朋はコウタを引き寄せぎゅっと抱きしめた。

コウタが自分を振った女の為に泣いている。

朋にとってコウタが彼女と別れたとなれば、それは嬉しい事のはずだ。だが、コウタの涙を見てしまった今、自己中心的な思いは影をひそめてしまった。

どちらかと言えば、その女に会ってコウタのどこが不満なのか聞いてやりたいくらいだ。別れるなんてもったいないことするなと怒鳴りつけたい。

「朋ちゃん、苦しい」
半分椅子から浮き上がった状態のコウタが呻いた。

離さなきゃいけない事は分かっている。けれど腕の中のコウタは一番弱い自分を晒しているうえ、柔らかく、そして温かい。
コウタの震える小さな身体は、保護欲をかきたてられ、すべてを自分のものにしたくなる。

自制できない。このままキスをしたら、コウタは怒るだろうか。

「朋ちゃん、いい匂いするね」

コウタのその一言で、朋の邪な考えは吹っ飛んだ。気が抜けたようにコウタを抱く手を緩める。

「コウタと同じ匂いだろう?」
風呂上がりの身体から香るのは、コウタと同じシャンプー、同じボディーソープの香り。もちろん他の兄弟も同じ香りをさせている。

「うん、でも、朋ちゃんは僕よりいい匂いがする」

無邪気としか言いようがない。コウタは自分が兄をどれだけ刺激しているのか分かっていない。

まずいっ!勃起してきた。

朋は素早くコウタから離れ、ベッドの淵に座り足を組んだ。股間の盛り上がりをコウタの目から隠す様に。

「それで、付き合っていなかったってどういう意味だ?告白してちゃんと返事貰ったんだろう?」

「うん、そうだったはずなんだけど……昨日、聞いちゃったんだ。友達と話しているところを……彼女、僕の事好きじゃないってさ」

「好きじゃない?」
怒りではらわたが煮えくり返りそうだ。コウタを好きじゃないなどと言う奴がいるとは思わなかった。

「なんとなく分かってたんだ……だから、手紙渡して、あの告白はなかったことにしてもらうことにした」

「手紙を?」朋は顔を顰めた。
いまどき手紙か?携帯電話という便利なツールがあるのに?
コウタが可哀相過ぎて直視出来なくなってきた。「でもさ、コウタ。付き合っているうちに好きになっていくパターンもあるだろう?なにもなかったことにしなくても……」

コウタは椅子の上で背を丸めた。腿の上で拳を握り――おそらく涙を堪えている。

「出来れば直接話がしたかったけど、よく考えたら好きでもない人と話したがるはずがないもんね。彼女は僕みたいなのと一緒にいる姿を見られたくなかったんだよ」

コウタは『僕みたいな』とか『僕なんて』という言葉をよく使う。
以前の朋なら「そんなに卑屈になるなよ」と軽く元気づけるだけで、そんなに気にしていない言葉だった。けど、いまは違う。好きな男が自分を卑下する言葉を聞いて、普段と変わらない顔で、何気なく言葉を掛けられるはずがない。

「どうしたの……朋ちゃん。なんだか、怖い顔してるよ」

コウタの言葉に、朋はぼやけていた焦点を弟の戸惑いの混じった顔に合わせる。

「いや……、なあ、コウタ。お前、その彼女の事好きだった?コウタの魅力のかけらも分からないような女を、お前は好きだったのか?」

不意にそんな事を訊かれ、コウタの表情がもっと戸惑ったものに変わったが、朋は答えを聞くまでは引き下がる気はなかった。

つづく


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