はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
憧れの兄、愛しの弟 7 [憧れの兄、愛しの弟]
「お嫁さんか……」
コウタはひとりになったのを見計らって、ぽつりと呟く。
自分が男らしいとは思っていない。わかっていても、あっさり男だという事を否定されると――特に今は――胸に堪える。
兄の様にかっこよかったらなと思う。背が高くて頭が良くて、女の人を魅了するあの綺麗な笑顔が真似できたらと思う。
朋の名前の由来は、文字通りのものだ。生まれた時、月が二つ空から落ちてきたかのように、美しく輝いていたらしい。生まれたばかりの子が輝くほど美しいという表現はありえないと思うが、両親の解釈だから、おそらくそれだけかわいい子が生まれたという事なのだろう。幸が薄いと言われたコウタとは大違いだ。
「ぶみゃー」
落ち込むコウタの足に、ブッチが擦り寄って来た。ブッチが二階まで上がってくるのは珍しい。
「ブッチ、慰めてくれるの?」
ブッチは頭をぶつける様に、擦り寄る。脛に当たり痛いくらいだけど、かえってそれで気分が晴れてくる。
「僕さ、振られちゃったんだ。当たり前だよね。僕なんか好きになる子いるはずがないもん」
コウタはブッチをすくいあげ、胸に抱いた。ゴロゴロと喉を鳴らし、今度は顎に頭突きを食らわす。
「ブッチ、痛いよぉ」
コウタはいつの間にか泣き出していた。ブッチをぎゅっと抱きしめ、ぽろぽろと涙を零す。
そんな自分の女々しさに嫌気がさし、余計に涙が溢れる。
「ブッチぃぃ……」
ブッチは「んぎゃっ」と一声泣くと、コウタから逃れるように腕の中でもがいた。腕を緩めると、ストンと飛び降り、ブッチはしっぽを揺らし部屋から出て行った。
それと入れ替えに、部屋に朋が入って来た。濡れた髪をタオルで拭きながら、泣き顔を向けるコウタに驚いた顔を見せた。
「コウタ、どうした?」
コウタは咄嗟に顔を隠そうとしたがもう遅かった。
朋は素早く駆け寄り、コウタの頬を両手で掴むと、心配そうに覗き込んだ。親指で目元の涙を拭いながら「何かあったのか?」と尋ねる。
コウタは首を左右に振ろうとするが、朋にしっかりと顔を掴まれ、ただまっすぐに兄の整った顔を見つめ返すことしか出来ずにいる。
「ん?どうした?俺に言ってみろ」
いつもと同じ、優しく甘い声がコウタの耳を擽る。
あまりに優しい声なので、再び涙が込み上げてきた。同情されることに慣れてしまっている自分に腹が立つし、情けない。
「僕ね、彼女と別れたんだ。ううん。そもそも付き合ってなかったみたい――」
何でもない事のように言おうとしたが、口元が震え、いかにも哀れな声が出てしまった。おまけに作ろうとした笑顔が歪み、情けない男の代表みたいな顔を、美形の兄に晒してしまった。
恥ずかしくて、今すぐベッドに潜り込みたい。
唯一救いだったのは、朋の胸にすぐさま抱き寄せられ、不細工な顔を長時間晒さずに済んだことだった。
つづく
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コウタはひとりになったのを見計らって、ぽつりと呟く。
自分が男らしいとは思っていない。わかっていても、あっさり男だという事を否定されると――特に今は――胸に堪える。
兄の様にかっこよかったらなと思う。背が高くて頭が良くて、女の人を魅了するあの綺麗な笑顔が真似できたらと思う。
朋の名前の由来は、文字通りのものだ。生まれた時、月が二つ空から落ちてきたかのように、美しく輝いていたらしい。生まれたばかりの子が輝くほど美しいという表現はありえないと思うが、両親の解釈だから、おそらくそれだけかわいい子が生まれたという事なのだろう。幸が薄いと言われたコウタとは大違いだ。
「ぶみゃー」
落ち込むコウタの足に、ブッチが擦り寄って来た。ブッチが二階まで上がってくるのは珍しい。
「ブッチ、慰めてくれるの?」
ブッチは頭をぶつける様に、擦り寄る。脛に当たり痛いくらいだけど、かえってそれで気分が晴れてくる。
「僕さ、振られちゃったんだ。当たり前だよね。僕なんか好きになる子いるはずがないもん」
コウタはブッチをすくいあげ、胸に抱いた。ゴロゴロと喉を鳴らし、今度は顎に頭突きを食らわす。
「ブッチ、痛いよぉ」
コウタはいつの間にか泣き出していた。ブッチをぎゅっと抱きしめ、ぽろぽろと涙を零す。
そんな自分の女々しさに嫌気がさし、余計に涙が溢れる。
「ブッチぃぃ……」
ブッチは「んぎゃっ」と一声泣くと、コウタから逃れるように腕の中でもがいた。腕を緩めると、ストンと飛び降り、ブッチはしっぽを揺らし部屋から出て行った。
それと入れ替えに、部屋に朋が入って来た。濡れた髪をタオルで拭きながら、泣き顔を向けるコウタに驚いた顔を見せた。
「コウタ、どうした?」
コウタは咄嗟に顔を隠そうとしたがもう遅かった。
朋は素早く駆け寄り、コウタの頬を両手で掴むと、心配そうに覗き込んだ。親指で目元の涙を拭いながら「何かあったのか?」と尋ねる。
コウタは首を左右に振ろうとするが、朋にしっかりと顔を掴まれ、ただまっすぐに兄の整った顔を見つめ返すことしか出来ずにいる。
「ん?どうした?俺に言ってみろ」
いつもと同じ、優しく甘い声がコウタの耳を擽る。
あまりに優しい声なので、再び涙が込み上げてきた。同情されることに慣れてしまっている自分に腹が立つし、情けない。
「僕ね、彼女と別れたんだ。ううん。そもそも付き合ってなかったみたい――」
何でもない事のように言おうとしたが、口元が震え、いかにも哀れな声が出てしまった。おまけに作ろうとした笑顔が歪み、情けない男の代表みたいな顔を、美形の兄に晒してしまった。
恥ずかしくて、今すぐベッドに潜り込みたい。
唯一救いだったのは、朋の胸にすぐさま抱き寄せられ、不細工な顔を長時間晒さずに済んだことだった。
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2012-02-05 00:00
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