はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

憧れの兄、愛しの弟 3 [憧れの兄、愛しの弟]

「なあ、まさにい。俺と部屋変わってくれない?」
朋は夕食後、二階の聖文の部屋へ来ていた。兄に頼みごとをするのは気が進まなかったが、それでもそうしなければならない理由が朋にはあった。

ひとえにコウタの傍に居たいからだ。

同じ屋根の下、それで充分だと思う。でも、少しでもコウタの近くに居たいという気持ちが抑えられない。

「なんで?」
聖文はパソコン画面に向いたまま返事をする。

「だからさぁ…」
くそっ!せめてこっち向けよ。

朋はしぶしぶ聖文の傍まで行き、机に手を掛けた。聖文はやっと顔を向け「触るな」と潔癖ぶりを発揮する。

勝手に部屋の物に触ると怒るし、背後に立っても怒られる。怒ると言っても声は荒げたりしないが……。
それに理由もなく頼みごとをすると、途端に不機嫌になる。

朋は一歩後ろへ引き、頼みごとをする時用の神妙な顔を作った。

「下の部屋は双子がうるさいから、二階の部屋がいいんだよね」
5DKの一戸建ては下に三部屋、上に二部屋ある。

玄関入ってすぐが縁側のある和室。その隣が双子たちの部屋。その奥に行くとダイニングとキッチン。そこを通ってリビングという名の朋の部屋がある。双子の部屋とは壁を隔てた隣になる。

二階は階段をあがって左右に一部屋ずつあり、右手がコウタの部屋で左手が聖文の部屋だ。

「という事は、俺に双子の犠牲になれと?なぜコウタに言わない?もとはお前の部屋だっただろう?」

ああ、そうだよ。
コウタが双子に苛められるから――双子はコウタをかわいがっているつもりだが――部屋を譲ってやったんだ。

「コウタはこれから受験があるだろう。可哀相じゃないか」

「俺は可哀相じゃないのか?」

「陸と海は、まさにいは苛めないだろう?コウタは傷つきやすいんだ、双子たちの威勢の良さにはついていけない」

「まあ、そうだな。だからコウタは二階にいる。お前は受験もないし、家にそんなにいる訳でもないし、別に部屋を変わる必要があるか?」

おおいにある!
朋は大声で言いたかったが、その理由を追及されると困るので、返事を渋った。

「とにかく、ここはお前が生まれる前から俺の部屋で、どうしても二階がいいならコウタとあの狭い部屋をシェアしろ。わかったら出て行け」
聖文はこれで話は終わりとばかりのオーラを出し、パソコンに正面から向き直った。

思わず顔がにやけそうになった。朋は、わざとらしくまだ不満だという様な顔で「わかった」と小さく言うと、聖文の部屋から出た。小躍りしたい気持ちを抑え、階段を軽やかににおりて行く。

やった!これでコウタと同じ部屋だ。隣の部屋よりもなおいい。

コウタに彼女が出来たと聞いた時、身の捩れる思いがした。コウタが自分の知らない女性を好きになった。その女と手を繋ぎキスをし、そのうちセックスをする。

嫌だと思った。
それが可愛い弟が、愛しい弟に変わった瞬間だった。

コウタは少々卑屈な所があって――実際は少々ではないが――自分は男らしくもなければかっこよくもなく、いいところなど何もないと思っている。

確かに男らしさには欠ける。コウタは気を使い過ぎるし、優し過ぎるのだ。容姿に関して言えば、かわいくて仕方がない。本人は色白な所が気に入らないのかもしれないが、その肌に触れる事を俺がどれだけ望んでいることか。唇でもちもちの頬に触れた時、そのまま押し倒したい衝動に駆られた。

ああ、考えているだけで、勃起してきた。

だがこの気持ちはいまのところ隠さなければいけないだろう。コウタを怖がらせたくないし、嫌われたくないから、優しい兄として傍にいることが最善なのだ。

つづく


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