はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

憧れの兄、愛しの弟 2 [憧れの兄、愛しの弟]

久しぶりに早い時間に兄弟五人が揃った。
今年二十五歳の長男聖文は弟たちから尊敬というよりも、畏怖の眼差しで見られることが多い。特に怒鳴ったり殴られたりした記憶はないが、その威風堂々とした佇まいがそうさせるのだろうと、比較的聖文を恐れていないコウタは、そう思っている。

一番聖文を恐れているのが、双子たちだ。末っ子はわがままで身勝手と言うが、ほぼ同時に生まれた末っ子たちは、期待通りの奔放さで、長男を苛つかせている。それに引き替え誰からも愛されたい双子たちは、自分たちに厳しい目を向ける聖文が理解できないようだ。

二十歳の次男朋は、服飾関係の専門学校に通いながら、ホテルで給仕のアルバイトをしている。
朋は兄弟の中では一番柔和で、中立に位置している。けれど、ほんの少しコウタを贔屓しているのをコウタ以外は知っている。

親からの愛情が最も薄くなるという真ん中に位置するコウタは、文字通り、生まれた瞬間にそれを味わっている、とコウタは思っている。

それはコウタがおぎゃーと小さく泣き生まれた瞬間のこと。
コウタを見た両親はこう言った。
「この子、なんだか幸薄そうね……」
せめて名前だけでも幸せをいっぱいにしてあげましょう!という訳で、『幸多』と命名されたのだ。

なんて愛情たっぷりな両親だろう!

肝心の両親は、この春から家を空けている。定年を迎えた父は、うら若き美人妻――弱冠四十五歳――を連れて、はるばるニュージーランドへ移住してしまった。ロハスにはまった両親は、「ロハスと言えばニュージーランドだ!」と意気込み、子供たち全員を残して旅立った。

両親は、世界が自分たちを中心に回っていると勘違いしているのだ。特に妻にぞっこんの父は、男ばかりの家に妻が始終いる事が耐えられないらしい。

実の息子までも母から遠ざけたい父は――痛すぎるとしか言いようがない。

「まさにい、今日は仕事じゃなかったの?」

「仕事行って帰って来たんだ。俺が今日何時出勤だったか知っているのか?」
聖文は片眉をあげた。基本クールな聖文は表情を崩さず眉だけで感情を表す。すでに声の調子からも不機嫌だと分かっているので、コウタは慎重に言葉を選び答える。

「ううん…起きたらもういなかったから、早かったんだよね」
たぶん見ていないからそうなのだろう。コウタは上目遣いに聖文を見上げ反応を伺う。

「それで、朋は今日はバイトじゃないのか?」

コウタはあっさり無視された。

「今日のシフトに俺の名前なかっただろう?」

聖文と朋は同じ職場だ。

「そうだったか?」
聖文はそれだけ言うと、二人に背を向けきびきびとした足取りで和室を出て廊下の向こうに消えた。

家にいるときくらい力を抜けばいいのにと思いながら、コウタはねじっていた身体を前へ向けた。

「ふうっ。まったく、あの顔どうにかしろよ」
朋も庭に向き直り、コウタの膝の上のブッチを撫でた。おそらくこの家で、聖文に対して緊張しないのはブッチだけだろう。

「ねえ、朋ちゃん。今日のごはん当番って誰だっけ?」

「いいこと教えてやろう。――お前だ」

やっぱり。

コウタはブッチを朋の膝に移し、重い腰を上げると、畳の上に投げ出された鞄を手に二階の自分の部屋へ向かった。

つづく


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