はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
憧れの兄、愛しの弟 1 [憧れの兄、愛しの弟]
『やだぁ、好きで付き合ってるわけないでしょう』
教室の向こうから聞こえた彼女の声。
くすくすと笑い合う女の子たち。
まさかと思った。いや、やっぱり――だよね……。
コウタは引きつる顔を下に向け、ドアにかかる手から力を抜いた。踵を返し、徐々に駆け足で学校を後にした。
家に帰ると真っ直ぐに縁側へ向かった。築三十年の一戸建てには小さな縁側がついている。和室に入ると、コウタ愛用のへちゃげた座布団に茶色のブチ猫――その名もブッチが鎮座していた。ガラス越しに陽を浴び、こちらには背を向けている。
コウタは鞄を放り背後から猫をすくいあげた。猫はビクッと驚き小さく悲鳴のようなものを上げた。
コウタはそのままそこへ座り、膝の上に愛猫を乗せた。
日向ぼっこの邪魔をされた猫は不機嫌そうに、コウタの膝から降りた。
「おい、コウタ!ブッチをいじめるなよ」
背後で二つの声が重なった。双子の弟、陸と海だ。コウタは振り返る代わりに肩を竦めた。
「無視するのか?」
そう言って二つ年下の弟たちはコウタの両脇をがっちりと固めた。
「ブッチはいじめてないし、無視はしてない」
返事に肩を竦めただろう?
「そんなことないよねぇ、ブッチぃ。コウタがお昼寝の邪魔したもんね」
コウタの右隣に座る陸が、猫の喉を擽り舌っ足らずで話し掛ける。猫は喉をゴロゴロと鳴らし、すこぶるご機嫌だ。
我が家の愛猫は四男の陸に一番懐いている。
「どうせ、彼女にでも振られて、八つ当たりだろう?」
微妙に的を射た言葉で、コウタの胸を鋭利な刃物で切り裂いたのは毒舌五男、海だ。
「違う……」コウタはか細く反論した。違うのは八つ当たりという所だけれども……。
「おいおい、コウタをいじめるなよ」
優しく甘い声。
朋だ!
弟たちにいじめられるコウタを助けてくれる、救世主のような存在。
「朋ちゃん、今日バイトは?」
コウタは振り返り言った。双子も振り返り、モデル並みのスタイルと顔を持つ次男に尊敬の眼差しを送る。
迫田家の次男はこの界隈ではモテ男として有名だ。地元の学校ではいい男過ぎて伝説が数えきれないほどある。そんな兄を持つコウタは平凡以下な自分が恥ずかしくてたまらない。
「今日は休み。ほらお前らどけ」
朋は双子を追い払い、コウタの横に腰をおろした。
「んで、失恋か?」
「朋ちゃん……嬉しそうに言うのやめてよね」
「そんなはずないだろう?」
「笑ってるじゃん」
「しょうがないだろう。お前に彼女なんて百万年早いっつーの!」
朋はコウタの頭をぐしゃぐしゃと掻き乱し、そのまま肩を抱く。
背後で双子が「あー!コウタ、ずるいっ!」と不満の声をあげる。
「おいっ!コウタを呼び捨てにするな。お前たちは弟だろう」
「だって、コウタちっちゃいもん」と陸。
「ほーんと。兄弟の中で一番のチビだもんな」と海。
「いいよ。朋ちゃん。チビなのは本当だもん」
この春、二歳下の双子に身長を追い抜かされた。たかが一センチ、されど一センチ。それよりも、十七歳にもなって、彼女を作るのは早いと言われることの方が問題だ。そんなに僕は不細工なのか?
あまりに哀れに見えたのか、ブッチがコウタの膝頭に二三度鼻先を擦り付け、膝の上にひょいと乗った。
「おっ!ブッチが慰めてくれるってさ。俺も慰めてやるから、そんな女忘れろ」
兄はそう言うが、彼女にまだ振られたわけじゃない。ただ……好きじゃないと言われただけだ。もともとこっちから付き合ってって告白したわけだし、たとえ校門を出て逆方向へ帰宅するとしても、メアドの交換すらしていないとしても、デートもまだしていないとしても、それはまだ付き合って二ヶ月しか経っていないからで……。そう思っても、何の慰めにもならないけど……。
「ブッチ、お前柄は汚いけど、綿菓子みたいにふわふわだな」
「お前もマシュマロみたいにふわふわだぞ。食べたいくらい」
朋がコウタの頬にぱくっと食いついた。
「もうっ」
兄が言うとなんだかエロティックだ。頬を食まれ、ついでにぺろりと舐められた。
「ほんと、コウタは美味い」
コウタは思わず笑顔になっていた。
「こら、朋。コウタを喰うんじぇねぇ」
この家の長男、聖文のお帰りだ。声の調子から不機嫌さが伝わってくる。
コウタは思わず身震いし「おかえり」と振り返り言った。
つづく
>>次へ
あとがき
こんばんは、やぴです。
新連載スタートしました。
迫田家の男たちが一気に登場しましたが、このお話は三男コウタと次男朋のお話です。
自信のない卑屈な弟と、のんびり屋のパーフェクトな兄の恋をのんびりと見守って下さいまし。
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教室の向こうから聞こえた彼女の声。
くすくすと笑い合う女の子たち。
まさかと思った。いや、やっぱり――だよね……。
コウタは引きつる顔を下に向け、ドアにかかる手から力を抜いた。踵を返し、徐々に駆け足で学校を後にした。
家に帰ると真っ直ぐに縁側へ向かった。築三十年の一戸建てには小さな縁側がついている。和室に入ると、コウタ愛用のへちゃげた座布団に茶色のブチ猫――その名もブッチが鎮座していた。ガラス越しに陽を浴び、こちらには背を向けている。
コウタは鞄を放り背後から猫をすくいあげた。猫はビクッと驚き小さく悲鳴のようなものを上げた。
コウタはそのままそこへ座り、膝の上に愛猫を乗せた。
日向ぼっこの邪魔をされた猫は不機嫌そうに、コウタの膝から降りた。
「おい、コウタ!ブッチをいじめるなよ」
背後で二つの声が重なった。双子の弟、陸と海だ。コウタは振り返る代わりに肩を竦めた。
「無視するのか?」
そう言って二つ年下の弟たちはコウタの両脇をがっちりと固めた。
「ブッチはいじめてないし、無視はしてない」
返事に肩を竦めただろう?
「そんなことないよねぇ、ブッチぃ。コウタがお昼寝の邪魔したもんね」
コウタの右隣に座る陸が、猫の喉を擽り舌っ足らずで話し掛ける。猫は喉をゴロゴロと鳴らし、すこぶるご機嫌だ。
我が家の愛猫は四男の陸に一番懐いている。
「どうせ、彼女にでも振られて、八つ当たりだろう?」
微妙に的を射た言葉で、コウタの胸を鋭利な刃物で切り裂いたのは毒舌五男、海だ。
「違う……」コウタはか細く反論した。違うのは八つ当たりという所だけれども……。
「おいおい、コウタをいじめるなよ」
優しく甘い声。
朋だ!
弟たちにいじめられるコウタを助けてくれる、救世主のような存在。
「朋ちゃん、今日バイトは?」
コウタは振り返り言った。双子も振り返り、モデル並みのスタイルと顔を持つ次男に尊敬の眼差しを送る。
迫田家の次男はこの界隈ではモテ男として有名だ。地元の学校ではいい男過ぎて伝説が数えきれないほどある。そんな兄を持つコウタは平凡以下な自分が恥ずかしくてたまらない。
「今日は休み。ほらお前らどけ」
朋は双子を追い払い、コウタの横に腰をおろした。
「んで、失恋か?」
「朋ちゃん……嬉しそうに言うのやめてよね」
「そんなはずないだろう?」
「笑ってるじゃん」
「しょうがないだろう。お前に彼女なんて百万年早いっつーの!」
朋はコウタの頭をぐしゃぐしゃと掻き乱し、そのまま肩を抱く。
背後で双子が「あー!コウタ、ずるいっ!」と不満の声をあげる。
「おいっ!コウタを呼び捨てにするな。お前たちは弟だろう」
「だって、コウタちっちゃいもん」と陸。
「ほーんと。兄弟の中で一番のチビだもんな」と海。
「いいよ。朋ちゃん。チビなのは本当だもん」
この春、二歳下の双子に身長を追い抜かされた。たかが一センチ、されど一センチ。それよりも、十七歳にもなって、彼女を作るのは早いと言われることの方が問題だ。そんなに僕は不細工なのか?
あまりに哀れに見えたのか、ブッチがコウタの膝頭に二三度鼻先を擦り付け、膝の上にひょいと乗った。
「おっ!ブッチが慰めてくれるってさ。俺も慰めてやるから、そんな女忘れろ」
兄はそう言うが、彼女にまだ振られたわけじゃない。ただ……好きじゃないと言われただけだ。もともとこっちから付き合ってって告白したわけだし、たとえ校門を出て逆方向へ帰宅するとしても、メアドの交換すらしていないとしても、デートもまだしていないとしても、それはまだ付き合って二ヶ月しか経っていないからで……。そう思っても、何の慰めにもならないけど……。
「ブッチ、お前柄は汚いけど、綿菓子みたいにふわふわだな」
「お前もマシュマロみたいにふわふわだぞ。食べたいくらい」
朋がコウタの頬にぱくっと食いついた。
「もうっ」
兄が言うとなんだかエロティックだ。頬を食まれ、ついでにぺろりと舐められた。
「ほんと、コウタは美味い」
コウタは思わず笑顔になっていた。
「こら、朋。コウタを喰うんじぇねぇ」
この家の長男、聖文のお帰りだ。声の調子から不機嫌さが伝わってくる。
コウタは思わず身震いし「おかえり」と振り返り言った。
つづく
>>次へ
あとがき
こんばんは、やぴです。
新連載スタートしました。
迫田家の男たちが一気に登場しましたが、このお話は三男コウタと次男朋のお話です。
自信のない卑屈な弟と、のんびり屋のパーフェクトな兄の恋をのんびりと見守って下さいまし。
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2012-01-30 00:32
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