はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

あまやかなくちづけ 8 [あまやかなくちづけ]

森野は文字通り飛び起きた。

頭がガンガンする。何とか枕元に時計を見つけ時間を確認した。
早朝。出勤時間にはまだある。ほっと一息ついたが、何かがおかしい。

目の前に移る光景は、毎朝自分が目覚めて目に入るものとは違った。

「な…んだ……」

壁を隔てた向こうでシャワーの音がする。裸の自分を見やり、乱れたベッドを凝視する。そして、開封済みのコンドームの袋。

「守くん?」小さく口元で呟く。
ベッドからのそりと起き上がり、身体が軋むのを感じた森野は、いつもとは違う感覚に眉を顰めた。

「守くんっ!」
今度は先ほどよりももっと大きな声で守を呼んだ。

シャワーの音が止み、バスルームの扉が開く音がした。

森野は慌てて、ベッドの下に脱ぎ捨てられたシャツを羽織った。

「森野さん、シャワーはいいんですか?」

ポタポタと雫を垂らす髪の毛は、守のふわふわのものとは違った。小さくてかわいい守の姿はそこにはなく、自分よりも背が高く、引き締まった肉体に男らしい顔つき。見知った顔は加賀谷修介だった。

「加賀谷さん……?どうしてここに?」
ここがどこかも分からないのに、何を訊いているのだろうと森野はぼんやりと思う。

「どうして?」加賀谷はさも可笑しそうに破顔した。そんな彼を見て、ときめかない女性はいないだろう。だが森野は違う。

「そんな顔しないで下さい。合意の上なんですから」
加賀谷はまるで悪夢だと言わんばかりの顔つきの森野を見て言った。両手で前髪をかきあげ後ろへ撫でつけ、そのままの姿勢で森野にわざとらしく裸体を見せつける。

シャワーを浴びたばかりの彼はタオルひとつさえ身に着けていなかった。否が応でも下腹部に視線が向く。股の間に見える彼の一物は興奮状態になくとも立派な大きさだった。

「僕は記憶が……どうやら、お酒を飲み過ぎたようで、それなのにそんな事できるはずが――」

森野はパニックになりながらも、こういう時、結局二人の間には何もなかったと加賀谷が言うはずだと、その言葉を待った。

「とてもよかったですよ。しなだれかかるあなたは、とても魅惑的で」

森野は加賀谷に抱きすくめられ、ヒッと悲鳴のような声をあげた。

加賀谷はすかさず森野の尻の狭間に指を滑り込ませ、耳元でそっと囁く。

「記憶になくても、身体は覚えているでしょう?ここを大きく開いて俺のをしっかりと呑み込んでいたのですから」

硬さを増した加賀谷の怒張が森野の身体に擦り付けられる。その感触の大きさに森野は思わず腰を引いた。

「やめてください。僕は、そんなこと――」
していない――そう言い掛けた森野だったが、明らかに下肢に残る感触は二人が交わった事を意味していた。

「森野さん、俺、本気なんですよ。一夜限りにするつもりはないです。付き合ってくれませんか?」

本気?

森野はゆっくりと顔を上げた。加賀谷は思いの外真剣な表情で森野を見ていた。
いったいどうして彼は僕の事を?彼のような美男子が僕のような平凡な男を相手にするはずがない。けれど、本気だと言った加賀谷の言葉を嘘だと一蹴出来ないでいた。

「もしかして、付き合っている人が?さっき、名前を呼んでいたのは恋人の名ですか?」

恋人。そうだ、守くんは僕の恋人で、僕は彼を愛している。大切にしたいのに、僕は裏切った。
ああ……。僕はもう、守くんには相応しくない。守くんは、守くんに相応しい相手と付き合うべきなんだ。

「いえ、僕の愛する人です。だから、加賀谷さんとは付き合えません」

加賀谷は一層森野をきつく抱いた。

「諦めませんよ。俺はあなたを向こうに連れて行くつもりですから」

「行きません。僕の居場所はここですから、クビにでもならない限り、社長の傍を離れることも無いでしょう」
森野は社長秘書として誇りを持って答えた。加賀谷が海外支社長になるのは目に見えているが、あくまで自分は浅野食品の社長秘書なのだと胸を張った。

だが、森野のこの返答を加賀谷は勘違いしたのだ。

森野の愛する人が、社長――つまりは一葉だと思い込んだのだ。

つづく


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