はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

あまやかなくちづけ 9 [あまやかなくちづけ]

「ねえ、兄ちゃん、最近森野さんどう?」

いつもと同じくべたべたとくっついたままリビングへ入って来た兄二人に、守はかき氷のシロップをそのまま飲んだような顔で話し掛けた。
会社の飲み会で遅くなると知っていたが、森野の事が気になりいちゃつく二人を渋々待ち受けていたのだ。

「森野?どうって、いつもと同じだ。ただちょっと、一葉に手を焼いているって感じかな」
容は守をソファの端へ押しのけ一葉と共に座る。

「ちょっと、容!変なこと言わないでよ。森野を泣かしたのは僕じゃないからね」

「泣かした?どういうこと、一葉!」

森野が泣くという聞き慣れないフレーズに戸惑い、守は咄嗟に強い口調で訊いた。

「おい、守。一葉に大きな声出すな」

「なんだよ。兄ちゃんは一葉を甘やかせ過ぎなんだよ」

「お前だって似たようなもんだろう。一葉を甘やかさなかったら、誰を甘やかすんだ?それに冷たくして浮気でもされたら困るからな」

こうやって過去の一度の過ちを持ち出しては、結局そのあといつも通り……いやそれ以上に盛り上がるのだ。

「もうっ、そんな目で見られたら、僕我慢できない」

やっぱり――

「ふふ、一葉はいつも発情してるだろう?」

また始まった――

いつものことに守は溜息すら吐くのはもったいないと、ひとりリビングを後にした。
自分の部屋へ戻り、森野の事を考える。

悪かったのは自分だと分かっているのに、森野が連絡をくれるのを待っている。結局、こういうところが子供なのだろう。

はぁ……っと溜息をつき、いったい何を躊躇う必要があるのかと、守は勇気を振り絞って森野に電話を掛けた。直接声を聞けば、このもやもやとした得体の知れない感情もすっきりとするはずだ。

けれど、夜遅いためか森野が電話に出る事はなかった。それは珍しい事だ。森野はいつでも電話に出てくれていた。もしかして、愛想をつかされたのだろうか?

今すぐ森野のマンションに行ってみようか。いや、そんなことしたら困らせるだけだと分かっている。森野は大人で、子供じみた行動をする守に更に呆れる事だろう。

守はじっと我慢した。きっと着信を見て、森野が掛けなおしてくれるはずだ。

だがこの時、森野は加賀谷とすでにホテルにいた。森野が守の電話に気付く事も、守がこの状況を知ることもなく、ただ夜は過ぎていった。

つづく


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