はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

あまやかなくちづけ 1 [あまやかなくちづけ]

念願だった容の秘書になった翌年、一葉は社長に就任した。これが一族が経営する会社の強みとばかりに経験の浅い社長の誕生だった。

元を辿ればそれもこれも、前社長である父がいきなり引退を発表したためだった。

これに一番不満をあらわにしたのは一葉だった。
容の秘書というおいしい仕事――もとい、やりがいのある仕事を取り上げられたのだから、地団太踏んで抵抗したのは言うまでもない。

それを父が宥めようとしたがまったくいい結果が得られず、結局容が一葉を籠絡して新社長誕生という春を何とか迎えることが出来たのだった。

浅野食品はもともと一葉の祖父が会長を務める神田グループのお荷物会社だった。
ここまで大きく成長したのはひとえに父の努力と犠牲の賜物だ。

直接的なかかわりは神田グループとは一切ないが、それでもいざという時の後ろ盾があるとなしでは全く違う。

兄二人が慌ただしい春を迎えた頃、浅野家三男――守は高校三年生となっていた。

***

「ねえ、森野さん。森野さんて、長男なのにどうして清四郎っていうの?」

「あ、守くん……僕の名前をどこで――」

守は冷蔵庫から飲み物を取り出すと、振り返りざまにリビングのソファに座る森野を見た。
森野は本気で訊いているのだろうか?

途中いろいろあったものの恋人になってから二年が過ぎた。いまさらどうして、守が森野の名前を知らないなどと思ったのだろうか。

守は細かく説明するつもりもなく――もちろんするほどでもない――とりあえず、森野の横に座ると紙パックのジュースとグラスをローテーブルに置いた。

「そんなの一葉に聞けば分かるし。だって一葉、社長だもん」

てきぱきとジュースをグラスに注ぐ森野は、守の言葉に落ち込んだ表情を見せる。

「僕は、社長秘書なんだけど、一葉さんは、あ、いや――社長はいまだに副社長秘書をやめようとしないので困っているんだ」

一葉は社長に就任してからも、その地位に抵抗し続けている。
結局は実質社長は容が、その秘書は一葉、森野は「秘書室室長ね」と一葉に言われ、その肩書のまま一葉の秘書をしている。

そしてこの状況をさらに複雑化させたのが、新しい副社長秘書――加賀谷修介だ。

彼を秘書に抜擢したのは、前社長だ。きっと何も考えていなかったのだろう。彼の存在は社長の機嫌をたいそう損ねることになり、仕事にも少なからず影響している。とばっちりを受けるのは当然、社長秘書森野だ。

加賀谷は森野のひとつ年下で、最近まで本社と高塚物産の海外支社とを行き来していた。今は高塚物産の中に浅野食品が間借りしている状態だが、時期をみて本格的に海外進出する予定だ。それを任されていたのが加賀谷だ。

加賀谷は謎の多い社員だ。森野が彼を初めて見たのは一年ほど前――ちょうど社長室で海外行きを言い渡されている時だった。

「副社長秘書は新しい人がなったんでしょ?」
守はいつの間にかソファに横になり森野に膝枕をして貰っている。森野は守のふわふわの髪の毛を指先でいじりながら返事をする。

「うん、そうなんだけど。その秘書が男だから問題なんだ。それに有能だし、だって実質社長秘書みたいなもんだからね」
そう言って森野はさらに落ち込む。

そう、加賀谷は優秀で……男前だ。いたって普通の男、森野とは大違いだ。
だからこそ、一葉が加賀谷に牙をむいているのだ。容を取られはしまいかと。

「かっこいいの?一葉の好み?それとも兄ちゃんの?」

「そんなの僕にはわからないよ」
それは本当だ。かっこいいかどうかは分かるが、魅力や好みに話が及ぶと森野にはさっぱりだった。

「なら、森野さんのタイプじゃないって事だね」
守は甘える視線を森野に投げかけた。

「もちろんだよっ!僕には守くんだけだもの」

必死になる森野はかわいい。守は満足げに森野を見やり「それはそうとどうして清四郎なの?」と話を元に戻した。

つづく


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