はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

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Sの可愛い子犬 11 [Sの可愛い子犬]

「じゃあ、さっさと脱げよ」

ステフは苛々と言い、ジョンがベッドの上でごそごそと服を脱ぐ姿をじっと見ていた。靴下を脱いだ時、その顔色が変わった。

「ジョン、脚どうした?」

ジョンは言われて脚を見た。先ほど箒で叩かれたところが赤くなっていた。

「あっ……あの、ぶつけて――」咄嗟に嘘をついてしまった。ステフが心配そうな顔をしたように見えたのは気のせいだろうか。

「お前、嘘つくの下手だな。誰にやられた?」ステフはその程度の嘘などお見通しとばかりに目を細め、ジョンをねめつけた。

「誰にも。僕がぶつけたんです」ジョンは視線から逃れるようにうつむいた。

「ふーん……そいつを庇うのか……俺に嘘つくとどうなるか分かってるのか?」

「いえ……」

叩かれたことを告げ口すれば、もっとひどい目に遭うかもしれない。でも言わなければ、きっと今ひどい目に遭う。それでも、ジョンは言うつもりはなかった。この屋敷の誰も彼もが自分を嫌っているなんて考えたくなかったし、それをステフに知られるのも嫌だった。

「俺の玩具に傷つけた奴を、お前は庇うってことだな」

ステフが怒っているのはジョンにも分かっている。怒らせるべき相手ではないことも。

「ごめんなさい…僕がぶつけたんです。今度から気を付けますから」

ステフは頑ななジョンに嫌気がさしたのか、無言で部屋を出て行った。
残されたジョンは暫く裸のまま待っていたが、ステフが戻ってこないのでベッドに横になって待った。

いつしかジョンは眠ってしまっていた。
陽が沈むころになってようやくステフは戻ってきた。

「ジョン、起きろ!」

ジョンは飛び起きて、寝ぼけた目を擦りながらベッドに歩み寄ってくるステフを見た。

「ステフ様、僕眠ってしまって……」

「お前を傷つけるやつは、全員クビにしてやったからな」ステフはベッドに飛び乗り、ジョンを抱きしめそう言った。

「ステフ様、今……なんて?」

「使用人を全員クビにしたんだ。明日には新しいやつらがくるから、それまでは二人で何とかしないとな…」

いったいステフは何をしたのだろう。
全員クビにしてしまうなんて、本当にステフにはその力があったのだということに驚かされた。これで僕も逆らえばどうなるのかはっきりした。兄のことは脅しではないということだ。

でも、どうして僕のためにそこまで……それに、僕が黙っていたために関係ない人達まで職を失った。いや、そもそもそんなに大ごとでもないのだ。ただちょっと脚を叩かれただけだ。

「どうしてそんな……そんなことしたら、使用人の方たちが困ってしまいます」

その言葉にステフは腕の中からジョンを引き離し、さらには突き飛ばしベッドに転がした。

「お前は、俺の好意よりも使用人が大事なのか?」

「いえ……」

ステフがジョンの顔を覗き込むように両側に手をつき、上に跨った。

「あいつらはお前を傷つけた。俺のジョンの綺麗な足に傷をつけたんだ、クビになって当然だっ!」

ちょっと赤く腫れただけで、傷が残るわけでもないのに、どうしてステフはこんなにむきになっているのだろうかとジョンは思ったが、そんなふうに言われればなんとなく嬉しくて、それ以上クビになった使用人のことなどどうでもいいと思った。

「はい、ステフ様。あの、ありがとうございます」

「ジョン……喜んでくれたのか?」

「はい」

ステフはそのまま腕の力を抜き、ジョンに覆いかぶさった。

「ジョン……俺のそばにずっといるんだぞ。ジョン、お前は俺のものだからな」

それからステフはジョンを抱いた。
それが終わると、使用人がいないので食事は缶詰で済ませた。
そしてまた部屋へ戻ると、何度も何度もジョンを抱いた。

つづく


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Sの可愛い子犬 12 [Sの可愛い子犬]

ジョンは夜中に目が覚めると、部屋のカーテンを開け、月明かりでステフの寝顔を見た。
ステフのきらきらと輝く髪は月の光りと同じだった。
こんなに綺麗なのに、どうして僕を苛めるのだろうか。
僕を嫌っているアストンの息子だから、同じように僕を嫌うのだろうか。
でも、どうしてアストンは僕をあんなに嫌っているのだろう。

使用人をクビにしてしまうほど心配をしてくれたステフ、俺のものだと言ったステフ、どれもジョンの心の中を大きく占めている。

酷い事をされていると思っていたのに、いつしかステフが望むままに応えたいと思う自分がいる。
玩具だと言って、そばに置いておかれて――どうかしていると思うかもしれないけど、ステフの事を好きになっている自分に気づいた。

『お前は俺のもの』と言った言葉が、ずっとそうあって欲しいと思った。

ジョンはいつも二番だった。
何でも一番は兄のもので、ジョンが一番になれることなどなかった。
だけどステフは一番に僕を求めてくれる。
それが嬉しい。

「ジョン、何してる?」

月が明るすぎたのか、ステフが起きてしまった。目を微かに開け、こちらを見ている。

「あの、ごめんなさい……」

「眠れないのか?」

「いえ」

俯くジョンにステフが手を差し伸べた。

「こっち来い」

カーテンを閉めてベッドにあがると、ステフの手がジョンを絡め取った。
そのままジョンを胸の中に抱くと、ステフはまた眠り始めた。

予想外の優しい抱擁にジョンは困惑した。もしかすると、ステフも僕のことを少しは想ってくれているのだろうか?ここにいる間だけの玩具だったとしても、期待せずにはいられない。考え始めると目が冴えて、体は疲れているのにとても眠れそうになかった。

だけど、そのうち聞こえ始めたステフの寝息が心地よい子守唄となった。

翌朝、誰も起こしに来ないので、二人は昼過ぎまで眠っていた。
起きてお腹が空いていたので、また缶詰でお腹を膨らませた。
前日の激しい交わりのせいか身体が重く、ジョンはそのままふらふらと自室に戻った。

つづく


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Sの可愛い子犬 13 [Sの可愛い子犬]

ステフはひとり居間で横になっていた。
使用人をクビにしたのは少しやりすぎたと思わなくもないが、ジョンが正直に言わないから仕方がなかった。あいつはなんだってあそこまで頑固なんだ。
俺はジョンを脅かす相手を簡単に排除できるのに、なぜ言わないのか理解できなかった。おかげで全員追い出すはめになり、それはすぐさま父さんに知られることになった。ジョンを傷つけたやつかどうかはわからないが、偉そうに『旦那様に報告させていただきます!』とこの俺に向かって怒鳴りやがった。報告したところで、あいつらのクビは覆らない。なぜ俺にその権利がないと思ったのだろう。馬鹿な奴だ。
けど、報告が行けば他のやつらがすぐにでもやってくるだろう。父さんは俺をひとりに――ジョンと二人だけど――したりはしないだろう。とにかく過保護なんだ。

うとうとしかけた頃、郵便少年が電報を届けに来た。

電報には、ロンドンに行っている使用人の一部がホワイトヒルに戻るとあった。
ステフは電報をぽいっと投げ出し、ジョンのもとへ向かった。

「ジョン、たぶん夜には使用人が戻ってくる。おい、寝てるのか?」ステフはベッドに横になるジョンに近寄り、体を揺さぶった。「聞いてるのか?」

「はい……すみません」ジョンは赤い顔をし虚ろな目でステフを見上げた。声は掠れほとんど聞き取れないほどだ。

「おいっ、お前熱くないか?」

ジョンの腕を掴むステフの手が熱くなった。額に触れるとまるで焼けた石のように熱く咄嗟に手を引いた。
ジョンはハァハァと息を切らせ、力なくベッドに突っ伏した。

「おいっ、いつからこうなんだ?ジョン!おいっ……」
昼に起きた時は平気そうだったのに、どうして急に。熱が出たときはどうするんだ?そうだ薬!でもそんなものどこにあるかなんて知らない。

こんな時に使用人が一人もいないなんてタイミングが悪すぎる。せめてあの家庭教師でもいれば――くそっ!いないやつのことをあれこれ考えたってしかたない。父さんは俺もロンドンへ連れて行くつもりで、早々に家庭教師に暇を出した。俺はそれでもかまわなかったが、ジョンは勉強したそうだったから父さんの勝手には腹が立った。

とにかく冷やすしかない。ジョンをベッドに寝かせるとキッチンへ急いだ。ひと通り棚を探ってみたが、薬は見当たらなかった。適当な大きさの鍋に水を汲んでタオルを数枚引っ掴むと急いでジョンの部屋に戻った。
ジョンは部屋を出た時のままただそこに横になっていた。

生きている、よな……?

恐る恐る近づくとかろうじて息遣いが聞こえてホッとした。
ベッドサイドを陣取り、用意した濡れタオルをジョンの汗ばむ額にのせた。しかしすぐに熱くなり、見るとジョンの着ているシャツも汗でぐっしょりと濡れていた。

ステフは幼い頃母親にして貰った看病をなんとか思い出し、着替えさせることを思いついた。濡れた布は必要以上にジョンの肌にまとわりつき、脱がすのも簡単ではなかった。いつもの白くすべすべした肌も熱のせいで赤みを帯びじっとりとしていた。

もう一枚タオルを濡らしジョンの体を拭くと、ステフは自分も服を脱ぎ、ひんやりとした身体をジョンに絡めた。

「ジョン、お前凄く熱いな……俺にその熱、全部うつせ」

それからステフはジョンの身体を拭いては、身体を重ねることを繰り返したが、朝になってもジョンの熱は高いままだった。

「ジョン、おい……なんでまだ熱いんだ?ジョン……」

ジョンがうっすらと目を開け、口をわずかに動かした。ステフが口に耳を寄せると、ごめんなさいと聞こえた。

「なんで今そんな事……そうだ、医者を呼びに行ってくるから、待ってろっ!」

離れようとすると、ジョンに腕を掴まれた。弱弱しかったが、引き留めるには十分だった。

「なんだ?水か?」まったく。口を動かすのもやっとのくせに、どこにそんな力があったんだ。

「い……か、ない……で」

ジョンはそのまま気を失ったように眠ってしまった。
このまま目が覚めなかったら?たかが熱で死ぬやつなんかいくらでもいる。ジョンがそうならないとも限らない。こうしてぐずぐずしている間に手遅れになってしまうかもしれない。

ステフはジョンに寝間着を着せると、昨日脱いだズボンに足を通しシャツを手に階下へ急いだ。勢いよくフレンチ窓から飛び出すと、門に向って走り出した。
村までは少し距離がある、ステフは馬で行こうと思い立ち厩舎へと方向転換した。馬丁はクビにしてないからいるはずだ。

その時屋敷の門の向こうから馬車がやって来るのが見えた。
ロンドンから使用人が戻ってきたのだ。

つづく


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Sの可愛い子犬 14 [Sの可愛い子犬]

使用人たちは屋敷に到着するや否や、まずはジョンの看病に取り掛からされた。ひとまず戻ってきたのはたったの三人だったが、それでもステフにとっては喜ばしい援軍には違いない。

すぐに医者を連れてくるように手配し、ステフはジョンのそばに戻った。アストンの従者だった男――名前は知らないし知る必要もない――はジョンの様子を確認し、ステフに部屋から出るように命令した。もちろんアストンにその権利を与えられていたが、ステフがたかが使用人の言葉に従うはずもなく、頑としてジョンのそばを離れなかった。

医者が診察を終え薬の処方をして帰っていくと、ステフはようやく肩の力を抜いた。薬を飲めば熱はすぐに下がるだろうと医者は言った。しばらく安静は必要だが、深刻な病気ではないらしい。

気を抜いた途端、睡魔が襲ってきた。それにお腹も空いている。料理人が何か用意しているはずだが、ひとまずジョンとこのまま一緒に寝て目覚めたら食事をしよう。

ステフが目覚めた時、ジョンはまだ眠っていた。薬がよく効いているのだろうと思い、そっと部屋から抜け出しキッチンへ向かった。二人分のスープとパンを手に戻り、ジョンの寝顔を見ながらパンをスープでのどの奥に流し込んだ。こんなに堅いパンじゃジョンは食べられやしないだろう。それに丸一日以上何も口にしていない、もっと食べやすく体の負担にならないものを用意させよう。

ジョンが目覚めたのは翌日になってからだった。熱は下がり、赤かった顔もどちらかといえば青白いくらいまでになっている。
食事は食べやすく温かいものを用意させ部屋に運ばせた。結局ジョンはスープを飲むのがやっとだったが、起きた時おなかがすいたと言っていたし、汗でべたべたして気持ち悪いと言う余裕すらあったからもう大丈夫だろう。医者の見立ても同じだった。
従者の手を借りジョンを入浴させ――もちろん従者にはジョンの裸は見せていない――、シーツの交換も済ませ、またベッドに戻した。

使用人たちは、このジョンの扱いに訝しがっていたが、ステフの手前文句を言う者など一人もいなかった。機嫌を損ねれば即刻クビになるし、それを雇い主のアストンに言ったところでなかったことにはならない。ステフの言葉はアストンの言葉と同じ、ここにいる限り主人はステフなのだ。

その翌日には、ジョンの体調は何の問題もないところまで回復し、同時に追加の使用人も屋敷に到着した。

それでもステフは、もう一日休めとジョンに言った。あの日ジョンに無理をさせたのはステフだ。やっと二人きりになった解放感からジョンを好きなだけ好きなようにしてしまった。逆らわないのをいいことに。

そもそも使用人をクビにすることになったのはジョンがぐずぐずしていたせいだ。そのせいでジョンは裸で半日俺を待つ羽目になり、なおかつそのあとも朝まで裸で過ごすことになった。熱が出るようなことになってもおかしくはなかった。

おかげでしばらくジョンのあの顔が見られないと思うと、これからは多少自制することを考える必要がありそうだ。我慢できないのはジョンのせいなのに、まったく面倒ばかりかけるやつだ。

つづく


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Sの可愛い子犬 15 [Sの可愛い子犬]

いったい何が起きたのか。
ジョンはこの状況が怖かった。
熱のせいでほとんど覚えていないけど、ステフがずっとそばにいてくれたのは記憶にある。もしかすると夢だったのかもしれないけど、熱が下がった今もあれこれ世話を焼いてくれているのは確かだ。

「ジョン、他に何か欲しいものあるか?」ステフがスープを持って部屋に入ってきた。焼き立てのパンの香りも漂ってくる。

ステフは堅いパンがどうとかぼやいて、ここの料理人に口に入れたらとけるくらいの柔らかいパンを焼かせると言っていた。ステフがそう言うのだから、きっとトレイの上のパンはとても柔らかいに違いない。

ジョンは枕を背に起き上がった。ベッドから勝手に出ようとすると怒られてしまうのだ。こんなふうに誰かに看病されたのはいつ以来だろうか?風邪をひくことは時々あったけど、記憶を辿っても誰の顔も思い浮かばなかった。お母様は僕に関心はなく、勉強がいくらできても病気になっても会いに来てはくれなかった。今、お母様はどこで何をしているのだろう。

そういえば、十一歳で寄宿学校に入るまでは世話係がついていたはずだけど、なぜかその人の顔もおぼろげだ。結局、僕が熱を出したからといってここまで親身になってくれた人なんていなかったということだ。

どうしてステフは急にこんなにも優しくするのだろうか?こんなに甘やかされたら、もう前の僕ではいられない。

物心ついた時から自分を押し殺して生きてきたジョンにとって、自分の感情を優先してそれを言葉にし行動するのは容易ではなかった。でも、我慢するのももう限界だった。

今なら言ってみてもいいだろうか?優しくされなくてもいいから、言うとおりに何でもするから、僕だけにあの顔を見せて欲しいって。僕を抱くときに見せるあの顔――僕はあの顔が好きで、興奮して、気持ちよくなる。

「ジョン、聞いてるのか?」ステフはベッドサイドにスープを置くと、ジョンの顔を覗き込んだ。

ジョンは羞恥に頬を赤くした。熱は下がったはずなのに顔が燃えるように熱い。こんな時にステフに抱かれたいと思うなんてどうかしている。

でも、こんなにも優しい顔で見つめられたら、何をしても許されると勘違いしてしまいそうになる。ほんの少し近づくだけで――ほら、唇が触れてしまう。

ジョンは初めて自ら行動した。触れた瞬間、ステフの驚いた顔が目に入り、自分のしてしまったことにおののいた。

「あの……すみません、僕――」

言い訳する間もなく、ジョンの口はステフによって塞がれていた。頭の後ろをしっかりと掴まれ逃げることもできない。ジョンの意思など関係なく、舌先でこじ開けられた唇はステフをすんなりと受け入れる。いつだって僕の体はステフを喜んで迎い入れてしまう。

「んん……っ……っ、ステ……」

執拗に吸われて、言い訳したいのに、させて貰えず、どんどん気持ちよくなって、もっとして欲しくて、ジョンは腕をステフの背にまわして抱きつき、自分から舌を絡めていった。
ステフの熱い舌がジョンを蹂躙する。頭の中はぐちゃぐちゃで、もはや何も考えることができない。

「ジョン、かわいいよ。その顔、好きだ」長い口づけが終わると、陶然とした顔のジョンにステフが言った。

「僕も、僕も好きです」ジョンは無意識にそう口にしていた。

「俺の顔が?」
ステフはジョンの顎を指先で持ち上げ訊ねた。答えによっては褒美でも罰でも好きな方を与えるぞという顔をしている。
ジョンはステフに与えられるならどちらでもよかった。

「ステフ様が好きです」
「どんなふうに?」
「ずっと傍にいたいです」
「ずっと傍にいたいっていうのは、つまり、こういうこともされたいってことか?」

ステフは指の背をジョンの体に滑らせた。ゆっくりと降下するその手は期待通りの場所で止まった。ジョンは黙って頷いた。

「気持ちいいからか?」

気持ちいい――確かにそうだけど、でもそれだけではない。

「ステフ様が喜んでくれるので、僕も嬉しくて、気持ちいいです」

まるで熱に浮かされたように、ジョンは今の気持ちを素直に吐き出した。気づいてしまった気持ちを隠すことだってできたけど、なぜかステフがこの答えを求めている気がしたのだ。

「お前はいつからそんなふうに俺を惑わすことを覚えたんだ?俺がそう言われて喜ぶとでも?」

ステフの言葉にジョンは体を強張らせた。ほんの少し前まで二人の間にあった甘く心地よい空気は消え去り、あるのはステフの冷たく突き刺さるような視線だけ。

「すみません。あの……いえ、つい……」

ジョンの目から涙が溢れた。
ぽろぽろと大粒の涙が零れ寝間着を濡らす。
自分の立場も忘れ、口を突いて出た言葉をステフに咎められ、浮かれたジョンの心は無残にも握り潰された。

つづく


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Sの可愛い子犬 16 [Sの可愛い子犬]

「なんで泣く?なんで謝る?今のは全部ウソなのか?」

急に俺が喜びそうなことを口にしたかと思えば、今度はそれを否定するっていうのか?
はぁ……こいつが急に好きだとか嬉しいとか言うなんておかしいと思ったんだ。熱はもう下がったっていうのに、この状態だとまだ数日はベッドに縛り付けておく必要がありそうだ。

「ちっ違います、ほんとう……です」

ジョンはうつむいたままバカみたいにぼろぼろと泣いている。本当ならなんで泣く必要があるんだ?まったく。
ステフはうつむき泣くジョンの顎を持ち上げ、泣き濡れた頬にキスをした。

「泣き顔も、かわいい」
ジョンの泣き顔はステフの好物だ。つい泣かせたくなるが、こういう泣き方は俺の身がもたない。

「あの……」
「本当に俺の事好きなんだな?」
「はい」

「そうかよかった」そう言ってステフは戸惑うジョンを抱きしめた。

「でも、僕は旦那様に嫌われていて、ステフ様も……」

ステフはジョンの肩を掴みぐっと押しやった。

「おいっ、いつ俺がお前を嫌いだと言った?父さんが何言ったかは知らないが、あいつは貴族が嫌いなんだよ。俺はお前が貴族だろうが、なんだろうが関係ない。お前は俺のものなんだ」

そう、ジョンは出会った時から俺のものだ。父さんが何を言おうが手放さないし、誰にも渡すものか。
ジョンはぐすぐすと鼻をすすり、わかったというように頷いた。それから腕をすり抜け自分から抱きついてきた。

どうせならさっきみたいにキスしてくれてもよかったのに。ジョンが慣れないことをするものだから、もう我慢できないところまできてしまっている。

「ジョン、少しだけ俺の相手をしろ」

「はい、ステフ様」ジョンは意味が分かっているのかいないのか、即答だ。

ステフはいつもより時間をかけて優しくジョンを愛撫する。顔を見たくてたまらないが、見てしまったらむちゃくちゃに犯してしまいそうだ。

「ジョン横を向け」

言われた通り横向きになったジョンを後ろからゆっくりと犯す。この数日生きた心地がしなかったのだから、このくらいは褒美としてもらってもいいだろう。ああ、くそっ!気持ちよすぎる。けど、無理はさせたくない。

そんなステフの葛藤を知ってか知らずか、ジョンがもどかしげに尻をこすりつけてきた。
ステフは束の間葛藤したが目の前の誘惑には勝てなかった。

「ジョン、こっちを向け」

ジョンが体をわずかによじり顔を向けると、ステフは飢えた獣のようにジョンの唇に吸い付いた。ジョンの気持ちよさそうな顔も、舌を強く吸った時にきゅうきゅうと締まるあそこも、すべてが愛おしくてたまらない。もうジョンはただの玩具ではなく、ステフにとって大切な存在になってしまった。出会いも関係性も普通ではないことはわかっている。でも、考えたってどうにもならない。

結局いつものように奥まで思い切り突かれるジョンの顔を見ながら、たっぷりと中に出してやった。ジョンは途中我慢できなくなって自分で自分を擦り先にイってしまったが、今日の所はお咎めなしだ。次にやったらあそこをきつく縛って出せないようにしてやる。

つづく


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Sの可愛い子犬 17 [Sの可愛い子犬]

ジョンとステフは二人が出会ったあの大きな穴の開いた大木のそばに来ていた。屋敷のすぐ裏手なのになぜかこの場所に人が足を踏み入れることはなく、二人が誰にも邪魔されずゆっくりと過ごすには最適の場所だ。

「ジョン、ここはお前だけの秘密の場所と言ったな?今でもそうか?」

「いえ、ステフ様と二人の秘密の場所です」

ステフは大木に寄り掛かるようにして草地に腰をおろした。ジョンは顔色をうかがいつつもぴたりと寄り添う。少し前からステフとの関係に変化が起きていたが、それでもステフはステフでしかなく調子に乗っていると痛い目に遭う。

ステフの視線に気づいてジョンは顔をあげた。
目を閉じる間もなくすぐに唇が落ちてきて、キスをするステフの顔をしばらくそのまま眺めていた。

「ずいぶん余裕だな、ジョン」ステフがうっすらと目を開けて言う。

余裕なんて――ない。今だってキスされただけであそこがずくずくと疼いてどうしようもないのに。それにいつも見られてばかりで、僕だってステフの色々な顔を見たい。そう思うのはわがままだろうか?

「ジョン、立ってこの木に手をつけ。後ろから入れてやる」
「えっ、もう?」
「そんな欲しそうな顔して嫌だっていうのか?ちゃんとオイルは持ってきたから――それにお前はすぐ気持ちよくなるだろう?」

ジョンは頬を赤らめもごもごと返事をした。本当に自分でもどうかしていると思うほど、すぐに気持ちよくなってしまう。もう何か月もステフとこうした関係を続けていれば仕方がないと自分に言い聞かせてみるけど、やっぱりどうかしている。ステフにあそこをいっぱいにされると思っただけで、勝手に体が期待して熱くなる。

ジョンは命じられるままにズボンを脱いでステフに背を向けると、大木に手をついた。

ステフが後ろから近寄り、ジョンのうなじにキスをした。片方の腕を前にまわし背を抱くと、ジョンの秘部にオイルを纏わりつかせいきなり突き立てた。

「あぅっ……ああ、ステフ様、ああ……そんな、すごい大きさ……」
「お前がそういう事言うと、どんどん大きくなるぞ」
「はい……お願いします」
「欲張りだな」

面白がるような声と温かい息が耳にかかり、ジョンの全身が粟立った。

ステフはわざとゆっくり抽挿を繰り返す。じれったさにジョンがうめくと、仕方のないやつだとばかりに腰をぐっと掴まれ激しく突き上げられた。何度も何度も奥を突かれ足がガタガタと震える。立っているのもやっとで必死に木にしがみついた。

「あっ、あっ、あっ……ああ、いい……ステフ様……ああ、もっと――」

「ジョン、お前のその声、好きだ。もっと、聞かせろ」
ステフは足元のおぼつかないジョンの背をしっかりと抱くと首筋に噛みついた。

「ああ!ぁ、いい……いいです……んんっ」
ジョンは我慢できず自身に触れた。少し擦っただけで達してしまいそうなほど張り詰めている。

「おいっ、ジョン!勝手に自分の弄るなよ。俺がいいって言うまでだめだ。まったく、立っているのもやっとのくせに、両手をちゃんと木につけとけ」

「……でも」ステフに命じられ、ジョンは渋々手を離した。

ステフがぴちゃぴちゃと耳朶をしゃぶる。「ジョン、まだだぞ」

まだと言われてももうダメだ。触ってないのにイってしまいそう。

「お前のかわいい顔見たいから、こっち向け」ステフは自身を引き抜くと、ジョンの肩を掴んで向かい合わせた。木に背を押しつけ片足を持ち上げると、再度挿入する。

半ば体が浮くほど突き上げられ、ジョンは襲ってくる波にあらがおうと必死になった。

「ステフ様、もう、ダメ……だめぇ……や」

ジョンが我慢の限界を迎えた時、ステフも限界が来たのか二人同時に達した。荒い息のまましばらく抱き合っていたが、ふいに草地に投げ出された。

「おい、誰がお前もイっていいって言った?」

おどおどとしながら見上げると、ステフは笑っていた。

「うそだよ。だって、お前のあの顔好きだから。それにお前、俺のコレでイッたんだろ」ステフは満足げに自分のモノに触ると、手を伸ばしてジョンを抱き起した。手を引きどんどん屋敷から遠ざかる。

どこへ行くのか不思議に思っていると、林を抜けた先には小川が流れていた。ステフはジョンが思っているよりこの屋敷周辺を知っているようだ。

「ここで、綺麗にして帰ろう」

ほとんどどちらに流れているのか分からないほど穏やかな流れの中に、二人は体を浸した。まだ水浴びには早い季節だが、火照った体にはちょうど良かった。

「ジョン、お前はすぐ風邪ひくから、川から上がったら急いで屋敷へ戻るぞ。ベッドであったまろう」

「はい、ステフ様」ステフの優しい言葉に、ジョンは元気よく返した。

つづく


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Sの可愛い子犬 18 [Sの可愛い子犬]

ジョンとステフは二人だけの生活を満喫していたが、ある日アストンに呼ばれステフはロンドンへ行くことになった。
本格的にシーズンが始まり、アストンは息子の顔を各方面へ売るつもりだ。

もちろんステフはジョンも連れて行きたいと言ったがそれは叶わなかった。それなら行かないと反発もしたが、ジョンを今すぐに屋敷から追い出すこともできるというようなことをほのめかされて、ステフは父親に逆らうことをやめて指示に従うことにした。

もちろんただ黙って従うようなステフではない。アストンはシーズン終わりまで息子をそばに置くつもりだったが、ひと月で手を打つことに了承した。

ステフはすぐに戻ってくると言ってロンドンへ発った。

ひとりになったジョンは不安で仕方なかった。
使用人たちはジョンの事をよく思っていないが、クビにはなりたくないので何かするようなことはない。それに以前のように、やられっぱなしでいる気はなかった。

問題は使用人のことではなく、それとは別の何かがジョンを不安にさせていた。

ステフのいない屋敷での生活は退屈だった。
ほとんどの時間を図書室で過ごし、あとは秘密の場所に出掛けては、自分の身体を弄って寂しさを紛らわせていた。

裏庭から屋敷へ戻る途中に通る屋敷の西側の棟は、使用人たちの住まいとなっている。
その脇を通り過ぎようとした時、開いている窓から声が聞こえてきた。

「それにしてもあの子、使用人までクビにさせるなんてどうやってステファン坊ちゃんに取り入ったのかしらね?」
「まったくだ――そういえば、ここの前の持ち主だったって聞いたけど……どうなんだ?」
「そうらしい……でも、だとしたら、どうしてあんなに仲良くしてるんだろうな?」
「そうだよ。この屋敷を奪ったのが旦那様で、坊ちゃんはその息子だよ。それにここの前の持ち主が自殺したのも、旦那様のせいだって噂も――」
「しっ!それはあくまで噂だよ。……でも、ありえる話だけどね」

ジョンは立ち尽くしていた。
もともと、父が自殺と言うことも知らないのだ。ただ死んだという知らせを受けて、兄と父のいる屋敷へ駆けつけた。葬儀はもう終わっていて、呆然とする兄弟の前に現れたのがアストンだった。

アストンの口からは父が自殺したとは聞いていない。もしかすると兄は聞いていたのかもしれないが、ジョンの耳には届いていない。

あまりに信じがたい突飛な噂話はまだ続いている。もう聞きたくないと思いつつも聞かずにはいられなかった。

コッパー子爵はアストンにほとんど価値のない鉄道株を掴まされ、結果破産してしまった。
アストンはそれで莫大な利益を得て、子爵の持つ土地や屋敷を手に入れた。
理由は、以前とあるパーティーで子爵に恥をかかされたことだという。

でも、恥をかかされたからといって騙したりするだろうか?それにアストンはそんなことしなくても元々金持ちだ。

もし今の話が事実なら、ジョンは親の仇に引き取られ世話になり、その息子のステフを好きになってしまっている事になる。

そんなはずない。そう思いながらも震えが止まらなかった。足を忍ばせテラスから邸内へと入ると、図書室へ駆け込んだ。

読みかけの本がいくつも重ねられた机に突っ伏し、震えがおさまるのを待った。
アストンに引き取られるときに、借金があるからその分働けと言われた。いったい何が起きているのか理解するまもなく、なぜという疑問をぶつけることさえできなかった。それに兄はアストンと話をしていて、弟がどうなるのか知っていたはず。兄が何も言わないのだから、いったい僕に何が言えただろう。

兄はいまやコッパー子爵だ。貴族が嫌いなアストンは、新しい子爵に利用価値があると思い援助をしているに過ぎない。

だから憎むべき対象が僕だけなのも仕方がない。

ステフはこのことを知っているのだろうか?
僕が何者でこの屋敷が誰のものだったのかは知っていた。

アストンがお父様を騙したことは知っているのだろうか……もし、知っていたとしたら……。
そもそも、この話は本当なのだろうか?

こんな時にステフがいないなんて――

「会いたい……」ジョンにはただその想いしかなかった。

つづく


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Sの可愛い子犬 19 [Sの可愛い子犬]

寂しい気持ちと、もやもやとした気持ちで、ジョンはまた秘密の場所に向かっていた。
ぽっかりと開いたあの大きな空間を見るとほっとする。

「ジョン」

突然名前を呼ばれ、ジョンは声のした方に目を向けた。ここでジョンの名前を呼ぶのはステフしかいない。そう思うと自然と笑顔になっていた。

しかし、目に映ったのはステフとは似ても似つかない黒髪に黒っぽい目をした紳士だった。

先日この屋敷を訪れた父の知り合いのアルフレッド・スタンレーだ。

「あの……どうしてここに?」ジョンは目をぱちくりとさせた。

「君にもう一度会いたくてね」アルフレッドはこともなげに言い、ジョンに向かってにこりと笑った。

ジョンは目の前に立つアルフレッドを見上げた。なぜ僕がここにいるとわかったのだろう。彼は見る限り手ぶらだし、現れた方向からすると、徒歩でやってきたようだ。いったいどこから?もしかすると林の向こうに馬か馬車を待機させているのかもしれない。訊ねてもよかったけど、それを今知る必要はないと思った。

「どうだい?ここでの生活は?」アルフレッドはそう言うと、ズボンが汚れるのも構わず木の根元にどっかりと腰を下ろした。長い脚を無造作に伸ばし大木に寄り掛かる。

「はい、楽しいです」ジョンは答えながらアルフレッドの隣に座った。

「そう、それならよかった。前にちょっとした噂を耳にしていたから心配だったんだ」

もしかして、アストンが口止めしている事を知っているのだろうか?
アルフレッドの顔を見れば、本当に心配してくれているのがわかる。それでもジョンは秘密をまだ打ち明ける気にはならなかった。

「あの、お父様のお友達なのですか?」

ジョンはふと父の親しかった人や、普段何をして過ごしていたのか知らないことに気づいた。死んでしまったらもう話をすることもできない。なぜこれまで少しも関心を持たなかったのだろう。

「少し違うけど、君のお父様には以前お世話になった事があって、それで君の事が気になってね」アルフレッドは本当に心配事は何もないのかい、というようにジョンの顔を覗き込んだ。

ジョンは思わず顔を伏せた。アストンにここに来た頃の話はするなと言われている。もし、僕がすべてを打ち明けたらどうなるのだろう。ステフは僕を守ってくれるだろうか。

どうにも思い切ることができず、ジョンは顔をあげると先日耳にした噂話についてアルフレッドに訊ねてみた。

「お父様は、自殺をなさったのですか?それは……アストンのせいなのですか?」

アルフレッドの片方の眉がぴくりと動いた。おそらくそんなことを聞かれるとは思いもしなかったのだろう。束の間躊躇った後、ゆっくりと話し始めた。

「そうだよ、君のお父様は自殺をしたのだよ。理由はいろいろな事が重なってしまったとは思うのだが、アストンに……言い方は悪いけど、騙されたんだ」

噂は本当だったんだ。

「それでは、お母様はどうして僕たちを置いて行ってしまわれたのですか?」答えてもらえるとは思わなかったが、訊かずにはいられなかった。

「君のお母様は……お父様が亡くなったショックで自分の家へ戻られたのだよ」

僕と兄さんはお父様が死んだと聞かされてすぐに学校を出た。それなのに屋敷はすでにもぬけの殻でアストンだけがそこにいた。お母様が僕たちにも会わずにどこかへ行ってしまうなんて考えられない。僕だけなら、それもあり得るかもしれないけど。

父が死に母は実家に戻り、兄は学校へ戻った。僕は?なぜ僕だけがここへ?

「ではなぜ、アストンはお父様を騙して……どうして、僕をここへ連れて来たのでしょうか?」

果たしてアルフレッドにその答えがわかるだろうか。

つづく


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Sの可愛い子犬 20 [Sの可愛い子犬]

ホワイトヒルのコッパー邸で――今はアストン邸と呼ぶべきだろうか――何が起きているのかはある程度把握していたつもりだったが、状況はアルフレッドが思っていたものとは違っていた。

「正直に言うと、アストンは子爵を恨んでいた。だから子爵からすべてを奪い、君を引き取り――君は本当に酷い事はされていないのか?」

ジョンがここへ来た当初は酷い扱いを受けていたと聞いている。今は改善されているようだが、アストンがこのまま何もせずにいるとは思えなかった。

コッパー子爵がアストンに騙されたのはほぼ間違いないのだが、証拠らしい証拠は今のところなく、ジョンの前で言い切るべきではなかったのかもしれない。世間的に見れば多少強引な方法で財産を増やしただけの男で、現段階では、アストンは子供たちの後継人だ。

親族は手を差し延べもせず、ジョンの母親にいたっては子爵が亡くなる前にすでに愛人と逃げていた。
このことはジョンにはどうしても言えなかったが、そのうち知ることになるだろう。

「あの……最初は、厩舎で働いていました。でもっ、でも、ステフ様のおかげでお屋敷の中に住めて、勉強もさせて貰っています。ステフ様は悪くないんです!アストンとは……違うはず」ジョンはアルフレッドをまっすぐに見て訴えかけた。

(ステフ様――アストンの息子か……)

アルフレッドは息子のステファンについてある情報を掴んでいた。もしかするとこれが切り札になるかもしれない。

「君は、ステファンが好きなのかな?」

アルフレッドには分かった。
かつて自分もそうだった様に、ジョンの瞳は恋という魔法にかかったようにきらきらと輝いている。もちろん本当のことが言えて安堵しているのもあるのだろうが、ジョンの口からステファンの名前が出た途端表情が一変したのは見逃しようがない。

「僕……アストンは嫌いだけど、ステフ様は好きなんです」

「そうか、君を助けに来たのだけど、ステファンとは離れたくはないのかな?」

「――はい。でもっ……アストンのいるこの屋敷は嫌です」

アルフレッドは作戦を変更せざるを得なかった。
好きな相手と引き離される辛さをジョンには経験させたくない。ステファンも同じ気持ちならなおさら。

ひとまず、アストンがこの屋敷へ戻るまでには時間がある。その間に、準備を整えて出直すしかないだろう。

「では、今日のところは帰るけど、もしもなにか緊急な用事があれば連絡をして欲しい。もし私に連絡がつかなければ、この近くに私の甥がいるからそちらでもいい」

アルフレッドはそれらの連絡先を教えると、伸びをするように立ち上がり林を抜けて去って行った。

つづく


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