はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

伯爵と少年 7 [伯爵と少年]

それから寒い冬は過ぎ、暖かな春が来た。

エドワードはアンディに家庭教師をつけ勉強をさせ、図書室の本も好きなだけ持ち出して読むことを許した。
アンディは最初こそ戸惑っていたが、勉強は好きなようで字もすぐ読めるようになり、書くのも瞬く間に上達した。もしかしたら、もともと出来ていたのかもしれないとエドワードは思った。

エドワードはアンディと過ごす時間を何より楽しんだ。
午後のお茶の時間は二人でゆったりと過ごすのが日課となっていた。
アンディは紅茶よりも、中国茶が好きだった。それと薔薇のジャムが大好きだった。
エドワードはアンディに惜しみない愛情を注ぎ、アンディもそれに答えるようにいつも笑顔でエドワードに寄り添っていた。

「ほんと、あの子はいい子だよ。かわいらしくてねぇ。あんな子がロンドンの街で一人で生きていたかと思うと、なんて世の中なんだろうって思うよ。五年もだよ……そういえばエドワード様がこちらで過ごすようになったのも、そのくらい前だったわね」

メアリはいつものように、通いのメイド、ヘレンとルーシーに向かって一方的にしゃべり続けていた。
ヘレンとルーシーはいつもの事なので、邪魔しないように絶妙な相槌を打ちながら自分の仕事をてきぱきとこなしていた。

ヘレンは三十歳になるころ夫を失い、この村に戻ってきてからずっと屋敷で働いている。ルーシーは十代のころから屋敷に勤めていて、まだ二十二歳だが行き遅れを自覚し結婚はもう無理だと諦めていた。こんな閉鎖的な村にいては相手が見つかるはずない。

「アンディが来てからお屋敷の雰囲気が明るくなったと思わないかい?エドワード様だって、以前のようにお優しい人に戻ったしね。それにね、あの子はいろんなことに興味を持って、『メアリこれは何?』ってかわいく聞いてくるのさ。この間も、あの子は森の泉にしょっちゅう行くんだけど、『あそこの水はどうしてあんなに冷たいの?』って聞くから、『あれは聖なる泉で身を清めるところなのさ』って言ってやると目を輝かせてねぇ……」

彼女たちもアンディのことが好きだ。メアリにはもちろん、ヘレンやルーシーにも屈託のない笑顔を向けて話しかけてくる。

みんなアンディのことを好きにならずにいられなかった。

つづく


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伯爵と少年 8 [伯爵と少年]

いつもと変わらずアンディとエドワードが午後のゆったりとしたひと時を過ごしていると、スティーヴンが大きな箱をいくつも持ってやってきた。スティーヴンがこうしてお茶の時間に顔を出すのは珍しくて、アンディはひどく興味を引かれた。

「エドワード様、仕立てあがりました」そう言ってスティーヴンは箱をテーブルに並べて置いて、主人の次の命令が出るまでそばに控えた。

エドワードは満足げな顔で、アンディの方へ箱寄せた。

「開けてごらん」

そう言われてアンディは、一番近くの箱の蓋をそっと開けた。箱の中には真新しいシャツが入っていた。エドワードが広げてみなさいと目で合図する。アンディは両手でシャツの肩の辺りを掴んでゆっくりと広げた。薄地のそれは手触りがよくあまりにも上品で、アンディはこれがまさか自分のために用意されたものだと思いもしなかった。それでもサイズはちょうど自分にぴったりで、期待せずにはいられない。

「この前採寸しただろ、今度これを着てデパートにでも行こうか。ちょっと袖を通してみるか?」エドワードは残りの箱を開けながら言った。シャツ以外にも出かけるために必要なものが一揃いある。

この前確かに採寸はしたけど、あれはもうずいぶんと前ですっかり忘れていた。やはりこれはエドワード様がぼくに用意してくれたもので間違いない。でも今着ているエドワード様のおさがりのシャツだって上等なものなのに、こんな素敵なものまでいただけるなんて夢みたい。

「ではアンディ様のお部屋に運んでおきましょう」スティーヴンはアンディの返事を待たずにそう言った。エドワードがそうしろとばかりに頷く。それを見ていたかはわからないが、隅に控えていた執事はてきぱきと箱を積み上げて居間を出て行った。

「さあ、行こうか」エドワードがアンディを促す。

アンディははしゃぎながらエドワードの後をついて自分の部屋に戻った。ベッドの上には箱の中のすべてが並べられていた。アンディはさっそく新しいシャツに袖を通した。ひんやりと肌に纏わりつく。

アンディはさっきまで着ていたシャツとは素材が違うことに気づいた。これはなんていう生地なのだろうかと不思議に思って問いかけようとしたとき、それまでソファに腰掛けその様子をじっと見ていたエドワードが立ち上がってアンディに近づいた。

シャツのボタンを留める手を掴んで顔を覗き込む。アンディはどきりとしエドワードを見上げた。

「エドワード様?」ぼく何かいけないことをしたのだろうか?

「アンディ、私のこと好きか?」

そう静かに問われアンディの心臓が早鐘を打った。

ぼくはエドワード様のこととても好き。出会った時のことを思えばこんな気持ちになるなんて思いもしなかった。最初こそ恐ろしくてたまらなかったけど、こんな立派な部屋をぼくに与えてくれて勉強までさせてもらっている。毎日一緒にお茶を飲んで、さらには素敵なお出掛け着まで。

どんなに感謝しているか言葉にしようにも、ぼくの知る言葉だけでは表現できない。

「はい」と、アンディも静かに答える。

その返事にエドワードは満足そうに口元を緩めた。アンディの前髪を掻き揚げ、それから頬に触れる。

「やっぱりきれいな顔をしているな」

つづく


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伯爵と少年 9 [伯爵と少年]

エドワードはアンディのおでこに口づけ、それから唇に口づけた。
最初はやさしく重ね、二度目は吸い付くようにアンディの唇を包み込んだ。
アンディは抵抗しなかった。それを承諾のしるしだとエドワードは受け止めた。
好きか問い、好きだと答えたのはアンディだ。拒絶などするはずがない。

エドワードの舌はアンディの唇をゆっくりと開き、中に侵入した。無理矢理ではない、お互いがこれを望んでいる。舌を絡め吸うと、アンディは力を失ったかのようにエドワードに縋りついた。キスは初めてなのだろうかと思ったところで、絶対にそうでなければならないとアンディを強く抱き、容赦なく唇をむさぼった。わざと卑猥な音を立ててアンディの羞恥心を煽る。

「はぁ……あぁっ」
息も出来ないほどの激しい口づけにアンディは耐えられなくなったのか身をよじった。

「どうした?嫌なのか」
思っていたよりも甘いささやきに、エドワードは自分の普通ではない状態に戸惑った。たかがキスにまるで十代のガキのように胸が躍っている。

アンディは潤んだ瞳で見上げるだけ。その瞳を見てアンディは嫌がってなどいないと判断した。

「いい子だ」エドワードはそう言って再びアンディの口を塞いだ。

ふいにアンディの体がこわばる。いったい何が起こったのかエドワードには理解できなかったが、拒絶ではないはずだ。アンディは私を受け入れ――

しかしキスはすぐに終わった。アンディは腕をめいっぱい伸ばしてエドワードから離れたのだ。つまりは拒絶の意を示した。

好きだと言って受け入れたのに!なぜ!エドワードを行き場のない怒りが襲う。拒絶など断じて許さない。

「なんで急に離れる」そう言ってエドワードはアンディに近寄り、引き寄せようと肩に触れた。

アンディはびくりとしてまた離れた。

その態度にエドワードはカッとなった。平静を装うなどもうできるはずがなかった。

「お前は自分の立場が分かってないようだな。ここに置いてやっているのに私に逆らうのか。お前は私の要求することに黙って従えばいい!」

アンディ顔が悲しみに歪む。それとも恐怖だろうか?出会った時に見せた絶望の表情にエドワードの胸は張り裂けんばかりに傷んだ。

違う、こんなこと言いたくはない……アンディ――

エドワードは気付けば逃げ出していた。

つづく


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伯爵と少年 10 [伯爵と少年]

いい子だ――
そう言われてアンディの封印していた記憶がよみがえった。

嫌だ!嫌だ嫌だ!
馬車の中で男のものをしゃぶり吸い上げ、そして男が出したものを飲み込んだ。
ぼくの口は穢れている。お金のためにあんなことをずっとしていたなんて……エドワード様に出会うまでは、お金のためなら仕方がないと思ってた。ただ少し我慢すればいいだけだと、でも違ったのだ。
あんな好きでもない、誰かも分からない通りすがりの男のものを――
そう思うと穢れた自分の唇でエドワード様も穢れてしまう様な気がして、あのまま続けることができなかった。本当はずっとエドワード様の腕の中にいたかったし、初めてのキスだってやめたくなかった。
エドワード様の唇がぼくの唇に触れたとき、ぼくはすごく嬉しかった。

エドワード様を突き放したとき告げられた言葉……。

『お前は自分の立場が分かってないようだな。ここに置いてやっているのに私に逆らうのか。お前は私の要求することに黙って従えばいい!』

きっとあれがエドワード様の本音だ。ぼくは勘違いしていた。ただお情けで置いてもらっているだけなのに、エドワード様に好きかと問われただけなのに、勝手にエドワード様もぼくが好きなんだと思い込んだ。キスだってあの貴族の男と同じただの戯れに過ぎなかったのに。

馬鹿みたい。胸が苦しいよ。エドワード様は伯爵で、ぼくはただの孤児だっていうのに。こんなによくしてもらって本当はもっと色々しなければならなかったのに、ぼくは嫌がってただここに突っ立って泣くだけ。泣いたってロンドンでのことはなかったことにはならないのに。

嫌われたくない。それだけは嫌だ。

「ごめんなさい。エドワード様」

おそるおそる口にした言葉をアンディを残して立ち去ったエドワードが聞いているはずもなく。しばらくその場で待っていたアンディは、エドワードが戻ってくる気配がないことに肩を落とした。

謝りに行って拒絶されたらぼくはもうここにいられない。でも行かなきゃ。じっとここで待っていたって許されるはずがない。もしここにいられなくなるとしても、拒絶した理由を聞いてほしかった。エドワード様のこと本当に好きだってこと。

「でも、ぼくはここにいない方がいい」いくらここにいたいと思っても、いつまでも好意に甘えているわけにはいかない。

ロンドンでの暮らしを忘れていたわけではなかった。エドワード様はケヴィンに居場所を与えてくれてマリーおばさんの家にも優秀なメイドを送り込んでくれた。そこまでしてくれたことに感謝して、孤児のぼくは元居た場所に戻るのが一番いい。

それでもやっぱりずっとここにいたい。ここにいてもいいんだと言って欲しい。

つづく


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伯爵と少年 11 [伯爵と少年]

エドワードは困惑していた。

どうして急に。あんなに頬を紅潮させて、潤んだ瞳で私を見つめていたのに。
あの小さな蕾の様な唇は私のものだ。ゆっくりと優しく蕾を開いてアンディのすべてを自分のものにするのはこの私のはずだ。

なぜ逆らう!なぜ拒絶する!アンディの心は私のものではないのか?あの純粋でまっすぐな青い瞳は私を好きだと言っていたのではないのか?

いや、もうどうでもいい。アンディは私を拒絶したのだ。それならこちらも拒絶するまでだ。

それでも、アンディが欲しい―――

エドワードの心に怒りと怯えが同居する。腹立たしいのにアンディに拒絶されることも失うことも考えられない、考えたくもない。こんな思いをするならあんな子供捨ててしまえばいいのに。元居た場所へ戻れと言えば済む話だ。でもそれができない。失うのは恐怖でしかない。

次に顔を合わせたとき、アンディはここを出て行くと言うだろうか?それともただ謝ってここに置いてくれと懇願するだろうか?

どちらもアンディにはして欲しくなかった。ただそばに来て私のことを好きだと言ってくれればそれでいい。キスもいきなりでびっくりしただけだと言えば、すぐに許すだろう。
冷静になってみれば、確かに性急すぎたと自分でも思う。それなのにアンディを傷つけるようなことを言って――いったいどんな顔してアンディに会えるというのだ。

自分の立場をわかっているのかなどと卑劣な言葉を投げつけ、卑怯にも逃げた。そして今度もまたアンディから逃げている。

夕食に現れなかった私のことをアンディはどう思っているだろうか。情けなくも自室にこもって食べもしない料理を前にため息を吐いているだけのこの私のことを。アンディはちゃんと食事をしただろうか?なぜスティーヴンは報告に来ない?あれは私が望むことを望むとおりにするのが仕事のはずでは?

エドワードは理不尽なことを思いつつも、スティーヴンがわざとそうしないことをわかっていた。つまりは自分で確かめろというわけだ。

それならそうしようではないか。

エドワードは目の前の皿を忌々しげに押しやり、部屋を出た。戻った時にまだ皿が置いてあろうものならあいつをクビにしてやる。募るイライラはもはや抑えることができず、アンディの部屋まで来てもそれは増すばかりだ。

ドアは半分ほど閉まっていたが、エドワードは触れることなく滑り込むようにして中へ入った。

アンディはベッドの中ほどで小さくなって眠っていた。覗き込むと頬に泣きあとが見えた。当然だ。あんなひどいことを言われて平気なはずがない。けれどアンディがいけないんだ。私は悪くない。

つづく


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伯爵と少年 12 [伯爵と少年]

何か気配を感じてアンディは目を開けた。少しだけ顔を動かすと、エドワードと視線がぶつかった。慌てて身を起こし、何度も練習した言葉を何とか吐き出そうとする。ただごめんなさいとしか言えないのだから、どんな反応をされたとしても言うしかない。

「エドワード様、気付かなくてすみません」そう言ってベッドの脇に降り立ち強張った体を真っ直ぐに伸ばした。「あの、先ほどはすみませんでした。ぼく、あの――」とにかく昼間のこと謝らなければ。

アンディは反応を探るようにエドワードの顔をじっと見た。
しかしエドワードはアンディのほうを向いて立ってはいたが、アンディとは視線を合わせなかった。それはまるでアンディを許さないと言っているようだった。

実際そうなのだろうとアンディは思った。どうして許されると一瞬でも思ったりしたのだろう。アンディは再び恐怖から後ずさった。

エドワードが今度は逃がすまいとするように素早くアンディの腕を掴んだ。その力の強さにアンディはおののいた。振り払うことなど出来るはずもなく、そのままベッドに倒されうつ伏せに押さえつけられた。エドワードは手に持っていたクラヴァットでアンディを後ろ手に縛り上げた。

「エドワード様……ごめんなさい……うぅ」
アンディは泣きながらエドワードに許しを乞う。

「声を出すな」低く鋭い声でアンディの口を封じさせる。

アンディは怖かった。昼間はあんなに近くに感じたエドワードが今は全然違う世界の人に見えた。
いや、そうなのだ。エドワードとアンディはもともと交わることのない世界で生きていた。
もし出会うことがあっても門の中と外の話で、こんな風にエドワードがアンディに触れることなどありえないのだ。
そう思うと、涙が止まらなかった。なぜぼくはエドワード様を好きになってしまったのだろう?
もし同じ世界に生きていてもぼくの恋はかなわないのに。胸が苦しくて心臓が止まってしまいそう。

もうこれ以上ぼくを嫌わないで。
アンディは心の中で必死にそう願った。

ベッドに腰掛けるエドワードがゆっくりと体を倒し、アンディの顔を覗き込んだ。そしてそっと口を開く。
「お前は私に口づけされたくないんだったな。ならばもうお前とは唇は重ねまい」
そう耳元で言うと、耳たぶ軽く触れぺろりと舐めあげた。そして軽く口に含み舌を転がせる。

「ひっ、んん……」
アンディは初めての感覚に声を上げそうになり慌てて口をつぐんだ。しかしエドワードは気にせずに舌を首筋に滑らせる。
「んんっ!……」びくりとしておもわず大きな声が出てしまい、アンディは唇を噛んだ。
体をもじもじと動かしながら、しっかりと口をつぐむ。しかしエドワードの唇がアンディに触れるたびに、我慢していても吐息が漏れてしまう。

あぁ、ダメなのに……。そう思っても声が勝手に出てしまう。体はずくずくと疼き縛られた腕がもどかしくて体を揺する。

「かわいく声を出して、私を誘うつもりか?アンディはいやらしいな」ねっとりとした口調。これまでアンディが耳にしたことのないものだ。

「はぁ……はぁ……ちがいま、す」恥ずかしいことを耳元で言われ、あえぐようにして否定する。否定してもなぜか虚しく響いただけでむしろ体は喜んでいるように熱くなるばかり。

いったいぼくはどうしてしまったのだろう。

つづく


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伯爵と少年 13 [伯爵と少年]

「違うか……もうどうでもいいことだが」エドワードは悲しげに苦笑した。

アンディがいやらしく誘ったりするはずがないことは、エドワードが一番知っている。そう、アンディのことなら何でもわかっている、と思い込んでいた。

アンディの体を仰向けにすると、その横にエドワードも体を横たえた。これから何をするのか知ったら、アンディはどうするだろう。ただ言うとおりにするか、それとも耐え切れず逃げ出すか。たとえ逃げ出したとしても、すぐに捕まえてやる。

エドワードの手がアンディの中心部へと伸びる。
「あぁ……だめです、エドワード様……そこは、あっ」ズボンの上から包み込むようにしてさすると、アンディはわずかに身をよじりエドワードの手から逃げようとした。「あぁん、だ……め……さわっちゃ」

逃がすものか。エドワードはアンディのズボンのボタンに手をかけた。焦りからか小さなボタンは指先をつるりと滑り、なかなかその下の望むものが姿を見せない。半ば引きちぎるようにしてボタンを外すと下穿きもろとも性急に引きずりおろした。

アンディのそれが姿を見せる。かわいらしく縮こまっていたが、エドワードの手に収まると驚いたようにビクンと跳ねた。

アンディは唇を噛んで声を出さないようにしている。
ゆっくりと手を動かすと、いよいよ我慢できなくなったのかアンディが歯の隙間から震える吐息を漏らした。
ついいままで無垢だったはずのそれが徐々に大きくなっていく姿に、エドワードは満足の息を吐いた。アンディの甘くいやらしい声が心地よく耳に響く。声を出さないように我慢すればするほどエドワードを刺激しているとは思いもしないのだろう。

「はぁん……いやぁ、ん……ぼく……おかしく――」アンディはいやいやと頭を振る。

「おかしくなりそうか?」エドワードは手の動きをゆったりとしたものに変え、耳元でささやく。

「だって変な声が、んっ……はぁ……はぁ」アンディは顔を上げて濡れた瞳でエドワードに訴えかけた。

やめて欲しいのかもっとおかしくして欲しいのか。こんな目で見つめられてやめられると思うのか?アンディはわかっていない。どれほど私がアンディを望んでいて、そして本当はこんなふうに一方的にするはずではなかったことを。

エドワードとてこういったことに順序があることは知っている。アンディのように無垢ではないのだから。それともアンディはいかにも何も知らないという顔をして、実は経験済みなのだろうか?

「いいんだ。変じゃないから大丈夫、もっと声を出してごらん。気持ちいいんだろ、んっ?」

そうだ。もっと聞かせろ。この数か月ずっと聞きたかった声を。

つづく


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伯爵と少年 14 [伯爵と少年]

エドワード様はどうしてこんなことを?

アンディのそんな疑問もエドワードからもたらされる感覚にすぐに消えてしまう。なにか考えようとしても頭がそれを拒絶する。昂りの先からは蜜が滴り、手が上下するたび淫秘な音を立てる。

「ぼっぼく……もれちゃう。エドワード様手を退けてください、このままじゃ――」アンディは切羽詰まったように言い、エドワードに縋りついた。

手が縛られていなかったらまた押し退けてしまっていただろう。そしたらきっとエドワード様は怒って今度こそぼくを追い出すかもしれない。それにやめて欲しいと思いながらも、本当はやめて欲しくなかった。ぼくがどんな粗相をしてしまったとしても、許されるならこのままエドワード様が満足されるまで続けて欲しい。

そんなアンディの気持ちを見透かすかのようにエドワードはニヤリと笑った。「大丈夫だから出してごらん」

もう声を抑えることなんて出来なかった。心臓が恐ろしい勢いで音を立てていて、体は火が付いたように熱い。特に触れられている部分が。

アンディは叫び声をあげて、とうとうその時を迎えた。背をしならせ小刻みに震えたかと思うと、やがて脱力し意識を失った。

エドワードは手の中に放たれたアンディのそれを満足そうに眺めてから、ようやく視線をアンディへと向けた。そして思いがけない光景にうろたえた。まさか気を失うとは思っていなかったのだ。それでもかまわずアンディがぐったりと横たわる姿を余すことなく堪能する。そうするのがまるで義務であるかのように。

束の間気を失っていたアンディは目を開けた。まだ体は震えていて自分が普通ではない状態だとすぐに分かった。目の前には驚いた顔のエドワードがいた。

「エドワード様――ごめんなさい、ぼく……うぅ」

「気付いたのか?泣かなくていいんだ」そう言ってアンディの頬に触れようとして、エドワードは自分の手の中のものに気付いた。

アンディも同じように気付き、恐ろしい事実に血の気が引く。
ぼくはエドワード様を穢してしまった。あの男と同じものをぼくは出したんだ。あのむせ返る様な男の匂い、口の中が不快感で充満し、それをお金の為だけに受け入れていた自分。そして今味わった感覚をあの男も当時味わっていたのだと思うと、自分がどれだけ浅ましく卑しいかを嫌というほど実感せずにはいられなかった。

エドワード様は穢してもいいような方ではない。でもいったいどうやって償えばいいのだろう。

つづく


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伯爵と少年 15 [伯爵と少年]

とにかく手を拭かなければアンディに触れることさえできない。
エドワードは手に触れた適当な布を引っ掴んで手を拭くとベッドの下にそれを放り投げた。それがなんだったのか些末なことだ。処分することになってメアリが目くじらを立てたとしても知ったことか。

アンディはあまりにショックだったのか目を閉じ涙をこぼしている。
エドワードはそっとそこに口づけ涙を拭った。

アンディへの怒りからひどいことをした自覚はある。拒絶に耐えられず力で服従させた。しかも手を縛り動きも封じた。優しくしてやりたいと思うのに、どこでどう間違ったのか気づけばこんなことになっていた。愛おしさは募るばかりなのに、なぜわざわざ嫌われるような真似をしてしまうのか、自分でも理解に苦しむところだ。

思考は堂々巡り。

「アンディ――お前は私のものだ。逆らうことは許さない。わかったな」優しさなど微塵も見せず、高圧的に言い放つ。心とは裏腹な自分が恨めしい。なぜずっとそばにいて欲しいと甘くささやくことができない?たかがキスを断られただけでこんなにも臆病になることもないだろうに。

「は、い……」

アンディの返事は歯切れが悪く、エドワードの胸に疑心が宿る。やはり嫌われてしまっただろうか?戒めを解くと手首は擦れて赤くなっていた。アンディは一度も解こうとはしなかったが身をよじった時に締め付けたのだろう。

エドワードはいたわるようにそこに口づけた。

「あっ……」アンディはハッとしたような声を漏らした。

痛かったのだろうか?それとも体が敏感に反応しているのだろうか。様子を見るからに触れたり口づけたりすることを嫌がってはいない。本当は全身くまなく愛撫して喜びの声をあげさせたい。今夜のように無理矢理ではなく。

「アンディ、キスしてもいいか?」エドワードは丁寧に訊ねた。焦ってはいけないと思いつつも純粋にそうしたいと思った。きっと今なら拒まないはずだ。

「だっ、だめ!だめです……」アンディはこれまで以上に強く拒絶した。それまでじっとして動かなかったのに、さっと距離をとった。

エドワードは血の気が引いていくのが分かった。頭は痺れたようになり、なぜ?なぜ?という疑問ばかり繰り返す。それは本当にだめだというだめなのか?それともバカな女どもが使う『駆け引き』というやつか?逆らうことは許さないと、今言ったばかりなのに、なぜ?

「アンディ」自分の声がまるで氷柱のように冷たく鋭く尖っているのを感じた。このままでは駄目だ。アンディを傷つけてしまう。

エドワードは部屋を出た。戸口で振り返った時、アンディは悲痛な顔でただじっと窓の方を見ていた。何を考えているのかその心の内は読めなかった。そして自分の心さえも。アンディをいったいどうしたいのかわからくなっていた。

つづく


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伯爵と少年 16 [伯爵と少年]

アンディは夜中に屋敷を抜け出し、森の中の小さな泉までやってきていた。

五年前、アンディが目覚めた場所。

ランプを脇へ置き服を脱いで裸になると、泉の中に自分の身を沈めた。
泉の水はアンディの柔らかな肌に突き刺さるほどに冷たかった。この泉の水は一年を通して冷たいまま、温度はほとんど変わらない。
その痛みを我慢して水の中へ潜った。まるで自分の身体を清めるかのように。

アンディは以前から時々この泉にやって来てはその身を浸していた。メアリがここはただの泉ではなく聖なる泉だと教えてくれたから、ここに入ればきっと生まれ変わったように綺麗になれるはずだと信じた。

アンディの願いはひとつ。
もしも何もかもなかったことになったら――そんなことはありえないけれど――エドワード様ともう一度キスがしたい。もうしてくれないかもしれないけど、それならずっとそばにいるだけでいい。

冷水からあがり体を拭くと、着慣れたエドワードのおさがりにそでを通す。

新しいシャツの着心地もよかったけど、ぼくはこっちの方が好き。エドワード様を感じられるから。

アンディは指先でそっと唇をなぞった。そこは紛れもなくエドワードの唇が重なった場所だ。あの感触を思い出すと、おなかのあたりがジンジンと疼く。

月明かりの中アンディは屋敷の門まで帰ってきた。出た時よりも足取りは軽かった。

門の入り口に人が見えた。
もしかして、エドワード様?

月明かりがエドワードの顔を鮮明に映し出した。アンディはエドワードがとても怒っていることに気付き慌てた。夜中に勝手に外へ出たから怒っているのだ。

歩みを早めすぐさま謝ろうと声を出そうとしたその時、エドワードが大股で近づいてきた、その刹那、アンディの冷え切った体に鋭い痛みが走った。

それはアンディが初めてエドワードと会った時と同じ痛みだった。

アンディは小さく悲鳴をあげ痛みに耐えながら言った。「エドワード様――ごめ」

言いかけたその言葉をさえぎるように、また痛みが走った。先ほどとは反対の腕に鞭が振りおろされたのだ。どうして?という疑問は無駄でしかなかった。エドワード様は怒って当然だし、ぼくは打たれても何も言えない。でもなんとか謝りたい。

しかしアンディが謝罪の言葉を口にすることはなかった。エドワードは鞭を振り続けアンディはとうとう気を失ってしまったからだ。

つづく


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