はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

不器用な恋の進め方 9 ~第二部~ [不器用な恋の進め方]

アーサーはメリッサの所有するいくつかの住まいのうち、ハイド・パークにほど近いテラスハウスにやって来ていた。
ここは彼女にとって、まったくのプライベートな場所で――もちろん例の事務所に調べさせた――今はもっぱらこちらに居を移していると聞いている。

アーサーは玄関前で暫く悩んだあげく――ここへ来るまでも相当悩んだ――ノッカーを鳴らした。
すぐさま使用人らしき少女が顔を覗かせた。

その少女は、明らかにアーサーを警戒している。

「どちら様ですか?」
警戒心むきだしのつっけんどんなその言葉に、アーサーは苦笑する。
とりあえずこの少女は、目の前の男を身なりだけで判断はしていないようだ。明らかに自分達より階級が上に見えたとしても、少女にとっては自分の主人の方が上なのだ。

「アーサー・クラークといいます。メリッサ様にお会いしたいのですが?」
そう言って名刺を差し出す。

少女は名刺を受取ったものの、更に警戒し、「お約束は?」と訊いてきた。

「約束はしていないが、先日のお詫びに伺いましたとお伝えください」
アーサーがそう言い終わるや否や、扉が大きな音を立て閉じられた。

暫くして扉が開き少女が「どうぞ」とぶっきらぼうに告げた。

***

応接室に案内され、すでに十五分ほど待たされている。
アーサーは先ほどと針の位置が全く変わってない事を確かめ、懐中時計を閉じた。
突然の訪問なのだから仕方がない。
女性が身支度に時間がかかることも承知している。

だがアーサーは、すでに一時間以上も待たされているように感じていた。
これ以上一分だって待たされることには耐えられないとアーサーが思った時、応接室にメリッサが入って来た。

「お待たせいたしております」

彼女の姿が見えた途端、待たされている間の苛々などすっかりなかったことになってしまった。
それなのにそれを素直に口にすることが出来ない。

「ええ、随分待ちました」
皮肉たっぷりな笑みを浮かべたアーサーは、自分が突然訪問した事など忘れてしまっている口振りだ。

「まさか、子爵様がこのような場所へおいでになるとは思いもしなかったものですから」
メリッサも皮肉たっぷりに返した。

メリッサの返しに笑みが零れる。
アーサーはやっと自分が勝手にやって来たことを思い出したのだ。しかも謝罪をするために。
どうして気持ちとは裏腹な言葉が口を突いて出てしまうのか不思議だ。
しかも、彼女にほんの少しでも袖にされることに耐えられない。

「先日の失礼をお詫びしようとお伺いしました」

メリッサはアーサーの向かいのソファに腰をおろし、立ったままのアーサーに座るように促した。

「それで、わたくしは子爵様にお詫びをされるような覚えはないのですが?」
メリッサが取り澄ました顔で言う。
アーサーが言い返そうと――正確にはとにかく何か言葉を発しようと――したところへ、先ほどの少女が紅茶をトレーにのせ入って来た。
やたらとかちゃかちゃと音をさせ、嫌がらせなのかとも思ったが、そんなはずはないといれたての紅茶をすすったが、やはり嫌がらせだとしか思えなかった。

何と冷めた紅茶だろうか?いや、すっかり冷めてしまっているならそれでもいい。何とも中途半端な温度で、気分が悪くなる。
これも彼女の仕業なのだろうかと、アーサーはメリッサをカップ越しに見やった。

メリッサは優雅に微笑み、カップに上品に口を付けている。見る限り、不快な表情は見えない。

本当にいちいち癪に障るが、それが余計に彼女に惹かれる原因にもなっている。

つづく


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