はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

不器用な恋の進め方 10 [不器用な恋の進め方]

アーサーはなぜだかわからないが焦っていた。それもかなり切迫した状態だ。

メリッサと出会ってからのアーサーは常に何かに追い立てられ、急かされるような感覚に陥っていた。
少しでも早くメリッサを自分のものにして傍に置いておきたいと思うのに、わざと回り道をするようなセリフしか吐けない自分にいい加減腹立たしさを抑えきれなくなっていた。
メリッサが自分を追い払おうとしている事がありありと伝わってくる中で、こんなことを言う度胸があるとは思いもしなかったのだが、らしくない自分に嫌気がさし、とうとう本心が身体の中から飛び出してくれた。

メリッサが何か喋っていた様な気がしたが、アーサーはお構いなしに自分のペースで言った。

「私と結婚してください」と。

メリッサが困ったように微笑んだ。
アーサーはカッとなった。
だが、アーサーは何とか自分を抑えた。
今の言葉がどうやらメリッサには聞こえなかったようだと、もう一度言う事にした。

「私の妻になって下さい」今度は言葉を変えて。

一瞬の沈黙ののち、メリッサが「お断りいたします」とにべもなく言った。

「なぜですか?」
アーサーは素早く言葉を返した。大した反射神経だと思わず感心する。

「なぜ?」
メリッサは顎先を上に向け、アーサーの言葉の意味が分からないと言うように訊ねた。

「どうやら聞こえなかったようですね。なぜ、私の結婚の申し込みをお断りになるのですか?」
アーサーはゆっくりと単語一つ一つを子供に言い聞かせるように言った。

「理由など、あげればいくらでもあります。わたくしは結婚をするつもりはないし、まず、子爵様の事を好きではありません。これは何とも思ってないと言う意味です。それに――」

「もう、結構です」
淡々と結婚を断る理由を述べるメリッサを、怒気を含んだ声で制する。

メリッサはわざとらしくため息を吐き――いかにも女優らしい――小さく首を左右に振った。

「お帰り下さい」

アーサーは唇を硬く引き結び、この屈辱に耐えようとした。
けれど、メリッサが使用人を呼ぶために卓上の小さなベルを鳴らしたのを見て、我慢が限界を超えた。

どうして彼女は自分に対してこのような態度を取るのだろうか?
たしかに結婚の申し込みは唐突で、よく考えれば贈り物はおろか花束ひとつ持参してもいないのだから、彼女が戸惑う程度なら許容範囲だ。
だが、こちらは妻にとお願いしているのに、まるで愛人にでもなれと言われたかのような態度は許せなかった。

ふと、なぜ自分はこんなにも必死になって結婚を申し込んでいるのだろうかと思った。今の段階ではいかにも相性は最悪といった感じだ。それなのに、それでも彼女を妻にしたいという気持ちが薄らぐことはない。

使用人の少女が部屋に入ってきた。
元々扉は開いていたのだから、今のやり取りを聞かれていても不思議ではない。
だが、メリッサの使用人がたとえ好奇心旺盛な少女だとしても、盗み聞きをするようには思えなかった。

「子爵様はお帰りになるそうだから、玄関までお送りしてさしあげて」
思わず見惚れてしまうほどの、美しい微笑みを向けられ、今まさに自分が追い出されようとしていることも忘れ、気付けば帰りの馬車に乗ってしまっていた。

つづく


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