はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 8 [花嫁の秘密]

クリス(メイフィールド侯爵クリストファー・リード)は明らかに失敗をしてしまったのだ。
こんな風に襲う様な事をするつもりではなかった。
差し出した手を取って貰えなかったことに、特に頭に血が上った訳でもなかったのに、つい腕を掴んでしまっていた。

どうかしている――そう思わずにはいられない。

更には怯える彼女に対して、正式に結婚の申し込みまでしてしまったのだ。もはや冷静だったとも言い難い。
もっとちゃんと然るべき時に然るべき場所でするはずだったのに、一体自分はどうしてしまったのかと、クリスは頭を抱えてしまっていた。

先日、屋敷を訪問した際、アンジェラに目を向けてもらう事すらできなかったのに、クリスはすっかり心を奪われてしまっていたのだ。

噂通り美しくかわいらしい乙女。
艶のあるはちみつ色の髪の毛はおろされたままで、着ているドレスも華美ではなく、余計な飾り立てもしていないその姿に、長年待ち望んでいた、侯爵家ではなく自分に相応しい花嫁を見つけた気がした。

家族以外誰の目にも触れていない彼女を、今のうちに自分のものにしてしまわなければと思った。
社交界にデビューしてしまえば、求婚者が彼女の前に列を作ることが目に見えていたからだ。

クリスはすぐさま求婚の申し出を、母であるソフィアにした。
ソフィアは二つ返事で了承したが、話が回りくどすぎて、アンジェラについて何も聞きだすことも出来ず、そのアンジェラとも話すことが出来なかった。
唯一アンジェラが口にした言葉は、クリスの髪の色についてだった。
クリスが忌み嫌っているこの色を、素敵だと言った。
皮肉にもクリスはその言葉に喜んでしまっていたのだ。
それは嫌だと思っていた髪の色を褒められ、ほんの少しだがこの色が好きになってしまうほどだった。

社交界では女性たちの心を捉えて離さないクリスだが、本当は紳士らしい振る舞いにもうんざりしている。
恋愛に疎いわけでもなかったが、こんなにも自分を見失ってしまうほどの恋は初めてだった。

でも、次は慎重にしなければならない。
屋敷の外へ出たことがないという噂はどうやら本当の様だ。
あんなにも怯えるとは思いもしなかった。

クリスはアンジェラの泣き顔を思い出していた。
飾り気のないその素顔、泣き顔さえも美しいと思ってしまった。

でも、もう駄目かもしれない……。

だがクリスが抱いた危惧も、アンジェラの母により、なんなく拭い去られてしまうのである。

つづく


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