はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
満ちる月 9 [満ちる月]
店の情報を持ち出して、ダメージを与える――
空がそう言った瞬間、昼間の従業員とのやり取りを思い出していた。
この店から数軒先に出店する店の事を。
まさかとは思うが、いや、たとえ空さんが他の会社へ移っても、そんな事をするとは思えない。けれど、今のこの状態に不満を抱いている事は明確で、きっと会社に対しても不満はあるに違いない。
違う。空さんはそんな人ではない。
もう一度頭の中で否定する。
しかし、自分は彼の何を知っているのだろうか?時々店に顔を出す彼は、いつも優しく微笑んでいて――だが、今は笑みなど浮かべてもいないし、いつもの物腰柔らかな口調とも違う。
「もしかして、この先に出来る店の?では、ライバル会社に引き抜きされるってことですか?それって……」
どう言っていいのか分からず、まとまらない脳内と同じく、まとまらない言葉を返す。
「それって?裏切り行為とでも言いたいのか?」
空の語気が強くなる。
「いえ、そういうわけでは」
そう否定したものの、まるで見透かされたような空の言葉に閉口する。
「君は僕が店の情報を持ち出すような男だと思っているようだね」
あざけるように言った言葉の真意を探った。
空がそうするつもりなのかどうか。だが、望月には分からなかった。
返事をしない望月に、空が続ける。
「まあ、はっきり言ってしまえば、ライバル会社に誘われている。そして、その会社はこの店のほんのすぐそばに似たような店を出店する気らしい。そのプロデュースをして欲しいと頼まれている。向こうは二カ月の猶予をくれたから、そんなに急いでもなさそうだが、僕にいい返事をして欲しくて急かさないだけだろうけど」
「なぜ、その会社はそんなことを?」
やっとまともに言葉を発せた。
「さあね。どちらかの会社に恨みでもあるんじゃないかな?この店をどうしても潰したそうだったから」
いくら形だけのマネージャーとはいえ、空の口から出た言葉だとは思えなかった。あまりにも無関心な口調に、本当に一年間一緒に仕事をしてきたのかと疑いたくなるほどだった。
もしかすると、最近頻繁に帳簿やセラーをチェックしていたのもこのためだったのではと思った。
途端に、本当にこの店が潰されてしまいそうな気がした。
この周辺には競合する店舗もなく、のんびりとした経営を送ってきている。
もしも、空がプロデュースした店が開店したらどうなるのだろうか?
きっと、どちらかがつぶれるか、共倒れか、共存は考えられなかった。
望月の混乱する思考は停止した。
ひやりと背に汗が流れるのを感じた。
この店は、自分と容さんとで作り上げた店なのだ。
空は関係ない。これは俺と容さんの店で、幸せが詰まった店なのだ。
苦しく切ない片想いで終わったが、それでも望月にとってはこの店が容と自分をつなぐ唯一のもので、それをつぶされてしまうのは、自分が壊されるのと同じなのだ。
望月は目に涙をにじませ、空を見た。
目の前の男が急に憎くて仕方がなくなった。けれど、彼にはこの話を断ってもらわなければならない。どうやって?そんな力も金も自分にはない。
しばらく睨みつけられたままだった空が、望月に近寄ってきた。
そしてそっと耳打ちする。
「君って、ゲイだよね」
つづく
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空がそう言った瞬間、昼間の従業員とのやり取りを思い出していた。
この店から数軒先に出店する店の事を。
まさかとは思うが、いや、たとえ空さんが他の会社へ移っても、そんな事をするとは思えない。けれど、今のこの状態に不満を抱いている事は明確で、きっと会社に対しても不満はあるに違いない。
違う。空さんはそんな人ではない。
もう一度頭の中で否定する。
しかし、自分は彼の何を知っているのだろうか?時々店に顔を出す彼は、いつも優しく微笑んでいて――だが、今は笑みなど浮かべてもいないし、いつもの物腰柔らかな口調とも違う。
「もしかして、この先に出来る店の?では、ライバル会社に引き抜きされるってことですか?それって……」
どう言っていいのか分からず、まとまらない脳内と同じく、まとまらない言葉を返す。
「それって?裏切り行為とでも言いたいのか?」
空の語気が強くなる。
「いえ、そういうわけでは」
そう否定したものの、まるで見透かされたような空の言葉に閉口する。
「君は僕が店の情報を持ち出すような男だと思っているようだね」
あざけるように言った言葉の真意を探った。
空がそうするつもりなのかどうか。だが、望月には分からなかった。
返事をしない望月に、空が続ける。
「まあ、はっきり言ってしまえば、ライバル会社に誘われている。そして、その会社はこの店のほんのすぐそばに似たような店を出店する気らしい。そのプロデュースをして欲しいと頼まれている。向こうは二カ月の猶予をくれたから、そんなに急いでもなさそうだが、僕にいい返事をして欲しくて急かさないだけだろうけど」
「なぜ、その会社はそんなことを?」
やっとまともに言葉を発せた。
「さあね。どちらかの会社に恨みでもあるんじゃないかな?この店をどうしても潰したそうだったから」
いくら形だけのマネージャーとはいえ、空の口から出た言葉だとは思えなかった。あまりにも無関心な口調に、本当に一年間一緒に仕事をしてきたのかと疑いたくなるほどだった。
もしかすると、最近頻繁に帳簿やセラーをチェックしていたのもこのためだったのではと思った。
途端に、本当にこの店が潰されてしまいそうな気がした。
この周辺には競合する店舗もなく、のんびりとした経営を送ってきている。
もしも、空がプロデュースした店が開店したらどうなるのだろうか?
きっと、どちらかがつぶれるか、共倒れか、共存は考えられなかった。
望月の混乱する思考は停止した。
ひやりと背に汗が流れるのを感じた。
この店は、自分と容さんとで作り上げた店なのだ。
空は関係ない。これは俺と容さんの店で、幸せが詰まった店なのだ。
苦しく切ない片想いで終わったが、それでも望月にとってはこの店が容と自分をつなぐ唯一のもので、それをつぶされてしまうのは、自分が壊されるのと同じなのだ。
望月は目に涙をにじませ、空を見た。
目の前の男が急に憎くて仕方がなくなった。けれど、彼にはこの話を断ってもらわなければならない。どうやって?そんな力も金も自分にはない。
しばらく睨みつけられたままだった空が、望月に近寄ってきた。
そしてそっと耳打ちする。
「君って、ゲイだよね」
つづく
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2011-06-21 00:04
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