はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 383 [花嫁の秘密]

クィンと話せば話すほど、どこか迷路に迷い込んだ気分になるのはなぜだろう。

エリックにとってクィンはわかりやすい男だ。素性は明らか、資産も公にしている、妻を愛していてそのためにプルートスを手放そうとしている。

それなのに、調査のプロが二人もいて、ちょっと調べれば誰もが知り得ることしか知らない。つまり、わかりやすいどころか謎だらけということだ。

もしかすると、出方を間違えたかもしれない。今夜はクィンの反応をうかがうだけと軽い気持ちだったが、まずは代理人を立てて先に接触させるべきだった。

「あなた方がどういうつもりかは、よくわかりました。今夜はこの辺でよろしいですか」クィンは会見の打ち切りを宣言した。忙しいので少しも時間は無駄にできないといったところだろう。

でもまあいい。結局のところ、クィンは妻の望み通りここを手放すしかない。ただどういう形で決着するかは、これからの交渉次第だろう。

エリックは最後まで強気な態度を崩さず、借りてきた猫のようになっていたステフを連れてクィンの私室から出た。もちろんステフはそれでよかった。変に出しゃばっていたら、クィンはもっと早く自分の縄張りから追い出していただろう。

「もっと具体的な話をするかと思っていましたよ」フロアをひとつ下へ降りたところで、ステフがようやく口を開いた。居心地の悪い場所から解放されて、ようやくいつもの調子が戻ったようだ。

「今日は挨拶だけだ」そう言ったものの、クィンの出方次第では、もっと突っ込んだ話し合いができたはずだ。だが予想通りクィンは警戒していて、こっちが一方的に話す羽目になった。

ひとまず伝えるべきことは伝えた。ここを手放す気なら、俺たちが引き受ける。オーナーにはサミーを据える気だが、そこは濁した。クィンは出資割合の話をした時に気づいただろうが、興味深げな顔をしただけで、特に何も言ってこなかった。

次の交渉にはサミーを行かせるか。

「正直俺は、金は出しても経営にはかかわりたくないな。ジョンは帳簿をつけたりは得意だろうけど、客と揉めた時なんかは危なっかしくて表には出したくない」

ステフの心配事はジョンが危険に巻き込まれないか、そういうことらしい。共同経営者にとは言ったが、ここを切り盛りしろという話ではない。

「お前たちは本業もあるし、表に出なくてもいい。もちろん金勘定みたいな細かいことをする必要もない。ついでに言うと、揉め事は支配人が片づけるから大丈夫だ」

その辺を細かく詰めておく必要がありそうだが、先にサミーと――いや、やっぱりこいつらも交えて話をした方が揉めなくて済みそうだ。

「けど、たいてい一番偉いやつを出せと騒ぐもんだ」ステフは不満そうに言って、二階の吹き抜け部分からラウンジを見下ろした。ジョンの姿を見つけると、ほっとしたように手摺に寄りかかった。

「サミーが対処する」エリックも同じように手摺に寄りかかった。サミーが手にしているグラスの中身はなんだろう。酒でなければいいが。

「どうかな……彼にそれができますか?」

嫌でも対応するのが仕事だが、どうせデレクを追い出すつもりだし、面倒な会員はこの際排除してしまおう。例えば今夜揉め事を引き起こしている、ディクソンのような男とか。おそらくクィンも異論はないはずだ。

つづく


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