はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 359 [花嫁の秘密]
まずい。サミーがものすごい剣幕でこっちへやってくる。
ジュリエットはどうした?ラウールに取られたか?だとしても、怒る理由はない。ジュリエットなどくれてやればいい。
エリックは思わずくつくつと笑った。笑い事ではないが、サミーのあんな顔なかなか見られるものじゃない。
同じようにサミーに気づいたメリッサが、悪趣味な笑いはやめてとエリックの腕を肘で突く。
「サ――」ミー、と言いかけたところでジェームズに先を越された。
「ミスター・リード、あなたもいらしていたんですね」ジェームズが愛想よく声を掛ける。
「ジェームズ?」サミーはまさかという顔でジェームズを見た。どうしてここにと、訝しげにエリックを見る。
「たまたまここで会ったんだ」エリックは言い訳がましく言って肩をすくめた。まさかジェームズと呼ぶ仲だったとは知らなかった。もっとも、ジェームズはアッシャーと呼ばれるのを嫌うから他に呼びようはないが。
「どうだかね」と、クロフト卿が口を挟む。今夜この場所での出会いは、偶然なんかじゃないと思っているらしい。待ち伏せて屋敷を譲れとでも言うと思ったか?
「お兄さんだあれ?」クロフト卿と手をつなぐヒナが、サミーに向かって尋ねた。さっきメリッサにも同じように訊いたところだが、女性は苦手らしくクロフト卿の陰に半分隠れていた。
「はじめまして。僕はサミュエル・リード。ジェームズとは知り合いだよ」サミーは腰をかがめてヒナに挨拶をした。
「サ、サミュ……」ヒナは言いにくそうに口をもごもごさせた。おしゃべりだがなまりがあるし、聞き取りもあまりうまくないらしい。それでも好奇心はある。「ジャムと知り合い?パーシーは?」
「サミーでいいよ。クロフト卿とは知り合いだったことはないな」サミーはきっぱりと言った。
それを聞いて安心した。ジェームズはともかく、クロフト卿のような素行不良を極めたような男と付き合って欲しくない。
「そっか、パーシーは友達いないもんね」ヒナは悲しげに肩を落とした。クロフト卿もしょんぼりとする。この二人、似ていると思ってしまうのはなぜだろう。目鼻立ちはまったく違うというのに。
「ヒナ、そろそろジャスティンに合流した方がいいんじゃないかな。僕は怒られるのはごめんだよ。ジェームズはかばってくれないし、ところでミスター・リードはいつジェームズと知り合いに?」クロフト卿は目をぎらつかせながらサミーに訊いた。
「いつ、だったかな?」サミーがジェームズに尋ねる。
「いつだったでしょう?先日クラブで御一緒したのが随分と久しぶりの事だったと記憶していますが」ジェームズはのらりくらりと答えた。
「もう、いいよ。ジェームズは都合が悪くなると記憶が曖昧になるんだな。ヒナ、行こう!」クロフト卿はぷりぷりしながらヒナの手を引いて公園の奥の方へ向かった。
「申し訳ございません。それではわたくしも失礼します。ミスター・コートニー、また近いうちに」
慌ただしく一団が去っていくと、思った以上に静かになった。周囲では音楽が流れ、花火が打ちあがる瞬間を大勢の人が楽しみながら待っているのに、なぜかここだけ周りから隔絶されてしまったかのようだ。
今年はもうすぐ終わるが、今夜はとても長い夜になりそうだ。
つづく
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ジュリエットはどうした?ラウールに取られたか?だとしても、怒る理由はない。ジュリエットなどくれてやればいい。
エリックは思わずくつくつと笑った。笑い事ではないが、サミーのあんな顔なかなか見られるものじゃない。
同じようにサミーに気づいたメリッサが、悪趣味な笑いはやめてとエリックの腕を肘で突く。
「サ――」ミー、と言いかけたところでジェームズに先を越された。
「ミスター・リード、あなたもいらしていたんですね」ジェームズが愛想よく声を掛ける。
「ジェームズ?」サミーはまさかという顔でジェームズを見た。どうしてここにと、訝しげにエリックを見る。
「たまたまここで会ったんだ」エリックは言い訳がましく言って肩をすくめた。まさかジェームズと呼ぶ仲だったとは知らなかった。もっとも、ジェームズはアッシャーと呼ばれるのを嫌うから他に呼びようはないが。
「どうだかね」と、クロフト卿が口を挟む。今夜この場所での出会いは、偶然なんかじゃないと思っているらしい。待ち伏せて屋敷を譲れとでも言うと思ったか?
「お兄さんだあれ?」クロフト卿と手をつなぐヒナが、サミーに向かって尋ねた。さっきメリッサにも同じように訊いたところだが、女性は苦手らしくクロフト卿の陰に半分隠れていた。
「はじめまして。僕はサミュエル・リード。ジェームズとは知り合いだよ」サミーは腰をかがめてヒナに挨拶をした。
「サ、サミュ……」ヒナは言いにくそうに口をもごもごさせた。おしゃべりだがなまりがあるし、聞き取りもあまりうまくないらしい。それでも好奇心はある。「ジャムと知り合い?パーシーは?」
「サミーでいいよ。クロフト卿とは知り合いだったことはないな」サミーはきっぱりと言った。
それを聞いて安心した。ジェームズはともかく、クロフト卿のような素行不良を極めたような男と付き合って欲しくない。
「そっか、パーシーは友達いないもんね」ヒナは悲しげに肩を落とした。クロフト卿もしょんぼりとする。この二人、似ていると思ってしまうのはなぜだろう。目鼻立ちはまったく違うというのに。
「ヒナ、そろそろジャスティンに合流した方がいいんじゃないかな。僕は怒られるのはごめんだよ。ジェームズはかばってくれないし、ところでミスター・リードはいつジェームズと知り合いに?」クロフト卿は目をぎらつかせながらサミーに訊いた。
「いつ、だったかな?」サミーがジェームズに尋ねる。
「いつだったでしょう?先日クラブで御一緒したのが随分と久しぶりの事だったと記憶していますが」ジェームズはのらりくらりと答えた。
「もう、いいよ。ジェームズは都合が悪くなると記憶が曖昧になるんだな。ヒナ、行こう!」クロフト卿はぷりぷりしながらヒナの手を引いて公園の奥の方へ向かった。
「申し訳ございません。それではわたくしも失礼します。ミスター・コートニー、また近いうちに」
慌ただしく一団が去っていくと、思った以上に静かになった。周囲では音楽が流れ、花火が打ちあがる瞬間を大勢の人が楽しみながら待っているのに、なぜかここだけ周りから隔絶されてしまったかのようだ。
今年はもうすぐ終わるが、今夜はとても長い夜になりそうだ。
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2023-03-17 14:11
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