はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 340 [花嫁の秘密]

「いい加減こっちを向いたらどうだ?」

「てっきり君は僕の背中が好きなんだと思っていたよ」そう軽口を叩きながらも、サミーはもぞもぞとエリックに向き直った。「目を閉じてもいいか?」今夜はもうあと一〇分も起きていられないだろう。

エリックと一緒に寝るのも慣れてきたけど、あまりいいことではないなと思う。でもまあ、いまはまだ寒いし、暖かくなるまではしばらくこのままでもいいか。

「今日はやりたいことやって満足したか?」目を閉じるとエリックが言った。

「まあね。そっちこそ、すべて予定通り進んでいるようで何よりだ」嫌味っぽく返そうとしたが、エリックが抱きついてきて声がくぐもってしまった。

「明日の準備をしてきただけだ。お前のせいでゆっくりできやしない」エリックが忙しくしているのは好きでやっていることだ。僕の眠りを妨げているくせによく言う。

「そういえば、明日どうする?ジュリエットにディナーでも一緒にと誘ったら断られたから、一〇時頃に迎えに行くと伝えておいたけど、そっちは?」一緒に行動するなら、僕から伝えておけばよかったかな。

「二人まとめてホテルで拾ってウッドワース・ガーデンズに向かえばいい。おそらく途中で降りて歩かなきゃならんだろうな」

そうなるとジュリエットは文句言いそうだけど、こればっかりはどうしようもないだろうな。ぐずぐずしていたらカウントダウンに間に合わなくなる。そもそも明日は僕のために予定を開けてくれていると思っていたのに、まさかディナーを断られるとは。先客っていったい誰だろう。

僕は一緒にいて楽しい相手ではないかも知れないけど、結婚を考えるなら食事くらい一緒に――

ふいにサミーは目を開けた。あることに思い至ったからだ。顔を上げるとエリックはいつものようにじっとこちらを見ていた。

「君、まさか」

エリックには僕の言わんとしていることがすぐに分かったようだ。ようやく気付いたかと、ニッと口の端を上げた。

「いったい誰が彼女の相手を?」訊いたところで答えるはずないか。まさか僕をジュリエットに会わせないために、ここまでするとはね。今年の終わりと新しい年を迎える瞬間を一緒に過ごすのに、ディナーがダメな理由がわからない。

「誰かは気にするな。それと、お前の方が魅力があるから気に病むことはない」

「魅力ね……」あると言えたらどんないいか。ジュリエットの興味は僕のお金で僕ではない。かろうじてエリックの言葉が慰めではないことが救いだ。

褒めてくれた褒美はキスでいいだろうか。今夜はこれで力尽きそうだ。

つづく


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