はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 338 [花嫁の秘密]
特に何の問題もなく帰宅したサミーは居間と図書室を覗き、エリックがいないのを見て取って自分の部屋へあがった。
ドアを開けるとそこはいつも通り暖かく静かだった。エリックは帰宅はしているようだけど、珍しく自分の部屋にいるようだ。
今夜はデレクもその取り巻きもいなかったし、カードゲームで少し勝たせてもらって気分がいい。身ぐるみ剥いだってよかったけど、会員との良好な関係を保っておいて悪いことはない。それと思いがけない人物と話すことができたのも、今夜の収穫のひとつだろう。
上着をベッドの上に放り、カフスボタンを外してその上に投げた。こういうのをダグラスが見たら嫌な顔をしそうだけど――もちろん僕のいない所で――、彼はここにはいないし、結局自分で片付けるのだから好きにさせてもらう。
背後でノック音がして、静かにドアが開いた。エリックがノックするなんて、珍しいこともあるものだ。
「何か用?」振り向くと、そこにはブラックが立っていた。近侍らしい仕事をするつもりだろうか?「着替えなら一人で平気だけど」これまで手伝ったことなどないくせに、なんだって今夜に限ってわざわざここへ?
「そうして欲しいのかと思いましたが」ブラックはさも当然のように近付いてきた。
サミーは思わず一歩後ろへさがった。「着替えは自分でする。そんなことのために来たわけではないだろう?いったい何の用だ」
「いえ、そんなことのために来たんですよ。あなたが俺を雇いたいと聞いたので」近侍にしては背の高すぎるブラックは、次の主人を見下ろしながら言った。
エリックから聞いたのか。「そういう意味ではないことはわかっているんだろう?でもまあ、上着を掛けておいてくれるなら助かるけど。そういうこともしてくれるの?」
そもそも引き受ける気はあるのだろうか?エリックはいったいどういうふうに話をしたのだろう。こういう大事なことは帰宅してすぐに言うべきではないのか?姿を見せないと思ったら、わざとだったわけだ。
「本当に俺を雇いたいと思っているんですか?近くに人を置くのは嫌いだと思っていましたが」ブラックはベッドに手を伸ばし、上着の上に転がるカフスボタンを取った。仕舞う場所は知らないので、ひとまず鏡台の上に置きに行った。
「僕だって一人で出来ないことはある。それに、今回みたいに色々頼みごとを聞いてくれる者も必要だ。君なら一応信用できる」
たった一週間でこいつを信用するなんて正気とは思えないが、そもそもエリックとの関係がまともだとは言い難い。クリスの屋敷を拠点として、いったい僕らは何をしているんだか。
「ずいぶん買ってくれているんですね。俺がこれを盗まないと言い切れると?」ブラックは手の中でカフスボタンを転がした。
「盗むつもりなら勝手にどうぞ。だいたい盗みをするような男をエリックが雇うはずないだろう?」まったく、エリックと同じで面倒な男だ。「報酬は君が望む金額を出すよ。何か頼みごとをすれば特別手当も出そう。その代わり、僕に忠誠を誓って欲しい。それから、もしも逃げ出したくなったら早めに言ってくれると助かる」
忠誠を誓えは言い過ぎだけど、これだけ言ってダメなら、諦めてエリックをこき使うしかない。
つづく
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ドアを開けるとそこはいつも通り暖かく静かだった。エリックは帰宅はしているようだけど、珍しく自分の部屋にいるようだ。
今夜はデレクもその取り巻きもいなかったし、カードゲームで少し勝たせてもらって気分がいい。身ぐるみ剥いだってよかったけど、会員との良好な関係を保っておいて悪いことはない。それと思いがけない人物と話すことができたのも、今夜の収穫のひとつだろう。
上着をベッドの上に放り、カフスボタンを外してその上に投げた。こういうのをダグラスが見たら嫌な顔をしそうだけど――もちろん僕のいない所で――、彼はここにはいないし、結局自分で片付けるのだから好きにさせてもらう。
背後でノック音がして、静かにドアが開いた。エリックがノックするなんて、珍しいこともあるものだ。
「何か用?」振り向くと、そこにはブラックが立っていた。近侍らしい仕事をするつもりだろうか?「着替えなら一人で平気だけど」これまで手伝ったことなどないくせに、なんだって今夜に限ってわざわざここへ?
「そうして欲しいのかと思いましたが」ブラックはさも当然のように近付いてきた。
サミーは思わず一歩後ろへさがった。「着替えは自分でする。そんなことのために来たわけではないだろう?いったい何の用だ」
「いえ、そんなことのために来たんですよ。あなたが俺を雇いたいと聞いたので」近侍にしては背の高すぎるブラックは、次の主人を見下ろしながら言った。
エリックから聞いたのか。「そういう意味ではないことはわかっているんだろう?でもまあ、上着を掛けておいてくれるなら助かるけど。そういうこともしてくれるの?」
そもそも引き受ける気はあるのだろうか?エリックはいったいどういうふうに話をしたのだろう。こういう大事なことは帰宅してすぐに言うべきではないのか?姿を見せないと思ったら、わざとだったわけだ。
「本当に俺を雇いたいと思っているんですか?近くに人を置くのは嫌いだと思っていましたが」ブラックはベッドに手を伸ばし、上着の上に転がるカフスボタンを取った。仕舞う場所は知らないので、ひとまず鏡台の上に置きに行った。
「僕だって一人で出来ないことはある。それに、今回みたいに色々頼みごとを聞いてくれる者も必要だ。君なら一応信用できる」
たった一週間でこいつを信用するなんて正気とは思えないが、そもそもエリックとの関係がまともだとは言い難い。クリスの屋敷を拠点として、いったい僕らは何をしているんだか。
「ずいぶん買ってくれているんですね。俺がこれを盗まないと言い切れると?」ブラックは手の中でカフスボタンを転がした。
「盗むつもりなら勝手にどうぞ。だいたい盗みをするような男をエリックが雇うはずないだろう?」まったく、エリックと同じで面倒な男だ。「報酬は君が望む金額を出すよ。何か頼みごとをすれば特別手当も出そう。その代わり、僕に忠誠を誓って欲しい。それから、もしも逃げ出したくなったら早めに言ってくれると助かる」
忠誠を誓えは言い過ぎだけど、これだけ言ってダメなら、諦めてエリックをこき使うしかない。
つづく
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2023-02-17 00:55
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