はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 319 [花嫁の秘密]

エリックが暖炉の前に座り込んで髪を乾かす姿を窓辺の椅子に座って眺めながら、サミーは明日から何をしようかと考えを巡らせていた。

ブラックにはふたつ頼み事をした。ひとつはフェルリッジに行って、父の葬儀に出席した者の名簿をダグラスから受け取って、ここへ持ち帰ってくること。

ブライアークリフ卿のパーティーで見かけたあの男が誰なのかようやく思い出せたものの、四年前ちらりと見ただけだし、念のため確認は必要だ。決定づけられれば、彼らについて調べを進めることが出来る。

それともうひとつ、例の事件現場となった屋敷を手に入れた持ち主に、屋敷を手に入れるに至った経緯を確かめてくること。どちらが先でもいいけど、名簿が先の方がありがたい。ダグラスはすでに用意して待っているだろうし……。そういえばダグラスはクリスについてラムズデンに行くのだろうか。

当然ついて行くだろう。そうしないといけない。

「おい、いつまでそんな隅に逃げているつもりだ」エリックが痺れを切らしたように声をあげた。

「邪魔をしないように気を使っていたのに、文句を言うとはね」

「いいからこっちへ来い」

「はいはい」サミーは背中に挟んでいたクッションを手に立ち上がった。アンジェラが選んだクッションカバーはいかにもな花柄だ。少しずつ変化していく屋敷の姿に、エリックが言っていた言葉が思い起こされる。

自分の住まいを持つべきだろうか。ここは僕の家なのに僕のものじゃない。それでも、いつかは出て行かなければならないのだろう。

「少し付き合え」エリックはソファテーブルの上のボトルを手に立ち上がり、ふたつのグラスに中身を注いだ。今夜もクリスの秘蔵のワインを引っ張り出してきたようだ。酒に興味がないから、値段以外の価値はよくわからないけど。

「それを飲むならこれもあった方がいい」書き物机の上のチョコレート箱を掴んで、エリックの隣に座った。イヴにもらった<デュ・メテル>のチョコがあれば、飲み慣れない赤ワインも少しはマシに思えるかもしれない。

「俺はまずこれをいただこうか」エリックは皿にかぶせてあった銀製の蓋を取って、満足の笑みを浮かべた。ほら見てみろとグラスを掲げてやけに得意げだ。

「ビーフシチューにはぴったりのワインだって言いたいのか?いいから食べたらどうだい」まったく、いちいち僕の方を向く必要なんてないのに。

サミーはワインを一口飲んで、チョコレートに手を伸ばした。本当はワインなんかよりもココアが飲みたい気分だったが、今夜はもうみんな下がらせたし、エリックに付き合わなきゃ仕方がない。

エリックはおとなしくビーフシチューを肴にワインを飲んでいるが、しばらくしたら昨日聞きそびれたクィンの話でもしてもらおう。ついでに今日の行動も何か聞けたらいいんだけど、どうせ誤魔化されて終わりだろう。

つづく


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