はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
Sの可愛い子犬 8 [Sの可愛い子犬]
春先になり、アストンは住まいをロンドンへ移すことを決めた。滞っていた事務的な手続きが終わり、次の段階へ移る時が来たのだ。
成り上がりのアストンは社交場で顔を広める必要があった。良くも悪くもごく一部の界隈では名前を知られてはいるが、もっと大物と知り合う必要があった。それは息子ステファンのために他ならない。上流社会へうまく入り込むには大きな後ろ盾が必要だ。小物のコッパーなどではなく。
妻であるアストン夫人は好き勝手に遊びまわっている。今はイタリアを旅行中らしいが、息子を気にかけることは一切ない。ステファンとは血の繋がりがないからだ。
父親の計画など知ったことかとばかりに、ステファンはロンドン行きを断った。この屋敷が気に入ったからだと言っていたが、父親のへこへこする姿を見たくはないからだろう。金ならいくらでもあるが、貴族社会の好む地位と名誉はアストンが持たざるものだった。手に入れるためには、地べたに這いつくばる必要さえあった。
ステファンがここへ残ることになり、多少計画を変更せざるを得なかった。ジョンをどうするべきか決めあぐねていたが、もうしばらくステファンの相手をさせておくことにした。その後は下働きとしてどこかへ売り飛ばすのもいいだろう。
結果、元々多くもない使用人の半数をここに残すことになった。使用人など向こうで雇えばいいのだろうが、貴族に仕えていたような奴らはどうも信用ならない。
いよいよロンドンへ向かうという頃に、一人の客が訪ねて来た。
男はアルフレッド・スタンレーという弁護士だった。
アストンは警戒した。
弁護士に訪問される覚えなどないからだ。いや、覚えはあるがそんなへまはしていないと心の中で思っていた。
弁護士は、コッパー子爵の知り合いだと言った。
こちらに子爵の息子のジョン・スチュワートがいると聞き、近くまで来たのでぜひ会いたいというものだったが、もしかするとコッパーの奴から何か聞いていたのかもしれない。だが、何か知っていたとしてそれが何になる?死人に口なしだ。
弁護士はこの近くに領地をもつ、スタンレー伯爵の親戚だという。
スタンレー……知っている。
少し変わった伯爵と聞いている。しかしその後ろにはランフォード公爵が控えている。莫大な富と権力を持った貴族の一人だ。
アストンは、この客人を丁重にもてなすことにした。
余計な事を言わないように釘を刺すため、ジョンを自ら呼びに行った。ジョンは図書室でステファンと本を読んでいた。こいつに利用価値などないと思っていたが、ステファンがこれまで見向きもしなかった読書に興味を持ったのはこいつの影響なのだろう。これから一生、息子の下僕として仕えさせるのも悪くないのかもしれない。
「ジョン、余計な事を言うんじゃないぞ。お前はここで何不自由なく暮らしているんだからな。厩舎で働いていたことは絶対に言うなよ」
怯えるジョンは黙って首を縦に振るだけだった。
ジョンはアストンの期待通り余計なことは口にしなかった。弁護士はあれこれ質問していたが、手応えのなさに諦めたのか一杯のお茶を飲み干すと早々に帰っていった。
アストンは安堵し、さっさと部屋へ戻れとジョンに言った。
つづく
前へ<< >>次へ
にほんブログ村
成り上がりのアストンは社交場で顔を広める必要があった。良くも悪くもごく一部の界隈では名前を知られてはいるが、もっと大物と知り合う必要があった。それは息子ステファンのために他ならない。上流社会へうまく入り込むには大きな後ろ盾が必要だ。小物のコッパーなどではなく。
妻であるアストン夫人は好き勝手に遊びまわっている。今はイタリアを旅行中らしいが、息子を気にかけることは一切ない。ステファンとは血の繋がりがないからだ。
父親の計画など知ったことかとばかりに、ステファンはロンドン行きを断った。この屋敷が気に入ったからだと言っていたが、父親のへこへこする姿を見たくはないからだろう。金ならいくらでもあるが、貴族社会の好む地位と名誉はアストンが持たざるものだった。手に入れるためには、地べたに這いつくばる必要さえあった。
ステファンがここへ残ることになり、多少計画を変更せざるを得なかった。ジョンをどうするべきか決めあぐねていたが、もうしばらくステファンの相手をさせておくことにした。その後は下働きとしてどこかへ売り飛ばすのもいいだろう。
結果、元々多くもない使用人の半数をここに残すことになった。使用人など向こうで雇えばいいのだろうが、貴族に仕えていたような奴らはどうも信用ならない。
いよいよロンドンへ向かうという頃に、一人の客が訪ねて来た。
男はアルフレッド・スタンレーという弁護士だった。
アストンは警戒した。
弁護士に訪問される覚えなどないからだ。いや、覚えはあるがそんなへまはしていないと心の中で思っていた。
弁護士は、コッパー子爵の知り合いだと言った。
こちらに子爵の息子のジョン・スチュワートがいると聞き、近くまで来たのでぜひ会いたいというものだったが、もしかするとコッパーの奴から何か聞いていたのかもしれない。だが、何か知っていたとしてそれが何になる?死人に口なしだ。
弁護士はこの近くに領地をもつ、スタンレー伯爵の親戚だという。
スタンレー……知っている。
少し変わった伯爵と聞いている。しかしその後ろにはランフォード公爵が控えている。莫大な富と権力を持った貴族の一人だ。
アストンは、この客人を丁重にもてなすことにした。
余計な事を言わないように釘を刺すため、ジョンを自ら呼びに行った。ジョンは図書室でステファンと本を読んでいた。こいつに利用価値などないと思っていたが、ステファンがこれまで見向きもしなかった読書に興味を持ったのはこいつの影響なのだろう。これから一生、息子の下僕として仕えさせるのも悪くないのかもしれない。
「ジョン、余計な事を言うんじゃないぞ。お前はここで何不自由なく暮らしているんだからな。厩舎で働いていたことは絶対に言うなよ」
怯えるジョンは黙って首を縦に振るだけだった。
ジョンはアストンの期待通り余計なことは口にしなかった。弁護士はあれこれ質問していたが、手応えのなさに諦めたのか一杯のお茶を飲み干すと早々に帰っていった。
アストンは安堵し、さっさと部屋へ戻れとジョンに言った。
つづく
前へ<< >>次へ
にほんブログ村
2022-08-01 23:55
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0