はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナの縁結び 10 [ヒナの縁結び]

「ヒナ、僕決めた」

朝食後、ヒナの部屋にやってきたカイルは出し抜けに言った。

「何を決めたの?」ソファでごろごろしていたヒナは、顔だけにょきりと出して訊ねる。まるで巣穴から顔を覗かせたリスみたいだ。

「ウェインさんのこと。クロフト卿の言う通り、ちょっと引いてみる」カイルはヒナの足元にぺたりと座った。

昨日の夜、クロフト卿からたくさんのアドバイスをもらった。

『一緒にいたい気持ちはよくわかるよ。でも、少し離れてみるのもいいんじゃない?』

ヒナは頑としてクロフト卿の意見には反対だった。好きな人と離れるなんて絶対に出来ないと。

正直、クロフト卿の意見には説得力はないと思った。あの後すぐにジェームズさんに会いに行っていたし。でもクロフト卿は、ここにいる誰より恋の駆け引きには長けている。

「もう好きだって言わないってこと?」ヒナがソファから、ふかふかの絨毯の上に降りてきた。

「まあ、そんな感じかな。しつこくして嫌われたらいけないし」

そもそもカイルはウェインにきちんと好きだと伝えてはいない。が、カイルもヒナもそれには気付いていなかった。

「ウェインは嫌ったりしないよ。カイルのこと好きだもん」ヒナは請け合った。

「それは、そうだと思うけど……」ヒナに言われると本当にそうなんだって思える。「でも、このままじゃウェインさんは僕のこと弟みたいにしか思ってくれない。それじゃダメなんだ。ヒナだって、ウォーターさんに弟だって言われたら、もうキスできなくなっちゃうんだよ」

「えっ!!そんなのやだ。弟なんかになりたくないっ!」ヒナは必死の形相で前言撤回した。

「でしょ。それにさ、もっと大人になってウェインさんに認められたい。だから我慢する。勉強いっぱいして、おじさんの仕事も手伝って、大人の男になるんだ」カイルは口元をぐっと引き締め、力強く鼻から息を吐き出した。

「カイルすごーい!ヒナも大人の男になる!」ヒナもむふんっと鼻の穴を膨らませた。

「よし!一緒になろう」

二人してこぶしをぐっと突き上げたところで、部屋の入口の方から声が掛かった。

「盛り上がっているところ悪いけど――」

ヒッ!!!ク、クロフト卿!くわぁ~ッ!恥ずかしい。

カイルはこぶしを引っこめた。

「パーシー!」ヒナは反対にこぶしを更に突き上げた。

「到着したようだよ。お兄さんたち」クロフト卿は優雅な足取りで部屋を横切って、二人を見下ろす位置に立った。「おやつもいっぱい用意されてるみたい。一緒に行くかい?」

ああ……とうとう。カイルは気持ちが沈んでいくのが分かった。好きな人と離れるというのは考えるよりもずっと辛い。やっぱり大人になんかなりたくない。

「行く!」ヒナはくしゃくしゃの靴下を拾い集めながら、勢いよく返事をした。もう、行く気満々だ。

確かに、ちょうどお茶の時間だし、スペンサーとブルーノを出迎えるのは弟の役目だ。

「僕も行く」そう言うしかないよね……。

つづく


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