はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花村と海 3 [花村と海]

「で、花村。海と別れるの、それともこれからも付き合っていきたいの」

美影はぐじぐじと思い悩む花村に厳しい口調で訊ねた。ぐずぐずしていたら、海はあっという間に他の人のものになってしまう。特に須山という男子には、まんざらでもない様子だし。

「別れちゃだめだよ。だって、海を任せられるのって、花ちゃんだけだもん」コウタが力を込めて言う。

任せられても困るのだが、花村は単純に喜ぶ。

久しぶりに見た花村の生気のある顔。美影は嬉しくなった。なんだかんだ言っても、花村は美影の記憶にある限り、初めて出来た友達だから。

「でも、花ちゃんがあんなに怒るのって珍しいよね?普段、怒らないでしょう?あ、お昼の残りのキャロットケーキ食べる?」朋は保存容器にかかるラップをはがして、ケーキのかけらを口に入れた。

「食べる」と即答したのはコウタ。美影も遠慮がちに手をあげる。

「そうでもないです。お父さんはいちいち腹の立つ人なので、僕は怒ってばっかりなんです。ところで、今日はお客さんいないんですね」花村はどうにも気になってとうとう訊ねた。

「うん。もう閉めちゃったから」朋はあっさり。

「え、あ、そうなんですね」あっけに取られる花村。もしもこの会合のために店を貸し切りにしたのだとしたら、いつまでもめそめそしてはいられないと気付いたようだ。

「ねぇ、試験も終わったことだし、みんなでまた集まろうよ。ほら、朋ちゃんの誕生日パーティーをするって言えば、海だって逃げられないでしょう?」

「コウタ!誕生日は二人で過ごすって――ああっ!でも、今回はみんなでいっか。その代わり、別の日にデートしような」物分かりのいい兄を装いつつ、ちゃっかり甘いひと時をコウタに確約させる朋。

「朋ちゃんたら……」照れ照れのコウタ。何を想像しているのやら。

「花村の気持ちはどうなの?」美影は訊ねた。花村の気持ちがどこへ向いているのかは、かなり重要だ。

「海とやり直したいです」花村は下唇を強く噛んだ。

「まだ別れてはいないんだよね?」朋が念のため訊ねる。こちらも色々考えがあるようだ。

「今の状況を考えると、あやしい気がします」花村は正直な不安を吐露した。

「僕もそんな気がする」マイナス思考コウタは最悪の事態を想定する。例えば、朋ちゃんの誕生日に海が新しい彼氏を連れてくるとか。

「そう悲観することもないと思うよ。海は単純だから、花ちゃんがしっかり所有権を表明すればいいだけ」朋が言うとすごく簡単に聞こえるが、事はそう単純でも簡単でもない。

これまでと違って、二人とも本気で喧嘩をしたのだから。

手っ取り早く仲直りするには、花村が海を許し謝ること。これに尽きると、美影は内心思った。納得いかなくとも、そういうものだから仕方がない。

つづく


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