はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナおうちに帰る 1 [ヒナおうちに帰る]
主人の帰宅を待つバーンズ邸は、使用人総動員で支度に余念がなかった。
特にキッチン。
シモンは新鮮な生の苺をひとつふたつとつまんだ。
完熟でしか味わえない甘酸っぱさに、思わず身震いをする。これはヒナが喜ぶぞ!
「苺売りの娘も同じように味見をしたのですか?」
単純に冗談と受け止めるには陰気過ぎる顔つきのエヴァンが、頼んでおいた氷を手にキッチンに入ってきた。クラブの方はクビになって、現在はお屋敷付きとなっている。代わりにチャーリーこと、チャールズ・デイヴナムがクラブにまわされた。
なかなか見目のいい男で、エヴァンの代わりとしては申し分のない人材だろう。
「エヴァンもひとつどうだ?もちろん苺の方だよ」当然、質問には答えなかった。苺売りの娘の味を教えたところで、エヴァンにはわかるまい。
「けっこうです。わたくしのようなものがそんな高価な――」
「グダグダ言わずに、ひとつ食べてみることだ。毒味も兼ねてね」シモンは茶目っ気たっぷりにウィンクをした。
エヴァンは迷いを見せながらも、ひとつ苺をつまみ上げた。ヒナのために用意された苺の毒味をするのに躊躇う必要はない。顔の傷などものともしない美し過ぎる前歯で、苺をかじる。
「美味しいです」月並みな感想だが、エヴァンはこれ以上の言葉を思い付けなかった。これでアイスを作ればヒナが喜ぶこと間違いなしと、太鼓判を押す。
「よしよし。これでヒナの胃袋はシモンのものだ」シモンは満足げにうなった。
実のところ、シモンはブルーノという未知の男に嫉妬していた。ヒナの胃袋をまんまと鷲掴みにし、すっかり手懐けたうえ、田舎からシティに押し掛けてくるという。先に弟を送り込み、いったいどういう魂胆なんだか。
「心配は無用です。ヒナは毎朝あなたのレシピで作られるパンを食べていましたから」エヴァンは自信を持って請け合った。
「シモンのレシピでも、同じ味になるとは思えないがね」シモンは高い鼻をふんと鳴らした。エヴァンの慰めくらいではシモンの心にぽっかり空いた穴は埋められない。ヒナの帰宅こそがシモンを幸せにする。
この屋敷がジェームズのものとなって、ヒナと旦那様が出ていくようなことにでもなれば、シモンも一緒についていくつもりだった。ヒナのおじはなかなか面白い人物ではあるが、ヒナほどではない。そのうち退屈してしまうに決まっている。シモンは退屈が大嫌いだ。
「さあ、急がなければ。ヒナが戻ってきますよ」エヴァンは己の役目とばかりにシモンを現実に引き戻すと、ぐずぐずせずキッチンから出ていった。
まったく。退屈な男だ。
シモンは嘆かわしげに首を振り、アイスクリーム作りに取り掛かった。
つづく
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特にキッチン。
シモンは新鮮な生の苺をひとつふたつとつまんだ。
完熟でしか味わえない甘酸っぱさに、思わず身震いをする。これはヒナが喜ぶぞ!
「苺売りの娘も同じように味見をしたのですか?」
単純に冗談と受け止めるには陰気過ぎる顔つきのエヴァンが、頼んでおいた氷を手にキッチンに入ってきた。クラブの方はクビになって、現在はお屋敷付きとなっている。代わりにチャーリーこと、チャールズ・デイヴナムがクラブにまわされた。
なかなか見目のいい男で、エヴァンの代わりとしては申し分のない人材だろう。
「エヴァンもひとつどうだ?もちろん苺の方だよ」当然、質問には答えなかった。苺売りの娘の味を教えたところで、エヴァンにはわかるまい。
「けっこうです。わたくしのようなものがそんな高価な――」
「グダグダ言わずに、ひとつ食べてみることだ。毒味も兼ねてね」シモンは茶目っ気たっぷりにウィンクをした。
エヴァンは迷いを見せながらも、ひとつ苺をつまみ上げた。ヒナのために用意された苺の毒味をするのに躊躇う必要はない。顔の傷などものともしない美し過ぎる前歯で、苺をかじる。
「美味しいです」月並みな感想だが、エヴァンはこれ以上の言葉を思い付けなかった。これでアイスを作ればヒナが喜ぶこと間違いなしと、太鼓判を押す。
「よしよし。これでヒナの胃袋はシモンのものだ」シモンは満足げにうなった。
実のところ、シモンはブルーノという未知の男に嫉妬していた。ヒナの胃袋をまんまと鷲掴みにし、すっかり手懐けたうえ、田舎からシティに押し掛けてくるという。先に弟を送り込み、いったいどういう魂胆なんだか。
「心配は無用です。ヒナは毎朝あなたのレシピで作られるパンを食べていましたから」エヴァンは自信を持って請け合った。
「シモンのレシピでも、同じ味になるとは思えないがね」シモンは高い鼻をふんと鳴らした。エヴァンの慰めくらいではシモンの心にぽっかり空いた穴は埋められない。ヒナの帰宅こそがシモンを幸せにする。
この屋敷がジェームズのものとなって、ヒナと旦那様が出ていくようなことにでもなれば、シモンも一緒についていくつもりだった。ヒナのおじはなかなか面白い人物ではあるが、ヒナほどではない。そのうち退屈してしまうに決まっている。シモンは退屈が大嫌いだ。
「さあ、急がなければ。ヒナが戻ってきますよ」エヴァンは己の役目とばかりにシモンを現実に引き戻すと、ぐずぐずせずキッチンから出ていった。
まったく。退屈な男だ。
シモンは嘆かわしげに首を振り、アイスクリーム作りに取り掛かった。
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2016-11-11 23:22
nice!(1)
コメント(2)
はじめまして、こんにちは!
ずっと楽しませてもらってます。
「ヒナ」のお話、待っていました♡
かわいいヒナに会えると思うと、こちらにお邪魔するのがまた楽しくなります。
更新大変でしょうが、がんばってください!!
by ねこはは (2016-11-12 09:47)
ねこははさま
はじめまして、こんばんは。
ヒナを待っていてくださって、ありがとうございます♪
ロンドンのお屋敷でもみんな待ってました!(笑)
旅から戻ってちょっと大人になったヒナを、これからもよろしくお願いします。
コメントありがとうございました☆
by やぴ (2016-11-13 00:07)