はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナ田舎へ行く 1 [ヒナ田舎へ行く]
新たな登場人物
<ロス家三兄弟>ウェストクロウ ラドフォード館管理者
スペンサー(25)
ブルーノ(22)
カイル(16)
*
七月。じめじめとした日が続いたせいで、スペンサー・ロスは不機嫌だった。
居間の椅子に深く腰掛け、同様に鬱積する不満を抱えた弟を横目で見やり、ミントキャンディを口に放り込んだ。
窓辺に立って前庭に目を凝らす三つ年下の弟ブルーノは、果たしてこの状況を不満に思っているのだろうかと、スペンサーはキャンディを奥歯で砕きながら思った。
約三年ぶりにここウェストクロウのラドフォード館は客を迎える。その事実に、ロス一族は浮足立ち、遠く離れた地にいる主人の歓心を買おうと躍起になった。
馬鹿馬鹿しいとスペンサーは胸の内で思ってはいたが、代々この地を収める――主人の代わりに――祖父と親父に、その意を伝える事はなかった。この地を捨てたも同然の主人に忠誠を尽くすなど、ロス家の男として恥だとすら思っているとは、よもや口には出来ない。
遠い昔、この広大な土地がロス一族のものだったことを思えば尚更だ。
こうしてのんびりと過ごせる時間は残り少なくなっている。本来ならすでに客人を迎えるために動き出していなければならない。
けれども、スペンサーはぎりぎりまで座り心地のよい椅子から立ち上がる気はなかった。たかが子供一人迎えるだけ。面倒はあれこれあるものの、結局はここに伯爵の目が届く事はない。もちろん、代理人が目を光らせてはいるが、ある程度命じられた通りにやっていれば、なにも面倒な事などない。
「遅くないか?」ブルーノが出掛けたきり戻らない、末の弟カイルを心配して言った。
客を迎えに行ったカイルが屋敷を出て随分と経つ。門をたったふたつくぐるだけのそうたいした距離でもないのに、確かに時間が掛かり過ぎだ。
約束の時間になっても客が現れないようなら、一分一秒待つことなく、屋敷に引き返してくるように言ってあった事を考えれば、門の外で何らかのトラブルに巻き込まれたと想定するのが妥当だろう。
だが、カイルのことだ。
「おおかた客が来ず、道草でも食っているのだろう?」スペンサーは答えた。
「ありえるな」ブルーノは短く言った。が、スペンサーと違って心配性の弟は窓辺から離れ、椅子の背に掛けていた上着を取った。「様子を見てくる」
実の兄でも見惚れてしまう程の金色の髪を揺らして、ブルーノは居間を出て行った。
スペンサーはやれやれとひとりごち、弟たちが戻って来るまでの時間を自らの休息時間に充てる事にした。もしも仮に客人を連れ帰ったとしたら、しばらく休めそうにない。
そんな事にならなければいいのにと、やはりスペンサーは不機嫌に思った。
つづく
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居間の椅子に深く腰掛け、同様に鬱積する不満を抱えた弟を横目で見やり、ミントキャンディを口に放り込んだ。
窓辺に立って前庭に目を凝らす三つ年下の弟ブルーノは、果たしてこの状況を不満に思っているのだろうかと、スペンサーはキャンディを奥歯で砕きながら思った。
約三年ぶりにここウェストクロウのラドフォード館は客を迎える。その事実に、ロス一族は浮足立ち、遠く離れた地にいる主人の歓心を買おうと躍起になった。
馬鹿馬鹿しいとスペンサーは胸の内で思ってはいたが、代々この地を収める――主人の代わりに――祖父と親父に、その意を伝える事はなかった。この地を捨てたも同然の主人に忠誠を尽くすなど、ロス家の男として恥だとすら思っているとは、よもや口には出来ない。
遠い昔、この広大な土地がロス一族のものだったことを思えば尚更だ。
こうしてのんびりと過ごせる時間は残り少なくなっている。本来ならすでに客人を迎えるために動き出していなければならない。
けれども、スペンサーはぎりぎりまで座り心地のよい椅子から立ち上がる気はなかった。たかが子供一人迎えるだけ。面倒はあれこれあるものの、結局はここに伯爵の目が届く事はない。もちろん、代理人が目を光らせてはいるが、ある程度命じられた通りにやっていれば、なにも面倒な事などない。
「遅くないか?」ブルーノが出掛けたきり戻らない、末の弟カイルを心配して言った。
客を迎えに行ったカイルが屋敷を出て随分と経つ。門をたったふたつくぐるだけのそうたいした距離でもないのに、確かに時間が掛かり過ぎだ。
約束の時間になっても客が現れないようなら、一分一秒待つことなく、屋敷に引き返してくるように言ってあった事を考えれば、門の外で何らかのトラブルに巻き込まれたと想定するのが妥当だろう。
だが、カイルのことだ。
「おおかた客が来ず、道草でも食っているのだろう?」スペンサーは答えた。
「ありえるな」ブルーノは短く言った。が、スペンサーと違って心配性の弟は窓辺から離れ、椅子の背に掛けていた上着を取った。「様子を見てくる」
実の兄でも見惚れてしまう程の金色の髪を揺らして、ブルーノは居間を出て行った。
スペンサーはやれやれとひとりごち、弟たちが戻って来るまでの時間を自らの休息時間に充てる事にした。もしも仮に客人を連れ帰ったとしたら、しばらく休めそうにない。
そんな事にならなければいいのにと、やはりスペンサーは不機嫌に思った。
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2015-01-03 11:04
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