はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナ田舎へ行く 序章 [ヒナ田舎へ行く]

上品な濃紺に塗られた馬車が速度を落としながらウェストクロウの宿場町に入った。

目当ての宿屋は中心に位置し、そこに近づくにつれて、さらに馬車の速度は緩やかになった。そして完全に停止した。

「ヒナ、着いたぞ」

ジャスティンの優しいささやきに、ヒナはぎゅっと目を閉じ、眠ったふりを続けた。町へ入る前は確かに眠っていたので、ばれないと思っていたのだが甘かった。

当然、誰もがヒナの狸寝入りには気づいている。あえて指摘はせず、淡々と事を進める。

「ウェイン、部屋を用意するように亭主に伝えろ。ダン、お前は厩舎に行ってヒナの荷物を積み替える指示をしておけ」

ヒナは片目をそっと開けた。

ウェインとダンの背中がちらりと見えただけ。二人は指示に従うべく馬車から飛び降りてしまった。快適な旅は終わったのだ。ヒナはジャスティンの腕の中でもぞもぞと動き、白々しくあくびをした。今起きました、とばかりに。

「ヒナ、着いたぞ」ジャスティンは繰り返した。「ここで昼食を取って、少し休んでから出発だ」

ヒナは失望もあらわにため息をついた。

自分で決めたこととはいえ、ここでお昼を食べたが最後。二人はしばらく離ればなれになってしまう。そのしばらくがいったいどのくらいの期間なのか想像もつかない。一週間くらいなのか、一ヶ月なのか、それとももっとずっと長い期間なのか。

「のどかわいた」むっつりと言い、ヒナはジャスティンの膝から降りた。

ジャスティンは不機嫌なヒナを面白がっているようで、むくれた頬にキスをすると、先に馬車を降りた。「さあ、おいで。甘いパンを用意しておくようにちゃんと言っておいたから」手を伸ばしてヒナが降りるのを手伝うと、出迎えた亭主に冷たい飲み物を用意するように命じた。

「バーンズさま、ようこそいらっしゃいました。長旅はいかがでしたか?お部屋の支度は整っております。冷たいお飲物もそちらへお運びいたしましょうか?」

<大鷲と鍵亭>の亭主は肉付きのいい両手を揉みしだきながら、興奮気味にまくしたてた。

「いや、すぐに頼む」ジャスティンはヒナのふくれっ面を見下ろし言った。

亭主はヒナのぼさぼさ頭を見て、目の下をぴくぴくとひきつらせた。だがすぐに考えを巡らせ、満面の笑みで応じた。「では、すぐに」

亭主の胸の内はこうだ。ダヴェンポート邸にまつわる一切合切を、誰もが口をぽかんと開けてしまうような法外な値段で買い取った人物の連れだ。見た目はもみくちゃにされたぬいぐるみのようでも、金持ちには違いない。

あながち間違いではない判断を下した亭主に促され、ジャスティンとヒナはようやく中へ入った。

ヒナは椅子のひとつに腰掛け、カウンターの向こうの女給に笑い掛けた。ジャスティンは店の隅で亭主となにやらひそひそやっている。ヒナの極上の笑顔が自分以外に向けられたのを見ていなくて幸いだ。

「冷たいから、歯にしみるかもよ」女給はヒナのもつれた髪をじれったそうに見やり、背の低いグラスをカウンターに置いた。

ヒナは小首を傾げ、出された蜂蜜水をごくごくと飲み干し、部屋の確認を終えて階段を降りてくるウェインをグラス越しに見上げた。

「ウェインも飲む?」

ウェインは図々しい男なので断らなかった。むしろちょっとばかしアルコールの入った飲み物の方がいいとさえ思った。

ジャスティンよりも先にヒナの隣に座り、のんきに蜂蜜水を飲みながら、ウェインは我があるじと従僕仲間のダンを待った。

「ヒナ、これから一人で大丈夫かい?」

ヒナは脚をぷらぷらさせ、ウェインの質問に答えた。「ダンがいるよ」

ウェインは期待と不安の入り混じったあどけない表情のヒナを横目で見ながら思った。

そう、ヒナにはダンがついている。お洒落で働き者のダンは、誰よりもヒナの扱いがうまい。ことによっては旦那様よりも。そんなダンが一緒なら、何も恐れる事はない。

それもこれもダンがヒナについてラドフォード館にうまく入り込むことが出来ればの話。

ヒナ一人で来るようにという、伯爵の一方的で無茶な要望をすっぱり無視して、そんな事が可能かどうかはわからないが、とにかくやり遂げなければならない。それが出来なければ、ヒナを乗せた馬車は門の前で引き返すこととなる。

そうなれば旦那様は喜ぶだろうが――もちろん表面上は残念がるだろうけど、実際、ほんの一日だって離れていられないのだからやっぱり喜ぶだろう――、ヒナは両親の墓前に花を手向けることすらできない。

そんな悲しい事があるだろうか?

「ああっ!ずるいぞ、ウェイン」大役を仰せつかったダンが、能天気な様子でやって来た。ヒナを挟んでカウンターに腰掛けると、ヒナのこんがらがった頭を見て目を剥いた。

ダンの大仕事はすでに始まっていた。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。 
迷子のヒナ、続編です。
といっても今回、ヒナは脇役です。

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