はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
迷子のヒナ 10 [迷子のヒナ]
ジャスティンはヒナの小さな手を取って、口元へ運び、軽くキスをした。ヒナがうっとりとした表情をする。いったいいつからヒナはこんな顔をするようになったのだろうか?いつまでも子供だと思っていたのに、気付けばジャスティンを欲情させるまでに成長している。
ホームズの咳ばらいが聞こえた気がしたが、ジャスティンはかまわずもう片方の手も取って口づけた。
それから、甘え上手なヒナに陥落させられないように、声を硬くして言う。
「ホームズが悲しむ顔が見たいか?」ううん、とヒナが首を振る。ジャスティンは頷き続ける。「お前がいつまでたっても小さいままだから、ホームズは責任を感じて――」
指の背で、ヒナの額に掛かる巻き毛を払いながら説き伏せていると、開いたドアからジェームズがスタスタと入って来た。
「ホームズ、コーヒーを頼むよ。ジャスティン、ヒナをいつまで膝に乗せているつもり?ヒナ、食べたくないならこのまま部屋へ戻ってもいいよ」
ジェームズが恐ろしい程無表情で言うものだから、ヒナはぴょんとジャスティンの膝からおりると、そそくさと自分の席に着いた。
「ジャム、おはよう」
おずおずとみせる笑顔が何とも愛らしい。
「ああ、おはよう。ヒナ」ジェームズはヒナの向かいに座ると、上座に座るジャスティンに向かって言った。「ジャスティン、手元にあるその新聞を取ってくれないか?もちろん読み終わっていたら、だが」
ジャスティンはジェームズを睨みつけるようにして、手元の新聞を押しやった。ジェームズが新聞という言葉を何気なく強調したのをジャスティンは聞き逃さなかった。
さっさとヒナから情報を聞き出して、身元を特定しろというわけだ。両親の名前が判れば新聞社などに頼らずとも、すぐに調べはつく。おそらくヒナの両親のうちどちらかはこの国の人間だ。それでいてある程度の身分の者なのは、まず間違いない。
「ヒナ、朝食のあと話があるから書斎に来なさい。それから、午後は一緒にどこか出掛けよう」
「話……?怒る?」
どうやら一応昨日の事を気にしているようで、ヒナは首を竦め上目遣いでジャスティンを伺っている。
ためしに『怒る』とでも言ってみようか?ジャスティンの悪戯心が騒いだが、あまりに大人げないと思い「いいや。怒らない」と優しく返した。
ヒナはにっこりと笑った。それから少し眉を顰め、「でも、午後はダメ。アダムス先生が来る日だから」と言った。
アダムス先生とは、ヒナの家庭教師だ。
「ダメ?」よもや断られようとは。「ミスター・アダムスには明日来てもらうことにしなさい」
「先生、明日は、ダメ」
「ダメだと?たった週四日、それも数時間で、住み込みの家庭教師の倍は払っているというのにか?」
「でも、でも、明日はお母さんの誕生日なの」
目を潤ませ、懇願するように見つめられては、ヒナにめっぽう弱いジャスティンは口を閉じざるを得なかった。ヒナは一緒に出掛けようという提案には、まったく興味を示さなかった。そのことを不思議に思う余裕はいまのジャスティンにはなく、家庭教師に負けた屈辱で惨めったらしくコーヒーを啜ることしかできなかった。
情けない事だ。
つづく
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ホームズの咳ばらいが聞こえた気がしたが、ジャスティンはかまわずもう片方の手も取って口づけた。
それから、甘え上手なヒナに陥落させられないように、声を硬くして言う。
「ホームズが悲しむ顔が見たいか?」ううん、とヒナが首を振る。ジャスティンは頷き続ける。「お前がいつまでたっても小さいままだから、ホームズは責任を感じて――」
指の背で、ヒナの額に掛かる巻き毛を払いながら説き伏せていると、開いたドアからジェームズがスタスタと入って来た。
「ホームズ、コーヒーを頼むよ。ジャスティン、ヒナをいつまで膝に乗せているつもり?ヒナ、食べたくないならこのまま部屋へ戻ってもいいよ」
ジェームズが恐ろしい程無表情で言うものだから、ヒナはぴょんとジャスティンの膝からおりると、そそくさと自分の席に着いた。
「ジャム、おはよう」
おずおずとみせる笑顔が何とも愛らしい。
「ああ、おはよう。ヒナ」ジェームズはヒナの向かいに座ると、上座に座るジャスティンに向かって言った。「ジャスティン、手元にあるその新聞を取ってくれないか?もちろん読み終わっていたら、だが」
ジャスティンはジェームズを睨みつけるようにして、手元の新聞を押しやった。ジェームズが新聞という言葉を何気なく強調したのをジャスティンは聞き逃さなかった。
さっさとヒナから情報を聞き出して、身元を特定しろというわけだ。両親の名前が判れば新聞社などに頼らずとも、すぐに調べはつく。おそらくヒナの両親のうちどちらかはこの国の人間だ。それでいてある程度の身分の者なのは、まず間違いない。
「ヒナ、朝食のあと話があるから書斎に来なさい。それから、午後は一緒にどこか出掛けよう」
「話……?怒る?」
どうやら一応昨日の事を気にしているようで、ヒナは首を竦め上目遣いでジャスティンを伺っている。
ためしに『怒る』とでも言ってみようか?ジャスティンの悪戯心が騒いだが、あまりに大人げないと思い「いいや。怒らない」と優しく返した。
ヒナはにっこりと笑った。それから少し眉を顰め、「でも、午後はダメ。アダムス先生が来る日だから」と言った。
アダムス先生とは、ヒナの家庭教師だ。
「ダメ?」よもや断られようとは。「ミスター・アダムスには明日来てもらうことにしなさい」
「先生、明日は、ダメ」
「ダメだと?たった週四日、それも数時間で、住み込みの家庭教師の倍は払っているというのにか?」
「でも、でも、明日はお母さんの誕生日なの」
目を潤ませ、懇願するように見つめられては、ヒナにめっぽう弱いジャスティンは口を閉じざるを得なかった。ヒナは一緒に出掛けようという提案には、まったく興味を示さなかった。そのことを不思議に思う余裕はいまのジャスティンにはなく、家庭教師に負けた屈辱で惨めったらしくコーヒーを啜ることしかできなかった。
情けない事だ。
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2013-03-19 00:01
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