はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

溺れるほど愛は遠のく 10 [溺れるほど愛は遠のく]

須山はヤル気なんだろうか?

ひとり部屋に残された海はきれいに整えられたベッドに視線を向けた。

昨日来たときは、ほとんど何も考えていなかった。
誘われたような気がしたから、のこのこやって来ただけだ。キスをしてみて思ったのは、上手い奴とすればそれなりに身体は反応するという事だった。

好きな奴とじゃなきゃ出来ないと思っていたのは幻想だった。

俺は須山とだって出来る。

そう思ったところで、須山が飲み物やお菓子を胸元に抱え戻って来た。

「海が何好きかわかんなかったから、適当に持ってきた」
そう言って須山は持っていたものをアイボリーの毛足の短いラグの上にバラバラと落とした。

「俺、アイスが好きなんだよね」ペットボトルのお茶を手にし、ついでにおねだりもしてみる。

「へえ、なんか納得。アイス好きそうだもんな」
須山は海が口をつけたペットボトルを奪い、ごくごくと喉を鳴らして半分ほど一気に飲んだ。「ならさ、アイス持ってくるから、キスしていい?」

ほらな。何もしないからって言うのはやっぱり嘘なんだ。

「俺が好きなの持ってきてくれるならいいよ。ちなみにその辺には売ってないからね」
『まさにいのアイス』は決まったところにしか売っていない。ちなみに迫田家の近所では入手不可能だ。

「そうなの?じゃあ、前払いで一回。持ってきたらもう一度――」

海は須山が言い終わる前に自ら唇を重ねた。押し付けるようなキスは色気も何もなかった。すぐさま離した唇を手の甲で拭い、またごろりと転がった。

「アイス、よろしくね」

「どうやら、遊び慣れているのは海のようだな。いまの一回は納得いかない」

須山は海に跨り強引に自分の方に向かせた。
怒りに駆られた表情はいつもの須山とはまったく違って見えた。

「俺は、遊んだことなんかないよ。お前とは違う」
昨日と同じことを口にしたはずなのに、今日の須山はなんだか傷ついているようだ。

「海はどうしても俺を遊び人にしたいらしいな。花村の情報のせい?」

「あいつの情報は関係ない。俺がそう思ってるだけだ。お前だって昨日認めてたじゃん」

「まあ、確かにね。だったら、俺が何をどうしたいか分かるだろう?」

「やりたいんだろう。だったらさっさとすればいいじゃん」

須山が諦めたように溜息を吐き、海から離れた。起き上がるといつもの悪意のまったく見られない表情を見せ「アイス、買ってくるから」と言った。

海は酷い事を言ってしまったと後悔したが、口をついて出た言葉はアイスの銘柄だった。

須山は分かったと返事をして部屋を出て行った。

しばらく横になったまま天井を見つめていたが、目の端からこめかみに涙が伝っていることに気づき、慌てて涙を拭った。

須山は悪くない。期待させるような事をした俺が悪い。

それに、実際は期待していたのは俺の方だ。須山ならきっと俺の心をズタズタに切り裂いたあの男を忘れさせてくれると思ったから。

海は起き上がると、どうしようか迷った末ベッドへと向かった。

つづく


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