はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
憧れの兄、愛しの弟 10 [憧れの兄、愛しの弟]
「毎日コウタが食事当番してくれたらいいのにな」
朋がそう言うと、聖文が大きく頷いた。それもそうだ。まともな料理が出るのはコウタと聖文が当番の時だけだ。朋はそこそこできるが、最悪なのは双子だ。
出来ないなら出来ないなりに簡単なものにすればいいものを、なぜか、難しいものに挑戦したがる。
「それで、もう上に引っ越したのか?」
聖文が軽く温めたチキン南蛮にタルタルソースをたっぷりかけながら訊いてきた。
おいおい、それはかけ過ぎだろう、と思いながら朋は自分のために用意されている皿を引き寄せた。
手を伸ばし、テーブルの真ん中の箸立てから黒檀の箸を取る。
ラップを取り、聖文がやっと手放したスプーンを使いタルタルソースをたっぷりとすくいあげた。
「引っ越すって言っても、着替えを持っていくだけだ。まあ、いまの部屋を作業部屋にするからちょっと片付けなきゃいけないけど」
「いま何作ってるんだ?」
聖文は一切れ目を食べ終え訊いた。
朋も甘酢にしっかり漬かったチキンを口に頬張った。美味い!やっぱコウタのチキン南蛮は最高だな。
「スーツ。結構細かい工程があるから面倒なんだよな」質問を忘れないうちに答えておく。
「でも、それがやりたくて専門に行ったんだろう?大学に行かずに」
「別に――そんなにやりたかったわけじゃない。大学よりかは行きたかったってくらいで」
「ふんっ。どうせ、コウタの為だろう?」
聖文は二切れ目を始末し、タルタルソースを追加した。
「なっ、なんで?」
見透かされていてドキッとした。もしかして、コウタへの恋心にも気付いているのだろうか。
「コウタのボロボロの巾着――お前が中学の時に学校で作ったものだろう」
そうだ。コウタのボロボロの体操着入れは朋が作ったものだ。手先が器用で、ミシンも難なく扱う朋は、家庭科は得意科目だった。
授業で作った巾着袋を家に持って帰って母に見せた時、とても褒められたのを覚えている。傍にいたコウタが「朋ちゃん、それ作ったの?すごいね。すごいね」と言ったのも覚えている。「いるか?」と言ったら、満面の笑みで「うんっ!」と言って両手を差し出してきた。
その手に乗せた巾着はあれから六年経った今でも、コウタの手に握られている。
「別に、それとこれとは関係ないだろう」実は大いにあるが。
「お前な、コウタを可愛がり過ぎなんだよ。だから双子がコウタをいじめるんだ」
「言っておくが、俺は陸も海もかわいがっているぞ。怖がらせているのはまさにいだろう?」
「知るかっ」
結局、朋は夕食の皿を綺麗に平らげてしまった。
やはりコウタの手料理を食べずに寝るなんて、そんな勿体ない事できるはずがなかった。
朋は後片付けをすませ、必要なものを持ってコウタの待つ二階の部屋へ戻って行った。
つづく
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朋がそう言うと、聖文が大きく頷いた。それもそうだ。まともな料理が出るのはコウタと聖文が当番の時だけだ。朋はそこそこできるが、最悪なのは双子だ。
出来ないなら出来ないなりに簡単なものにすればいいものを、なぜか、難しいものに挑戦したがる。
「それで、もう上に引っ越したのか?」
聖文が軽く温めたチキン南蛮にタルタルソースをたっぷりかけながら訊いてきた。
おいおい、それはかけ過ぎだろう、と思いながら朋は自分のために用意されている皿を引き寄せた。
手を伸ばし、テーブルの真ん中の箸立てから黒檀の箸を取る。
ラップを取り、聖文がやっと手放したスプーンを使いタルタルソースをたっぷりとすくいあげた。
「引っ越すって言っても、着替えを持っていくだけだ。まあ、いまの部屋を作業部屋にするからちょっと片付けなきゃいけないけど」
「いま何作ってるんだ?」
聖文は一切れ目を食べ終え訊いた。
朋も甘酢にしっかり漬かったチキンを口に頬張った。美味い!やっぱコウタのチキン南蛮は最高だな。
「スーツ。結構細かい工程があるから面倒なんだよな」質問を忘れないうちに答えておく。
「でも、それがやりたくて専門に行ったんだろう?大学に行かずに」
「別に――そんなにやりたかったわけじゃない。大学よりかは行きたかったってくらいで」
「ふんっ。どうせ、コウタの為だろう?」
聖文は二切れ目を始末し、タルタルソースを追加した。
「なっ、なんで?」
見透かされていてドキッとした。もしかして、コウタへの恋心にも気付いているのだろうか。
「コウタのボロボロの巾着――お前が中学の時に学校で作ったものだろう」
そうだ。コウタのボロボロの体操着入れは朋が作ったものだ。手先が器用で、ミシンも難なく扱う朋は、家庭科は得意科目だった。
授業で作った巾着袋を家に持って帰って母に見せた時、とても褒められたのを覚えている。傍にいたコウタが「朋ちゃん、それ作ったの?すごいね。すごいね」と言ったのも覚えている。「いるか?」と言ったら、満面の笑みで「うんっ!」と言って両手を差し出してきた。
その手に乗せた巾着はあれから六年経った今でも、コウタの手に握られている。
「別に、それとこれとは関係ないだろう」実は大いにあるが。
「お前な、コウタを可愛がり過ぎなんだよ。だから双子がコウタをいじめるんだ」
「言っておくが、俺は陸も海もかわいがっているぞ。怖がらせているのはまさにいだろう?」
「知るかっ」
結局、朋は夕食の皿を綺麗に平らげてしまった。
やはりコウタの手料理を食べずに寝るなんて、そんな勿体ない事できるはずがなかった。
朋は後片付けをすませ、必要なものを持ってコウタの待つ二階の部屋へ戻って行った。
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2012-02-08 01:35
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