はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
もう伯爵でも少年でもない 前編 [伯爵と少年]
伯爵と少年 番外編
本編の10年後くらいのお話
今年の誕生日はこれまでのように祝うことが出来ない。
エドワード・スタンレー伯爵の祖父、フレデリック・ヘンリーがひと月ほど前に亡くなり、現在喪に服しているのもあるが、エドワードはランフォード公爵位を受け継ぐことになり周辺が騒々しくなっているからだ。
フレデリックには跡継ぎとなる男児がおらず、爵位は余所へ移るはずだった。フレデリックはこのことに不快感を隠そうともせず、公然と甥であるジョージ・エマーソンの悪口を吹聴していた。
だが、ジョージはフレデリックよりも先に亡くなり、結局爵位はフレデリックが目をかけていたエドワードが継ぐことになったのだ。
フレデリックはさぞ満足だろうが、エドワードはそうではなかった。
そういったごたごたのなか、ロンドンへ行ってしまったエドワードをアンディはホロウェルワースの屋敷でじっと待っていた。
「エディ……帰ってこれないよね」お気に入りのテラスでぽつりとこぼす。
もう幾日もひとりで過ごしている。寂しくて寂しくて毎日夜寝るときにはどんなに我慢しても涙が溢れてしまう。エドワードのいない広いベッドで眠りたくないからと、アンディは暖炉の傍の寝椅子に丸まって眠っている。もう二十七歳になろうかというのに。
「あんでぃにいちゃま」
「ローズ」
アンディは傍に寄って来た少女を膝に抱きかかえた。三歳になるローズはローレンスとルーシーの娘だ。二人はいまも屋敷で働いていてローズは屋敷で育てられている。まるでお姫様のように。
「さみしいの?おじちゃまいないから」
たどたどしい喋り方がまたかわいいのだ。
「そうなんだ。でも、エディの前でおじちゃまって言っちゃだめだよ、ローズ。エディ、傷ついちゃうから」そう言って微笑む。
エドワードは今日で三十九歳。
『おじちゃま』と呼ばれてもおかしくない歳だ。エドワードがこの『おじちゃま』に過剰反応する大きな理由は他にある。
ローズは誰からもかわいがられているが、アンディもその一人に入っているという事だ。ローズが傍によって来れば膝にのせてあげ、庭を散歩すると言えば抱っこして一緒に薔薇園を散策し――そう、それがエドワードは気に入らないのだ。情けない事に、三歳の少女に嫉妬をしているという訳だ。
「ねえ、あんでぃちゃん。おさんぽいこう」
膝の上の愛らしい少女はローレンスと同じ碧の目をきらきらとさせ、アンディを誘う。
「だめだ!」
いかにも、というような鋭く硬い声がテラスに響いた。
エドワードだ。
「エディ!!」
アンディは嬉しくてすぐに駆け寄ろうとしたが、膝にそれなりに重い三歳児が乗っているので顔を向けるだけで精一杯だった。
「ローズ、アンディの膝から降りなさい。まったく、ナニーはどこだ?いったいだれが給金を払っていると思っているんだ」
エドワードはぶつくさ言いながらアンディに近寄り、膝からローズを抱き上げた。
「おじちゃまおかえりなさい。あんでぃちゃん、さみしくてげんきがなかったから、ろーずがめんどうみてあげていたのよ」
まったくよく喋るガキだとエドワードは思いながら、ローズをスティーヴンの手に委ねた。子供の抱き方など分からないスティーヴンは、困ったようにすぐさまナニーの手に委ねる為、テラスを後にする。
「アンディは寂しくてローズに面倒を見て貰っていたのか?」エドワードはにやりと笑いながら、アンディを抱き上げた。
アンディは真っ赤になりながらも「うん」と涙声で答えた。
つづく
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本編の10年後くらいのお話
今年の誕生日はこれまでのように祝うことが出来ない。
エドワード・スタンレー伯爵の祖父、フレデリック・ヘンリーがひと月ほど前に亡くなり、現在喪に服しているのもあるが、エドワードはランフォード公爵位を受け継ぐことになり周辺が騒々しくなっているからだ。
フレデリックには跡継ぎとなる男児がおらず、爵位は余所へ移るはずだった。フレデリックはこのことに不快感を隠そうともせず、公然と甥であるジョージ・エマーソンの悪口を吹聴していた。
だが、ジョージはフレデリックよりも先に亡くなり、結局爵位はフレデリックが目をかけていたエドワードが継ぐことになったのだ。
フレデリックはさぞ満足だろうが、エドワードはそうではなかった。
そういったごたごたのなか、ロンドンへ行ってしまったエドワードをアンディはホロウェルワースの屋敷でじっと待っていた。
「エディ……帰ってこれないよね」お気に入りのテラスでぽつりとこぼす。
もう幾日もひとりで過ごしている。寂しくて寂しくて毎日夜寝るときにはどんなに我慢しても涙が溢れてしまう。エドワードのいない広いベッドで眠りたくないからと、アンディは暖炉の傍の寝椅子に丸まって眠っている。もう二十七歳になろうかというのに。
「あんでぃにいちゃま」
「ローズ」
アンディは傍に寄って来た少女を膝に抱きかかえた。三歳になるローズはローレンスとルーシーの娘だ。二人はいまも屋敷で働いていてローズは屋敷で育てられている。まるでお姫様のように。
「さみしいの?おじちゃまいないから」
たどたどしい喋り方がまたかわいいのだ。
「そうなんだ。でも、エディの前でおじちゃまって言っちゃだめだよ、ローズ。エディ、傷ついちゃうから」そう言って微笑む。
エドワードは今日で三十九歳。
『おじちゃま』と呼ばれてもおかしくない歳だ。エドワードがこの『おじちゃま』に過剰反応する大きな理由は他にある。
ローズは誰からもかわいがられているが、アンディもその一人に入っているという事だ。ローズが傍によって来れば膝にのせてあげ、庭を散歩すると言えば抱っこして一緒に薔薇園を散策し――そう、それがエドワードは気に入らないのだ。情けない事に、三歳の少女に嫉妬をしているという訳だ。
「ねえ、あんでぃちゃん。おさんぽいこう」
膝の上の愛らしい少女はローレンスと同じ碧の目をきらきらとさせ、アンディを誘う。
「だめだ!」
いかにも、というような鋭く硬い声がテラスに響いた。
エドワードだ。
「エディ!!」
アンディは嬉しくてすぐに駆け寄ろうとしたが、膝にそれなりに重い三歳児が乗っているので顔を向けるだけで精一杯だった。
「ローズ、アンディの膝から降りなさい。まったく、ナニーはどこだ?いったいだれが給金を払っていると思っているんだ」
エドワードはぶつくさ言いながらアンディに近寄り、膝からローズを抱き上げた。
「おじちゃまおかえりなさい。あんでぃちゃん、さみしくてげんきがなかったから、ろーずがめんどうみてあげていたのよ」
まったくよく喋るガキだとエドワードは思いながら、ローズをスティーヴンの手に委ねた。子供の抱き方など分からないスティーヴンは、困ったようにすぐさまナニーの手に委ねる為、テラスを後にする。
「アンディは寂しくてローズに面倒を見て貰っていたのか?」エドワードはにやりと笑いながら、アンディを抱き上げた。
アンディは真っ赤になりながらも「うん」と涙声で答えた。
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2011-11-08 02:13
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