はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
あまやかなくちづけ 6 [あまやかなくちづけ]
守はしばらく森野が帰っては来ないかと待っていたが、その気配はなかった。森野は案外、頑固なのだ。ああ言ったからには、守が帰るまでは戻ってこないだろう。
守は後ろ髪引かれる思いで、森野のマンションを後にした。
あんなふうに言うつもりはなかった。
守は自分が口にしてしまった言葉をなんとか取り消せないかと考えてみるが、それは無理な事だった。
勇気を振り絞って言った言葉を、瞬時に却下され腹が立った。
森野の言い分はわかる。けれど、すこしくらい嬉しそうな顔をしてくれてもよかったのに。
守は二人の関係に焦りを感じていた。
兄たちの関係とあまりに違いすぎるためか、それとも森野に子供扱いされるためかは分からなかった。
森野はいつも守の保護者のようなふるまいをする。その度、守は森野を遠く感じるのだ。
守は自宅には戻らず、父の住むマンションへ向かった。
父は、兄二人の関係を知っている。いったいどう思っているのかは知らないけど、反対はしていない。
社長を辞めた父は、仕事から一切手を引いた訳ではなかった。裏方に回っただけで、それなりに忙しくはしているようだ。
一応マンションのカギを渡されているため、父が帰宅しているのか確認もせず、勝手に開けて中へ入った。
ドアを開けたとき、灯りが付いていて安堵した。
守は父にすべて言うつもりだった。
俺は森野さんが好きだと。
父はリビングで静かに晩酌をしていた。
守を見て、ちいさく「おう」といって、琥珀色の液体の入ったグラスを口に付けた。
守は父の隣にちょこんと座った。
ソファがあるのに、二人並んで硬い床に座る光景に吹き出しそうになる。
「ねえ、父さん。俺……好きな人がいるんだ」
守はゆっくりと切り出した。
「ん…」
「一緒に暮らしたいと思ってる。――高校卒業したら」
「ん」
「でも、怒らせちゃって……彼を――」
「ん?」
「もしかしたら、もう戻って来てくれないかも。いつも信頼を裏切るのは俺の方なんだ。森野さんはいつも我慢してくれて、すごく大切にしてくれるのに、わがままばっかり言っちゃって、もし、嫌われたら、俺、どうしたらいい?」
守は堰を切ったようにわんわんと泣き出してしまった。
自分が思う以上に森野の事が好きなのだ。森野さえも気付かないほど。
「森野……?」
父が小さく呟く。
「あの、森野か?」
おそらく自問自答している。
父は守の肩をポンポンと叩きそっと抱いた。親らしい事は何一つしていない。生まれたときに捨てた子供だった。守が十歳のときに再開して、どう接していいか分からないまま、また守から離れた。
自立している容とは違い、守は守ってやらなければならない存在だ。
「守、何があったかわからないが、森野はそんな事で守を嫌うような男じゃないぞ。あれは、ちょっと変わったところはあるが、まっすぐないい男だ」
森野の事を変わったやつと言う父が一番変わっていると思うのは守だけではないだろう。
けど、守はそんな父の言葉が嬉しかった。咎めるわけでもなく、ただ心配してくれている。認めた訳ではないにしろ、理解はしてくれているのだ。
その日、守は初めて父に抱擁されながら泣いた。生まれてから今までの分、父の温かな胸の感触を思う存分味わった。
つづく
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守は後ろ髪引かれる思いで、森野のマンションを後にした。
あんなふうに言うつもりはなかった。
守は自分が口にしてしまった言葉をなんとか取り消せないかと考えてみるが、それは無理な事だった。
勇気を振り絞って言った言葉を、瞬時に却下され腹が立った。
森野の言い分はわかる。けれど、すこしくらい嬉しそうな顔をしてくれてもよかったのに。
守は二人の関係に焦りを感じていた。
兄たちの関係とあまりに違いすぎるためか、それとも森野に子供扱いされるためかは分からなかった。
森野はいつも守の保護者のようなふるまいをする。その度、守は森野を遠く感じるのだ。
守は自宅には戻らず、父の住むマンションへ向かった。
父は、兄二人の関係を知っている。いったいどう思っているのかは知らないけど、反対はしていない。
社長を辞めた父は、仕事から一切手を引いた訳ではなかった。裏方に回っただけで、それなりに忙しくはしているようだ。
一応マンションのカギを渡されているため、父が帰宅しているのか確認もせず、勝手に開けて中へ入った。
ドアを開けたとき、灯りが付いていて安堵した。
守は父にすべて言うつもりだった。
俺は森野さんが好きだと。
父はリビングで静かに晩酌をしていた。
守を見て、ちいさく「おう」といって、琥珀色の液体の入ったグラスを口に付けた。
守は父の隣にちょこんと座った。
ソファがあるのに、二人並んで硬い床に座る光景に吹き出しそうになる。
「ねえ、父さん。俺……好きな人がいるんだ」
守はゆっくりと切り出した。
「ん…」
「一緒に暮らしたいと思ってる。――高校卒業したら」
「ん」
「でも、怒らせちゃって……彼を――」
「ん?」
「もしかしたら、もう戻って来てくれないかも。いつも信頼を裏切るのは俺の方なんだ。森野さんはいつも我慢してくれて、すごく大切にしてくれるのに、わがままばっかり言っちゃって、もし、嫌われたら、俺、どうしたらいい?」
守は堰を切ったようにわんわんと泣き出してしまった。
自分が思う以上に森野の事が好きなのだ。森野さえも気付かないほど。
「森野……?」
父が小さく呟く。
「あの、森野か?」
おそらく自問自答している。
父は守の肩をポンポンと叩きそっと抱いた。親らしい事は何一つしていない。生まれたときに捨てた子供だった。守が十歳のときに再開して、どう接していいか分からないまま、また守から離れた。
自立している容とは違い、守は守ってやらなければならない存在だ。
「守、何があったかわからないが、森野はそんな事で守を嫌うような男じゃないぞ。あれは、ちょっと変わったところはあるが、まっすぐないい男だ」
森野の事を変わったやつと言う父が一番変わっていると思うのは守だけではないだろう。
けど、守はそんな父の言葉が嬉しかった。咎めるわけでもなく、ただ心配してくれている。認めた訳ではないにしろ、理解はしてくれているのだ。
その日、守は初めて父に抱擁されながら泣いた。生まれてから今までの分、父の温かな胸の感触を思う存分味わった。
つづく
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2011-10-17 00:25
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