はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
不器用な恋の進め方 4 [不器用な恋の進め方]
アーサーは気付かないうちにメリッサの手に重ねた自分の手に力をいれ、その手をぎゅっと握りしめていた。
そして、すっと近づき――
反対の手が彼女の顔を捉え――
そして、唇を重ねた。
アーサーは驚いた。
何をしている?彼女を乗馬に誘うはずだろう?早くやめなければ、彼女を軽んじていることになり、このままでは嫌われてしまう。
だが、身体は言う事をきかなかった。
それどころか、自分の手は彼女の身体をしっかりと包み込み、逃すまいとしている。
早くやめるんだ。
脳内で虚しく響く言葉に何とか従おうとする。
そしてアーサーは何とか彼女の唇から自分の唇を引き剥がした。
「子爵様、満足かしら?」
一呼吸おいてメリッサが言った。
あまりに冷静で無関心な物言いにアーサーは苛ついた。
そして思わず口にした言葉は常軌を逸していると自分でも思うような言葉だった。彼女に嫌われたいとしか思えないほどの。
「どうやら、新聞記事は本当の様ですね」
アーサーは先ほどと同じ問いかけをしたが意味は全く違うものだった。
メリッサが僅かに眉間にその言葉の真意を伺うような皺を寄せ「どういう意味ですか?」と訊き返した。
「引退後のあなたの生活が困らないと言う記事です」
メリッサはアーサーを睨みつけた。
いや、アーサーにそう見えただけで、実際はメリッサがアーサーを困ったように見やっただけだった。
「そうですね。特に生活が困るという事はありません」
「否定しないのですか?」
もうこれ以上何も言うんじゃない。
「どうしてその必要がありますか?」
「認めるんですね。パトロンの存在を」
いい加減にするんだアーサー!
「それを言う必要がありますか?」
メリッサは同じ言葉を繰り返した。
アーサーはなんとか自分を抑えつけようとしたが、その口は閉じることなくメリッサをどんどん傷つけていく。
「いいえ、ありません。女優と言うのはそういうものなのでしょうから」
アーサーは自分を殴りつけてやりたくなっていた。愛の言葉を囁くどころか、彼女を侮辱するような言葉を次々吐いている。
「子爵様のおっしゃる通りです。子爵様はまだこの場にいたいようですから、わたくしが失礼することにします」
メリッサは誇り高い青い瞳をアーサーに向けたまま、毅然とした態度で言った。
そしてその場を去ろうとした。
だが、アーサーは彼女の腕を捉え行かせなかった。
メリッサが非難の眼差しをアーサーに向ける。
カタン――
今、カタンと言ったのか?
アーサーは音のした方を見た。おそらくメリッサも。
テラスの扉の向こうに、侯爵夫人がいた。
そして彼女はなぜか囚われの姫を救いに来た王子様のように力強い表情でこちらを見ている。
アーサーが口を開く前に、侯爵夫人が先に口を開いた。
「子爵様、クリスが呼んでいます。メリッサ様は、わたしが、お話があるので――その、ここに残って下さい」
なんと、わかりやすい嘘だろうか。
アーサーとメリッサは同じ事を思っていた。
侯爵夫人がいつからこの場にいて、どこからこの醜態を見聞きしていたのかは分からないが、勇敢にもメリッサを救いに来たのには違いない。
アーサーはこの嘘に騙されようと心に決め、メリッサの腕を離すと、紳士らしく二人に挨拶をし、舞踏場へと戻っていった。
つづく
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そして、すっと近づき――
反対の手が彼女の顔を捉え――
そして、唇を重ねた。
アーサーは驚いた。
何をしている?彼女を乗馬に誘うはずだろう?早くやめなければ、彼女を軽んじていることになり、このままでは嫌われてしまう。
だが、身体は言う事をきかなかった。
それどころか、自分の手は彼女の身体をしっかりと包み込み、逃すまいとしている。
早くやめるんだ。
脳内で虚しく響く言葉に何とか従おうとする。
そしてアーサーは何とか彼女の唇から自分の唇を引き剥がした。
「子爵様、満足かしら?」
一呼吸おいてメリッサが言った。
あまりに冷静で無関心な物言いにアーサーは苛ついた。
そして思わず口にした言葉は常軌を逸していると自分でも思うような言葉だった。彼女に嫌われたいとしか思えないほどの。
「どうやら、新聞記事は本当の様ですね」
アーサーは先ほどと同じ問いかけをしたが意味は全く違うものだった。
メリッサが僅かに眉間にその言葉の真意を伺うような皺を寄せ「どういう意味ですか?」と訊き返した。
「引退後のあなたの生活が困らないと言う記事です」
メリッサはアーサーを睨みつけた。
いや、アーサーにそう見えただけで、実際はメリッサがアーサーを困ったように見やっただけだった。
「そうですね。特に生活が困るという事はありません」
「否定しないのですか?」
もうこれ以上何も言うんじゃない。
「どうしてその必要がありますか?」
「認めるんですね。パトロンの存在を」
いい加減にするんだアーサー!
「それを言う必要がありますか?」
メリッサは同じ言葉を繰り返した。
アーサーはなんとか自分を抑えつけようとしたが、その口は閉じることなくメリッサをどんどん傷つけていく。
「いいえ、ありません。女優と言うのはそういうものなのでしょうから」
アーサーは自分を殴りつけてやりたくなっていた。愛の言葉を囁くどころか、彼女を侮辱するような言葉を次々吐いている。
「子爵様のおっしゃる通りです。子爵様はまだこの場にいたいようですから、わたくしが失礼することにします」
メリッサは誇り高い青い瞳をアーサーに向けたまま、毅然とした態度で言った。
そしてその場を去ろうとした。
だが、アーサーは彼女の腕を捉え行かせなかった。
メリッサが非難の眼差しをアーサーに向ける。
カタン――
今、カタンと言ったのか?
アーサーは音のした方を見た。おそらくメリッサも。
テラスの扉の向こうに、侯爵夫人がいた。
そして彼女はなぜか囚われの姫を救いに来た王子様のように力強い表情でこちらを見ている。
アーサーが口を開く前に、侯爵夫人が先に口を開いた。
「子爵様、クリスが呼んでいます。メリッサ様は、わたしが、お話があるので――その、ここに残って下さい」
なんと、わかりやすい嘘だろうか。
アーサーとメリッサは同じ事を思っていた。
侯爵夫人がいつからこの場にいて、どこからこの醜態を見聞きしていたのかは分からないが、勇敢にもメリッサを救いに来たのには違いない。
アーサーはこの嘘に騙されようと心に決め、メリッサの腕を離すと、紳士らしく二人に挨拶をし、舞踏場へと戻っていった。
つづく
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2011-06-11 15:21
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