はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
不器用な恋の進め方 2 [不器用な恋の進め方]
急遽決まった、メイフィールド侯爵夫人の誕生祝の仮面舞踏会。
招待状が届いたのが十日前だから、一体なぜこんなにも急なのかと招待された客は思っただろう。すでによそのパーティーに出席予定だったものは慌てふためいたはずだ。
現在ロンドンにいるもので、クリスよりも爵位の高いものはそう多くないはずだからだ。
アーサーは舞踏場の壁に寄り掛かり、招待客を眺めていた。
みな仮面をつけているため誰が誰やらさっぱりだ。
だが彼女だけは違った。
仮面で顔が半分隠れていようとも、もはやアーサーにはこの舞踏場のひしめく人々は見えておらず――いや、存在すらしていないも同然だった。
ただ彼女だけがアーサーの目には映り、その目に映っていなかったとしても、ざわめき昂る心が彼女の存在を知らせてくれる。
彼女――メリッサは招待客の一人と踊っていた。
あれは――
そこでアーサーははっとした。メリッサと踊っているのがエリックだと気付いたのだ。
エリックはコートニー家の次男で、かなり胡散臭いが一応ジャーナリストだ。
本日の主役の侯爵夫人の兄でもある。
クリスからメリッサとエリックの関係はなんでもないのだと聞いていたが、劇場で会った時も一緒だったし、彼女はどこへ行くにも彼と一緒なのだ。
何もないはずないではないか。
アーサーはメリッサの素性を調べようとしたが、最初に頼んだ相手が「あなたみたいな人多いんですよね」と小馬鹿にしたような物言いをしたため、腹立たしさにそいつに決闘を申し込みそうになったくらいだ。
まずは彼女の名が、女優としての名なのか、本名なのか知りたいと思った。そしてありのままの姿も知りたい。
彼女はいつ見ても女優としてのメリッサで、上品で美しいが本当の髪の色すら分からないのだ。
今夜は黄金色に輝く金髪だが、初めて目にした時は赤みがかったブルネットだった。
瞳の色はまだ分からない。
この事をクリスに話したところ、<S&J探偵事務所>というところを紹介された。事務所の青年の態度はかなり悪いが、秘密を漏らすようなこともないし、アルフレッド・スタンレーやスタンレー伯爵という後ろ盾もあるのだという。
アーサーは伯爵の事はよく知らないが、アルフレッド・スタンレーの方は知っていた。彼のロンドンでの評判はすこぶるいい。
というわけでこの探偵事務所に依頼したのだが、なんとも横柄な青年に頼むことになり、幸せボケしているクリスを心中で八つ裂きにしてやった。
だが、この事務所の仕事ぶりには頭が下がった。
メリッサの本名は謎のままだが、彼女がフランスからやってきた事が分かった。まだ彼女が十二歳の時だという。父親はフランス人ですでに亡くなっている。母親はイギリス人で彼女が九歳の時に家を出たのだという。男と共に。
ここまで分かっていて、名前が分からないのも不思議だが、とにかく誰も知らない秘密なのだろうと思う。
まだ調査中だが、ここまで聞いただけでも、その生い立ちに胸が締め付けられた。
アーサーは意識を舞踏場へ戻した。
すぐにその目がメリッサをとらえる。
メリッサは舞踏場を出るところだった。しかも一人で。きっとこの暑苦しい場所から出て、夜風にでもあたりにいくのだろう。
アーサーはすぐさまメリッサを追った。
その姿を見ている者がいるとも知らずに。
つづく
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招待状が届いたのが十日前だから、一体なぜこんなにも急なのかと招待された客は思っただろう。すでによそのパーティーに出席予定だったものは慌てふためいたはずだ。
現在ロンドンにいるもので、クリスよりも爵位の高いものはそう多くないはずだからだ。
アーサーは舞踏場の壁に寄り掛かり、招待客を眺めていた。
みな仮面をつけているため誰が誰やらさっぱりだ。
だが彼女だけは違った。
仮面で顔が半分隠れていようとも、もはやアーサーにはこの舞踏場のひしめく人々は見えておらず――いや、存在すらしていないも同然だった。
ただ彼女だけがアーサーの目には映り、その目に映っていなかったとしても、ざわめき昂る心が彼女の存在を知らせてくれる。
彼女――メリッサは招待客の一人と踊っていた。
あれは――
そこでアーサーははっとした。メリッサと踊っているのがエリックだと気付いたのだ。
エリックはコートニー家の次男で、かなり胡散臭いが一応ジャーナリストだ。
本日の主役の侯爵夫人の兄でもある。
クリスからメリッサとエリックの関係はなんでもないのだと聞いていたが、劇場で会った時も一緒だったし、彼女はどこへ行くにも彼と一緒なのだ。
何もないはずないではないか。
アーサーはメリッサの素性を調べようとしたが、最初に頼んだ相手が「あなたみたいな人多いんですよね」と小馬鹿にしたような物言いをしたため、腹立たしさにそいつに決闘を申し込みそうになったくらいだ。
まずは彼女の名が、女優としての名なのか、本名なのか知りたいと思った。そしてありのままの姿も知りたい。
彼女はいつ見ても女優としてのメリッサで、上品で美しいが本当の髪の色すら分からないのだ。
今夜は黄金色に輝く金髪だが、初めて目にした時は赤みがかったブルネットだった。
瞳の色はまだ分からない。
この事をクリスに話したところ、<S&J探偵事務所>というところを紹介された。事務所の青年の態度はかなり悪いが、秘密を漏らすようなこともないし、アルフレッド・スタンレーやスタンレー伯爵という後ろ盾もあるのだという。
アーサーは伯爵の事はよく知らないが、アルフレッド・スタンレーの方は知っていた。彼のロンドンでの評判はすこぶるいい。
というわけでこの探偵事務所に依頼したのだが、なんとも横柄な青年に頼むことになり、幸せボケしているクリスを心中で八つ裂きにしてやった。
だが、この事務所の仕事ぶりには頭が下がった。
メリッサの本名は謎のままだが、彼女がフランスからやってきた事が分かった。まだ彼女が十二歳の時だという。父親はフランス人ですでに亡くなっている。母親はイギリス人で彼女が九歳の時に家を出たのだという。男と共に。
ここまで分かっていて、名前が分からないのも不思議だが、とにかく誰も知らない秘密なのだろうと思う。
まだ調査中だが、ここまで聞いただけでも、その生い立ちに胸が締め付けられた。
アーサーは意識を舞踏場へ戻した。
すぐにその目がメリッサをとらえる。
メリッサは舞踏場を出るところだった。しかも一人で。きっとこの暑苦しい場所から出て、夜風にでもあたりにいくのだろう。
アーサーはすぐさまメリッサを追った。
その姿を見ている者がいるとも知らずに。
つづく
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2011-06-08 13:47
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