はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 399 [花嫁の秘密]
「俺を避けて明日まで書斎にこもるつもりか?」
サミーはペンをゆっくりと置いて顔を上げた。エリックが大股で部屋を横切ってくる。そのうち来るだろうとは思ったけど、予想より早かった。
「君を避ける理由なんてない」自分のすべきことをしているだけで、文句を言われるとはね。
エリックが机の前に立った。視線を落とし、たったいま書き上げたばかりの手紙に目を留める。
「ジュリエットと会うのか?」
やはり、ブラックが報告していたか。「いいや、しばらく留守にするから会えない」
「留守にしなきゃ会う気だったのか?」エリックは手紙をいまにも破り捨てそうな形相だ。ジュリエットとの今後の関係については説明したはず。
「会わないと決めたと言っただろう?君は人の話を聞いていなかったのか」とは言え、さすがに手紙の返事も書かないほど無礼な人間にはなれない。なるべきなのはわかっているけど、地獄へ突き落すその日まではなんでもないふうを装いたい。
「いちいち腹の立つ言い方をするな」エリックがぴしゃりと言う。もしかして機嫌が悪いのか?
サミーは思わずこぼれそうになる溜息を飲み込んだ。いつも飄々としていて、何を考えているのかわからないのが彼の売りだと思っていたが、最近のエリックは感情を表に出し過ぎだ。だからどうだというわけではないが、あまりに彼らしくない。
「計画通りに進めると話をしたばかりだろう。君こそ、昨日はどこへ?ずいぶん帰りが遅かったみたいだけど」手紙を折りたたみ、封筒に入れる。軽く封をして、手紙用の銀のトレイに置いた。あとでプラットに出すように言っておこう。
「お前と違って付き合いってもんがあるんだ」エリックはふんっと鼻を鳴らし、言い捨てた。
エリックの方こそ、いちいち腹の立つ言い方をする。けど、それを気にしても仕方ない。明日にはここを発つし、話しておくならいましかない。「あっさりブラックを手放したんだな。もう少し引き延ばすと思っていたのに」
「もともとお前のために雇った男だ。早いも遅いもない。好きにしろ」エリックはそう言って、書斎机の前のソファに腰をおろした。じっくり腰を据えて話をする気のようだ。
「ブラックが期待通りに動いてくれればいいけど」契約書にお互いサインはしたが、ブラックはどうあってもエリックの手の者だ。ひとまず頼んだ用を粛々と片付けてくれれば文句はないが、長い目で見たとき僕が彼をどれだけ信頼するかで関係性は変わってくるだろう。
だから努力するのはブラックではなく僕の方だ。
「ブラックは連れて行け」エリックがふいに口調を変えた。落ち着いた声音からは、命令ではなく懇願するような響きが感じられた。いつになく真剣な顔つきだ。
サミーはエリックを見据えた。「遠くへ行くわけじゃない。それに、用が済めばすぐに戻ってくる」
「それでも連れて行け」エリックのヘーゼルの瞳は一歩も引かない構えだ。
「君は僕が首を縦に振らない限り、ずっと言い続ける気なんだろう?」
「わかっているなら、何度も言わせるな」
ひと言、わかったと言えば済む話なのは理解している。けど、エリックに指図を受けたくないし、なによりブラックには別で動いてもらう必要がある。
サミーは返事をしないまま、エリックから目を逸らした。これでは負けを認めたも同然。結局言うことを聞く羽目になるのは、目に見えていた。
つづく
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サミーはペンをゆっくりと置いて顔を上げた。エリックが大股で部屋を横切ってくる。そのうち来るだろうとは思ったけど、予想より早かった。
「君を避ける理由なんてない」自分のすべきことをしているだけで、文句を言われるとはね。
エリックが机の前に立った。視線を落とし、たったいま書き上げたばかりの手紙に目を留める。
「ジュリエットと会うのか?」
やはり、ブラックが報告していたか。「いいや、しばらく留守にするから会えない」
「留守にしなきゃ会う気だったのか?」エリックは手紙をいまにも破り捨てそうな形相だ。ジュリエットとの今後の関係については説明したはず。
「会わないと決めたと言っただろう?君は人の話を聞いていなかったのか」とは言え、さすがに手紙の返事も書かないほど無礼な人間にはなれない。なるべきなのはわかっているけど、地獄へ突き落すその日まではなんでもないふうを装いたい。
「いちいち腹の立つ言い方をするな」エリックがぴしゃりと言う。もしかして機嫌が悪いのか?
サミーは思わずこぼれそうになる溜息を飲み込んだ。いつも飄々としていて、何を考えているのかわからないのが彼の売りだと思っていたが、最近のエリックは感情を表に出し過ぎだ。だからどうだというわけではないが、あまりに彼らしくない。
「計画通りに進めると話をしたばかりだろう。君こそ、昨日はどこへ?ずいぶん帰りが遅かったみたいだけど」手紙を折りたたみ、封筒に入れる。軽く封をして、手紙用の銀のトレイに置いた。あとでプラットに出すように言っておこう。
「お前と違って付き合いってもんがあるんだ」エリックはふんっと鼻を鳴らし、言い捨てた。
エリックの方こそ、いちいち腹の立つ言い方をする。けど、それを気にしても仕方ない。明日にはここを発つし、話しておくならいましかない。「あっさりブラックを手放したんだな。もう少し引き延ばすと思っていたのに」
「もともとお前のために雇った男だ。早いも遅いもない。好きにしろ」エリックはそう言って、書斎机の前のソファに腰をおろした。じっくり腰を据えて話をする気のようだ。
「ブラックが期待通りに動いてくれればいいけど」契約書にお互いサインはしたが、ブラックはどうあってもエリックの手の者だ。ひとまず頼んだ用を粛々と片付けてくれれば文句はないが、長い目で見たとき僕が彼をどれだけ信頼するかで関係性は変わってくるだろう。
だから努力するのはブラックではなく僕の方だ。
「ブラックは連れて行け」エリックがふいに口調を変えた。落ち着いた声音からは、命令ではなく懇願するような響きが感じられた。いつになく真剣な顔つきだ。
サミーはエリックを見据えた。「遠くへ行くわけじゃない。それに、用が済めばすぐに戻ってくる」
「それでも連れて行け」エリックのヘーゼルの瞳は一歩も引かない構えだ。
「君は僕が首を縦に振らない限り、ずっと言い続ける気なんだろう?」
「わかっているなら、何度も言わせるな」
ひと言、わかったと言えば済む話なのは理解している。けど、エリックに指図を受けたくないし、なによりブラックには別で動いてもらう必要がある。
サミーは返事をしないまま、エリックから目を逸らした。これでは負けを認めたも同然。結局言うことを聞く羽目になるのは、目に見えていた。
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2023-06-07 22:16
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