はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 390 [花嫁の秘密]

ハニーの事となると、サミーは誰よりも兄らしくなる。リックが色々裏で手をまわしているみたいだけど、いったいどんな手を使っているのか、きっと知らない方がいいのだろう。

「それで?こっちではどうだったの?調べは進んだ?」セシルは好奇心いっぱいに尋ねた。いない間に美味しいものたくさん食べたに違いない。はっきり言って、物騒な話よりももっと楽しい話がしたいけど、調査が進んでいるのかも気になるところ。

「まあ、ぼちぼちな。それよりセシル、お前大学辞めろ。もう十分だろう?これ以上残って何をやる気だ」エリックはなんの脈絡もなく話を切り替えた。

「な、なに、急に」セシルは戸惑った。調査の進捗具合と、僕の大学の話に何のつながりが?

「エリック、いったいなんのつもりだ?」同じように困惑するサミーが、エリックに対抗するように固い口調で尋ねた。

「そ、そうだよ」セシルも小声で応戦する。

「どうせ彼氏がいるから残っただけだろう。いい歳していつまで兄の脛をかじるつもりだ」エリックはまるで聞く耳を持たないといった様子で辛辣に言い捨てた。面倒が増えたことで機嫌が悪くなったようだ。

「学費を出しているのはロジャー兄様で、リックじゃないでしょ」セシルは真っ赤になった。腹は立つが図星だ。

「いくらなんでも、そこまで口を出す権利はエリックにはないんじゃないかな。ほら、セシルは植物学を勉強するとか言っていただろう」サミーはあくまで冷静に、兄弟の間に――文字通り間に挟まれている――割って入った。

「バックス大佐のところにでも行きゃあいいだろう」エリックはにべもない。自分の思い通りに事を進めるためなら、弟もただの駒として動かすだけ。言うことをきかせるために、あらゆる手段を講じるだろう。

セシルは助けを求めてサミーを見た。兄という権力を振りかざし、傍若無人にふるまうエリックを止められるのはサミーを置いて他にはいない。

「アビーのお父上は貴族嫌いじゃなかったかな?結婚も渋々認めたけど、下手なことをすればなかったことにされかねないよ。そうなったら困るのはエリックだ。ロジャーが怒ったらさぞかし恐ろしいんだろうね」こういう言葉を、一切の煽りもなしに淡々と言い切るサミーに恐ろしささえ感じる。けど、いまのエリックにはこのくらいがちょうどいい。

「そんな心配はいらない。それほど反対なら、付添人がいるとはいえ一人でうちの屋敷に滞在させるはずないだろ」エリックの口調が多少和らいだ。ロジャーの怒りを浴びるのだけは、さすがに遠慮したいらしい。

「お母様がいるから。それにバックス大佐、じゃなくてバクストン教授は調査に出てて家を空けているはず」アビーの父親は植物学の教授で、調査のため季節ごとに色々な場所へ出かけている。クリスマスに家族と過ごさないのは馬鹿げているけど、けっしてアビーと不仲だからではなく、研究熱心なだけらしい。

「ハニーが秘密を打ち明けたから母様はロジャーのところへ行っただけで、本当ならフェルリッジにいたはずだ」エリックはぶつくさ言って、ティーカップのウィスキーを飲み干した。それ以上飲む気はないようで、不貞腐れたように椅子に深く沈み込んだ。

「ああ、そうだったね。なんだかすごく遠い昔の話みたいだ。アンジェラはこれからどうするつもりだろう。そのうちアビーに打ち明けるにしても、メグには?」サミーがうまく話を切り替えた。

当然セシルはそれに乗っかる。「そっか、メグも知らないんだっけ?」

「メグはそういうのには無関心なんだ。けど、いまはどうだろう。ハニーが男装するための衣装を揃えたのは誰だと思う?マーサも手伝っているだろうが、メグも協力しているはずだ」エリックはひじ掛けに寄りかかって頬杖をつき、真剣な顔つきで自分がすべきことを考え始めた。

「もう気づいたか、アンジェラが打ち明けたか、それとも知らないままか、どれだろうね」サミーがそっと横目でエリックを見る。

「戻ってきたら聞いてみるさ」それしか他に方法はないだろう、とエリックが言う。

「まあ、長くてもひと月くらいで戻ってくるだろうし、僕もアンジェラと直接話をしてみる」サミーがそう言った途端、エリックが素早く見返したのをセシルは見逃さなかった。

この二人の関係がどうなってるのかさっぱりわからないけど、とにかくリックがサミーに夢中になっているのだけは確かだ。だからこそ、あれこれ理由をつけてここに長く居座っているのだろう。

つづく


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