はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 324 [花嫁の秘密]
「満足したか?」
ん?と、何のことだと、ソファでまどろむサミーは無防備な顔をエリックに向ける。
腹がいっぱいになった途端こうだ。俺の事を給仕係か何かだとしか思っていないらしい。
「君の言うように、自分の家を持つのもいいかもしれない」サミーがぽつりと言う。数日前突如エリックによって投げかけられた課題は、サミーの新しい悩みとなっていた。
もちろんエリックもサミーの心の動きには気づいている。そうなるようにエリック自身が仕向けたからだ。けれども、サミーにのめり込むうちに、この思いつきはあまりいい考えではないような気がしてきていた。
「お前がそうしたいならいくらでも手伝ってやる」ゆったりと椅子の背に身体を預け、サミーの乱れたままの髪を見て頬を緩ませる。人に髪を切れと言うわりに、サミーの髪もなかなかの無法地帯だ。
「もう適当な住まいを見つけたんじゃないのか?」
サミーもこっちの考えはお見通しってわけだ。
「いくつかな。けど、売りに出してる持ち主が売り渋っている」クリスマスイヴの訪問が無駄だったとは思いたくないが、手応えがあったとは言い難い。
「売りに出しているのに?」サミーが疑問を口にする。当然誰もがそう思うだろう。
「人にやるとなったら惜しいんじゃないのか。欲しいならうまく交渉するが」エリックはサミーの反応を探った。
「その時になったら頼むよ。いまはまだ寒いし動きたくない」
サミーは誰のどこのどんな屋敷か尋ねることはなかった。その気がないのか、俺を信頼しているのか。いまはまだ、サミーは暖かく安全な場所でぬくぬくしていればいい。
「俺は少し出てくる」エリックは意を決して立ち上がると、身体を伸ばしてサミーにサッと口づけた。「プラットに下げに来るように言っておく」
「どこへ行くんだ?」サミーはエリックを仰ぎ見た。
「自分の家に行ってくる」
「あの狭いアパートに?」
「そっちじゃない。あそこよりもう少し広い。そのうち招待してやる」どうせならひと部屋やったっていい。世話のし甲斐があると、タナーはさぞかし喜ぶだろう。
「いくつも住まいを持っていてよく管理できるね。僕はきっと無理だな」サミーは顔を左右に振った。
「管理人を置いているし、お前が住む場所にも当然執事を置くだろう?ここにプラットがいるように」
「どうかな、そうそう信用できる人が見つかるとは思えないけど。もちろん彼らは仕事だって割り切って、誠心誠意尽くしてくれるだろうけど、家に仕えるのと個人に仕えるのとではやはり違うよ」
エリックは優しくサミーの頬に触れた。自己評価が低いのは生い立ちそのものの不遇さにあるが、いまは持たざる者とは違う。自由に使える金もそれを増やす才能も、周りに信用できる人間も多くいる。自分で気付いていないのかもしれないが、信用できない男に大事な仕事を任せるか?ブラックへの信頼は俺の存在があってこそかもしれないが、それでも信じたことには変わりない。
「数時間で戻る。土産は“公爵のチョコ”でいいか?」
つづく
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ん?と、何のことだと、ソファでまどろむサミーは無防備な顔をエリックに向ける。
腹がいっぱいになった途端こうだ。俺の事を給仕係か何かだとしか思っていないらしい。
「君の言うように、自分の家を持つのもいいかもしれない」サミーがぽつりと言う。数日前突如エリックによって投げかけられた課題は、サミーの新しい悩みとなっていた。
もちろんエリックもサミーの心の動きには気づいている。そうなるようにエリック自身が仕向けたからだ。けれども、サミーにのめり込むうちに、この思いつきはあまりいい考えではないような気がしてきていた。
「お前がそうしたいならいくらでも手伝ってやる」ゆったりと椅子の背に身体を預け、サミーの乱れたままの髪を見て頬を緩ませる。人に髪を切れと言うわりに、サミーの髪もなかなかの無法地帯だ。
「もう適当な住まいを見つけたんじゃないのか?」
サミーもこっちの考えはお見通しってわけだ。
「いくつかな。けど、売りに出してる持ち主が売り渋っている」クリスマスイヴの訪問が無駄だったとは思いたくないが、手応えがあったとは言い難い。
「売りに出しているのに?」サミーが疑問を口にする。当然誰もがそう思うだろう。
「人にやるとなったら惜しいんじゃないのか。欲しいならうまく交渉するが」エリックはサミーの反応を探った。
「その時になったら頼むよ。いまはまだ寒いし動きたくない」
サミーは誰のどこのどんな屋敷か尋ねることはなかった。その気がないのか、俺を信頼しているのか。いまはまだ、サミーは暖かく安全な場所でぬくぬくしていればいい。
「俺は少し出てくる」エリックは意を決して立ち上がると、身体を伸ばしてサミーにサッと口づけた。「プラットに下げに来るように言っておく」
「どこへ行くんだ?」サミーはエリックを仰ぎ見た。
「自分の家に行ってくる」
「あの狭いアパートに?」
「そっちじゃない。あそこよりもう少し広い。そのうち招待してやる」どうせならひと部屋やったっていい。世話のし甲斐があると、タナーはさぞかし喜ぶだろう。
「いくつも住まいを持っていてよく管理できるね。僕はきっと無理だな」サミーは顔を左右に振った。
「管理人を置いているし、お前が住む場所にも当然執事を置くだろう?ここにプラットがいるように」
「どうかな、そうそう信用できる人が見つかるとは思えないけど。もちろん彼らは仕事だって割り切って、誠心誠意尽くしてくれるだろうけど、家に仕えるのと個人に仕えるのとではやはり違うよ」
エリックは優しくサミーの頬に触れた。自己評価が低いのは生い立ちそのものの不遇さにあるが、いまは持たざる者とは違う。自由に使える金もそれを増やす才能も、周りに信用できる人間も多くいる。自分で気付いていないのかもしれないが、信用できない男に大事な仕事を任せるか?ブラックへの信頼は俺の存在があってこそかもしれないが、それでも信じたことには変わりない。
「数時間で戻る。土産は“公爵のチョコ”でいいか?」
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2023-01-31 01:33
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