はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 292 [花嫁の秘密]

「リックは降りてこないのかな?」大満足で帰宅したセシルは、胃を休めるための紅茶を喉の奥へと流し込んだ。お腹はいっぱいで、珍しくお菓子はナッツクッキーのみだ。

「きっと次の計画でも立てているんじゃないかな」サミーは素知らぬふりで答えた。昼食にはクラムチャウダーと薄いパンを二切ほど食べた。身体が温まりお腹が満たされると、思考が明瞭になりジュリエットに対してどう振る舞うべきかよく考えることができた。

エリックは気に入らないかもしれないけど、ジュリエットに僕を差し出した時点で、異を唱えられる立場にない。
新しい年をジュリエットと迎える。おそらくキスのひとつもするだろう。正式に交際をするべきか、のらりくらりとかわすべきかはまだ考えている最中だ。付き合っても別にいいが、彼女とベッドを共に出来るか自信がない。ついでに言えば、経験不足だ。

過去クリスと付き合っていたことが、二人の関係を進展させるには邪魔となっているとでも言えば、彼女を抱かなくて済むだろうか。けどこれも状況によっては覚悟を決めないといけないだろう。

「僕もどこかのクラブに所属しようかな。ぶらっと行って美味しいもの食べて、読書なんかして過ごすのもいいよね」セシルはソファに沈み込んで、ぼんやりとシャンデリアを見つめている。目がとろんとしていて今にも眠ってしまいそうだ。

「どこか気になるクラブがあるのかい?」サミーは尋ねた。

「ううん」セシルは首を左右に振った。「サミーはどうしてあのクラブに?」

「叔父の紹介だよ。僕は賭け事はあまり好きではないけど、ゲームは好きなんだ」

「お父さんの弟ってこと?」セシルは視線をサミーに戻した。興味を持ったようだ。

「そう、メイフィールドカッスルに住んでいない方の叔父ね。多分クリスとアンジェラの結婚式の時に来ていたんじゃないかな」クリスに反発して、結婚式に出席しなかったことをとても後悔している。花嫁姿のアンジェラはとても美しかっただろう。

「ああ、そう言われれば、会ってるかも。でもさ、あの時ってハニーの秘密がいつばれちゃうかでビクビクしていたから、あんまり覚えていないんだよね。ごちそうもあまり喉を通らなかったし」

「一族のあの髪の色はどこにいてもすぐにそれとわかるけど、兄弟のうち下の二人は赤毛ではないからね。クリスみたいな見た目でこそリード家の人間だと誰もが思う。だからこそ、一族はずっとこのしきたりを守ってきたんだろうね」

「しきたりって、どんなふうな……?」セシルがおずおずと尋ねた。

そうだった。リード家の秘密を知っているのはエリックだけだった。

「赤毛の妻を迎えるという決まりの事だよ」これは世間の誰もが知っている。セシルがそれ以上の何かを知りたがっていたとしても、さすがに喋るわけにはいかない。本当は僕が当主でクリスは弟なんだって、今更言ったところでどうしようもないし。

「でもハニーは赤毛でもないし女性でもないから、跡取りは望めない。そうしたら爵位は誰が継ぐんだろう」セシルはナッツクッキーに手を伸ばした。

「たぶんいとこかな。叔父の息子たちは赤毛だしね」

もしも僕がジュリエットと結婚して子供が出来たら、髪の色はどっちになるだろうか。

つづく


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