はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 290 [花嫁の秘密]

エリックの手際がいいのはいつものこと。出会った頃はあまりに胡散臭く信用できない男だとしか思っていなかったが――いまももちろんそう思っている――、噂以上に仕事のできる男なのは認めざるを得ないだろう。

昼過ぎにセシルと二人でプルートスへ出掛けたが、ただローストビーフを食べに、というわけではないのだろう。何を探りに行ったかは知らないが、これでようやく一人で考える時間が出来た。

サミーは引き出しに仕舞った書類を再び机の上に出した。昨日のうちにバートランドに頼んでおいた個人資産に関するものの一部だ。ほとんどは自分で増やしたものだが、父が僕に残してくれたものもある。ずっと憎まれていると思っていたのに、なぜ母との思い出のあの場所を僕にくれたのだろう。

このこともエリックは当然知っているのだろう。だからこそ、僕に高額の買い物をさせようとしている。自分の住まいは別に欲しくないが、あのクラブは手に入れてみてもいいのかもしれない。

「お呼びですか?」

呼んだから来たのだろうに、ブラックは僕に仕えているという自覚はあるのだろうか?

サミーは手紙をひとつ、ブラックに差し出した。「これをラッセルホテルのジュリエットに届けて欲しい」

「俺はメッセンジャーではありません」ブラックが憮然と返す。

「君がここを離れている間、僕はずっとこの椅子に座ったままだと請け合うよ」ブラックの仕事は僕を見張ること。そしてその行動を逐一エリックに報告する義務がある。けど、僕が黙って従う義務はない。

「では届けてきますが、その間に昼食を済ませてください」

「エリックに言われた?」ローストビーフを食べに行こうとしつこかったのは、僕をまるまる太らせようって魂胆なのだろう。けど、いまは出掛ける気にも食事をする気にもなれなかった。

「いいえ」ブラックは形だけ否定した。

「では君の言うことを聞くから、いますぐに行って。返事がもらえるようならもらって来て」プラットに言えばスープとパンくらいならすぐに用意してくれるだろう。もしかするとセシルの残り物かもしれないけど。

ブラックは手紙を内ポケットに仕舞い、踵を返すと部屋を出て行った。無言だったけど、彼はきっと返事をもらってくるだろう。そこまで出来るからこそ、エリックに雇われているのだろうから。そもそもどういう経緯でエリックの下で働くことになったのか、聞いてみたら答えてくれるだろうか?

明日からセシルがいなくなると思うと、ひどく寂しかった。一緒にいるだけで穏やかで安心していられる相手はそういるわけではない。きっと使用人たちも寂しがるに違いない。クリスとアンジェラが早くこっちに出て来れたらいいんだけど、こうなってしまっては当分無理だろう。

つづく


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