はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 266 [花嫁の秘密]

ジェームズ・アッシャーはエリック・コートニーについて今朝までほとんど知らないも同然だった。

もちろん彼が普段何をしているのかは知っていた。いくつかスティーニ―クラブにまつわる醜聞を記事にされたことがある。どれも他愛もないもので、こちらの痛手とはならなかったが、あまり敵に回したくないタイプだと認識していた。

その彼がパーシヴァルの屋敷を手に入れたがっている。なぜという疑問しかない。最初はてっきりテラスハウスの方だと思っていたが――売りに出しているのもそっちだと思っていた――メイフェアのあの屋敷はお買い得でもないし、少々手狭だ。買い取って貸し出すという考えもあるが、家賃収入で購入金額を回収するのにいったい何年かかるやら。

このままエリックにはお帰りいただくのが正解だが、少し探っておくのも悪くないだろう。

「わたくしの執務室でよければお茶でもいかがですか?ご要望であればクリスマスティーもご用意できますが」

「できればコーヒーで」エリックは中庭に目を向けている。執務室は向こうにあると思っているのだろう。口調に尊大さが滲み出ていたが、身分はこちらが圧倒的に低いので仕方がない。

「今朝焙煎したてのものが届いたばかりです」そう言いながら、書斎の隣の自分の執務室へ案内する。玄関広間で客が帰るのを待っていた執事が、ぬかりなく従僕にキッチンへ行くように命じていた。

今朝、クレインという男の対応をした者は誰だったのだろうか。ちょうど談話室に人が多くいた時間帯で誰が対応してもおかしくなかった。もしかするとエリックがわざわざヒナの好物を持参したところを見るに、ダンかウェインが話をしたのではないだろうか。特にウェインはいかにも余計な情報をぺらぺらと喋りそうではある。まあ、これはあとで確かめておこう。

とにかく、パーシヴァルがエリックとの面会を断らなかったのは、近侍であるロシターがうまく話をつけたからだろう。ただ、この話がすぐに自分に届かなかったことは腹立たしくもある。きっとパーシヴァルがわざと言わなかったに違いない。

廊下のあちこちにプレゼント箱が置かれていて、ずいぶんと浮かれた屋敷だと思ったことだろう。子供が一人でもいればこうなってしまうのは仕方がない。ヒナの保護者であるジャスティンはヒナの為ならなんでもするし、なんでも与える。あまり甘やかすなと言っても聞きはしない。

図書室の前を通り過ぎたがドアは閉まっていた。いったい二人で何をしているのやら。

「狭いですが、どうぞ」ジェームズは書斎の隣のドアを押し開け、エリックを中に招き入れた。

ここに人を入れることはほとんどない。実際仕事の大半はクラブの方でするし、ここはちょっとした書き物や書類整理の時にしか使わないが、それでもとても居心地のいい場所だ。

書き物机の前の布張りの椅子に座るように促す。エリックは物珍しげにざっと部屋を見回し、腰をおろした。

「仕事はいつもここで?」

「時々。今はクラブが休業中なのでここで過ごす時間も増えていますが、年明けにはまた向こうで過ごす時間が増えるでしょうね」エリックの向かいに座って戸口に目をやると、左頬に大きな傷のあるエヴァンがティーセットを持って部屋に入ってきた。よりによってなぜエヴァンが給仕など。ジェームズはらしからぬ笑いをもらしそうになった。この客がヒナに害を及ぼさないかどうか確かめに来たのだろう。

自分も同じ理由で、エリックを引き留めたからよくわかる。彼がもしもパーシヴァルを害するなら、徹底的に叩き潰す。

つづく


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