はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

Sの可愛い子犬 1 [Sの可愛い子犬]

登場人物

ジョン・スチュワート(16)
ステファン(16)
アストン ステファンの父 アメリカ帰りの英国人



遠くで教会の鐘の音が聞こえた。
ロンドンを遠く離れ、どんどん馬車は森の奥へと進んでゆく。
御者の腕が悪いのかスプリングのせいなのか、それとも老いた馬だからなのか、馬車は必要以上にがたがたと揺れ、その震動が身体に痛いくらいに響く。
隣の男もそれを感じているのだろう、不機嫌そうに顔を顰め遠くを見つめている。決してこちらを見ようとはしない。

「まったく、今の時代にまだ馬車で移動とはね――」男は吐き捨てるように言葉を発すると、今までの不満が次から次へと口をついて出て来た。
「いくら鉄道が時代の流れに乗って発展したとしても、こんな山奥までは無理だろうな。それにこの国は、馬車がえらくお気に入りだからな。自動車なんてものは、知らないに等しい。時代遅れも甚だしい」

独り言なのか、隣の少年に言っているのか全く分からないが、男は不満を一通り言うとまた顔を顰め、さらに遠くに目をやった。

馬車が大きな門を抜け、緑が生い茂る林を抜けると、屋敷を真正面に臨む橋へと差し掛かった。広大な土地は以前コッパー子爵が所有していた土地だ。馬車に乗る少年、ジョン・スチュワートの父が所有するものだった。

ジョンは今現在、自分の置かれている状況があまり分かってはいなかった。ある日父が亡くなったと知らされた。母はそれ以前にすべてを捨てて出て行った。兄と二人残された。多額の借金があるからとロンドンの邸宅も、各地の屋敷もすべて失った。限嗣相続分はどうなったのかは、次男のジョンには関係のないことだった。それでも残った負債は、ある男――今ジョンの隣に座っている男――が肩代わりして残された子供たちの後継人になった。

男は、アストンという。アメリカ帰りの英国人で鉄道会社を経営している。世間では成り上がりと揶揄され、貴族の間では良く思われていないが、それでも莫大な財を成したアストンに、擦り寄る者も少なくはない。

兄は今までと変わらず学校に残り援助され、弟のジョンだけがアストンに引き取られることになった。

『お前が、ジョンか――。これまでは貴族として上から見下ろす立場だっただろうが、これからはお前が見下ろされる立場だ』

アストンがジョンに最初に言った言葉だ。

悲しむ暇もなく、以前自分が住んでいた屋敷へと辿り着いた。
見知った使用人は一人もいなかった。

「さあ、到着だ、ジョン。これからここでお前は働いて私に借金を返すのだ。兄の分までしっかり働けよ」

屋敷の中には案内されなかった。ジョンが案内されたのは厩舎の傍にある小屋だった。
それまで着ていた服はすべて脱がされ、ぼろぼろのシャツとズボンを与えられた。

「なんで、僕がこんなっ――」

そんなことを口にした途端、馬丁に殴られた。
初めての出来事に驚き、その馬丁を睨むように見たが、気弱なジョンにはそれが精一杯だった。

つづく


>>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。