はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナおじいちゃんに会いに行く 17 [ヒナおじいちゃんに会いに行く]

え、ちょ、ちょっと待って!

ダンは叫んだ。

つもりだったけど、口を塞がれていたので、叫びは自分の耳にもスペンサーの耳にも届かなかった。

スペンサーはいつだって強引だ。しかも腹立たしい。僕とブルーノとのことを知っていて、こんな真似をするんだから。

ようやくブルーノとのキスに慣れてきたところなのに、違うキスをされたら、どうしていいのか分からない。突き飛ばそうにも、相手の方が力はある。だからといって、されるがままというわけにはいかない。

どうにか逃れようと身をよじったら、さらに強い力で押さえつけられ、舌を入れられた。ああ、もうっ!こういうこと、ブルーノとしかしたくないのに。

スペンサーの手が背中をすべりおり、お尻をきゅっと掴んだ。ダンは情けなくうめき、思わずスペンサーに縋った。

猛烈に腹が立った。自分にもスペンサーにも。

ダンは力からの限り抵抗し、スペンサーを押し退けた。僕だってやれば出来るんだってことを見せつけなければ、何度でも同じことをされてしまう。

「ど、どうして――ハァ……こんなこと、するんです?」

スペンサーはダンの問い掛けに小首を傾げた。

「どうして?ダンが好きだからに決まっているだろう?」

え?好き?

予想外の返事にダンは面食らった。

確かにスペンサーが僕のことを……と思うことはあったような気がする。けど、からかい半分で本気なわけない。

「冗談ですよね?」ぜんぜん笑えないけど、せめて口元だけでも笑いながら訊ねた。本来冗談は可笑しいものだから。

「好きだからキスをした。ブルーノには渡さない」スペンサーはダンの腕を優しく掴んだ。ダンが振り解こうと思えばいつでもそうできるように。

「でも、僕はブルーノのものです!」ダンはきっぱりと言い切った。あえてスペンサーの手は振り解かなかった。抵抗すれば、スペンサーは余計に手を離さない。

以前、僕はブルーノに『僕は誰のものでもありません』と言ったけど、次からはよく考えてから口にすることにしよう。言葉は自分を縛るし、相手も縛る。僕はブルーノのものだし、ブルーノも僕の……。

「まだキスしただけだろう?それなら俺にもチャンスはある」

なんて理屈だ。

「僕の話を聞いていました?僕はブルーノと付きあっ――」

「黙れ!」

ヒィ!!な、なんでそんなに偉そうなの!?

「ブルーノとどういう関係だろうが知るもんか。ダンが俺のことをどう思っているかだ。嫌いではないだろう?」スペンサーは口調をやわらげ、懇願するようにダンの瞳を覗き込んだ。

ダンは目を逸らせなかった。

青い瞳を縁取る金色の豊かな睫毛が小刻みに震えている。まるで返事を聞くのが恐ろしいとでもいうように。

もちろん、スペンサーの事は嫌いじゃない。むしろ好きと言ってもいい。でもそれは、ブルーノへの感情とは少し違う。

違うのだけれど……。

「ちょっと、考えさせてください」

なぜかそう返事をしていた。

つづく


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