はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナ田舎へ行く 2 [ヒナ田舎へ行く]

カイル・ロスは門の外でコヒナタカナデの近侍だと言う男と、お互いの馬車を背に押し問答をしていた。向こうは宿屋の貸し馬車。こちらは大きくて頑丈なピクルスの引く、荷台の大きな馬車。村まで買い物に行く時にはいつもこれに乗る。

「だから、あなたはここから先へは入れないと言っているでしょう?」カイルはじれったそうに言った。

コヒナタカナデと荷物だけを載せて戻ってくるようにと、兄のスペンサーに何度も念押しをされた。簡単な仕事だと息巻いて飛び出したものの、随分と時間を食ってしまっている。ピクルスも退屈そうに、道の草を食み始めた。

「それは先ほども聞きましたが、ではあなたはヒナの面倒をきちんと見れるのですか?朝起きたら頭は爆発しているし、裸だし、事によっては、もう乱れに乱れまくっているんですよ。ボタンひとつ留められないし、あちこちに食べかすをくっつけて歩くような子ですよ。面倒見きれますか?」

カイルは目の前の男が、いったい何を言っているのかさっぱりわからなかった。爆発?

「面倒見るも見ないも、それは僕の仕事じゃないし……」客の世話はブルーノがすると決まった。兄弟三人でくじを引いた結果だ。

「僕の仕事じゃない?」使用人が興奮した様子で声を荒げた。

「だから、僕はお世話係なんかじゃないんです!だいたい、コヒナタカナデ様はどこにいるんですか?あの中ですか?」カイルは<大鷲と鍵亭>の小振りな馬車を指差した。

突如、馬車の扉が開いた。「呼んだ?」豊かな蜜色の髪を青いリボンで結んだ少年が姿を現した。

彼がコヒナタカナデ?

初めて見る異国の少年にカイルは興奮した。おっかなびっくり近づき、眠そうに下がる瞼の奥を覗く。目は僕と同じ茶色だ。肌は屋敷にある陶器の壷みたいな色。すごく高価なやつだ。

「ヒナ、まだ出て来てはダメです」都会人ぶった気取り屋が、間に割って入った。

ちぇ。使用人のくせに偉そうに。

「でも……」とコヒナタカナデは口を尖らせ、こちらを見た。まるで助けを求めるみたいに。

まさか、そうなのか?「お前が――いや、えっと、あなたがコヒナタカナデ様ですか?」

「違うよ。ヒナだよ」

それがヒナの決まり文句とは知らず、カイルは否定されたことに戸惑った。

愕然とするカイルに使用人が得意げになって言う。「だから言ったでしょう?ヒナの扱いは大変だって」

ムッ!「けど、あなたは入れません。コヒナタカナデ様以外入れてはいけないと言われているんです」馬鹿相手に言い聞かせるのは大変だとばかりに、念を押した。

気取り屋が憎たらしいほど気取った笑みを浮かべた。時々、スペンサーが僕に意地悪する時に見せる笑い方だ。くそう。

「知っています。だからそう命じた人に黙っていなくてはいけないでしょうね」

いやいや。ばれたらどうなるかこいつは知らないんだ。いや、僕だって知らないわけだけど、とにかくブルーノがひどく怒るだろう。決まりごとにうるさいったらないんだから。

「ねえ、ダン。ヒナまだ降りちゃダメなの?」

あぶないっ!コヒナタカナデが今にも飛び降りようとしている。

「もう、まだダメだって言ったでしょう?ヒナが出てきたらせっかくの計画が台無しになってしまう」

ダンはコヒナタカナデを押し戻すとカイルに完全に背を向け、ひそひそ声になった。気になって仕方がないカイルは、一歩、向こうに近づいた。

「じゃあ、ヒナがお願いしてみる」

「ダメですよ。話がつくまで中で待っている約束だったでしょう?」

「ぶぅ」

「変な声出さないでください。お行儀良くしていないと、あとで会えませんよ」

そう言うが早いか、馬車の扉が勢いよく閉じた。

なんだこいつら?誰と会えないって言うんだ?

「おいっ!」

背後で声がした。

振り向くと、二番の目の兄ブルーノが自転車に跨ったまま、灰色の瞳でこちらを睨んでいた。

つづく


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